2017年プレスリリース

トヨタのモータースポーツカルチャーの原点とTOYOTA GAZOO Racing技術の融合

当時の耐久レースを戦った「本物のスポーツ800 レーシング」が「スポーツ800 GR CONCEPT」として復活

2017年9月19日(火)

TOYOTA GAZOO Racing Companyは、トヨタ初のスポーツカーであり、トヨタのモータースポーツ カルチャーの原点である「トヨタ・スポーツ800(通称ヨタハチ)」のレーシングカーを50年以上の時を経て復元させました。
TOYOTA GAZOO Racingのエンジニアが、モノづくり技能と最先端のスポーツカーテクノロジーを結集させ、レストアからチューニングまで実施。「GR」のブランドを冠し、内外装だけではなく、運動性能まで手を 入れた1台限定の「スポーツ 800 GR CONCEPT」として蘇らせました。「スポーツ800 GR CONCEPT」を通じて、トヨタのモータースポーツカルチャーの系譜と、TOYOTA GAZOO Racingの徹底的なチューニングへのこだわりを全国のクルマファンにお伝えしていきます。

「トヨタ・スポーツ800」誕生から50年以上が経ち、GRシリーズ始動という節目に、スポーツカーを愛する皆様に、改めてトヨタモータースポーツカルチャーの歴史や、GRの技術・DNAを感じていただきたいとの想いで、「スポーツ800 GR CONCEPTプロジェクト」を始動させました。トヨタのモータースポーツ カルチャー創生期に数々の耐久レースで戦い、鍛えられた本物の「トヨタ・スポーツ800 レーシングカー」。フレームNoも「UP15-10007」という当時の貴重な車両を、「スポーツ800 GR CONCEPT」として蘇らせました。レストア・チューニングの各工程で、匠のベテランから若手まで多くのメンバーが参加し、技能伝承と人材育成の場としても活用。先人たちの技術や想いを共有しています。

【トヨタ・スポーツ800 レーシングとは】

スポーツ800は、初代パブリカをベースに1965年(昭和40年)から1969年(昭和44年)にかけて製造したトヨタ初のスポーツカーです。開発担当主査は、初代カローラも手がけた長谷川龍雄。航空機の設計士だった長谷川は開発にあたり航空機の空力理論を徹底的に応用し空気抵抗を限界まで抑えました。また、日本で初めて外板にアルミを採用し、総重量わずか580kgという超軽量化を実現しています。その為、エンジンは非力でしたが、空力設計と軽さで最高速度は当時のトップクラスの155km/hでした。現車はフレームナンバー「UP15-10007」であり、これは1966年1月に開催された「第1回鈴鹿500kmレース」において1、2フィニッシュの栄冠を勝ち取った内の一台その物となります。当時のモータースポーツ車両開発を手掛けた河野主査と第三技術部にてチューニングされ、ワークスドライバー田村三夫氏がドライブした本物のレース用車両です。他にも船橋サーキットや富士スピードウェイで数々の戦歴を残す特別な1台です。

【Spec】

■スポーツ800 GR CONCEPT 主要装備
ボディ/シャシ:前後クイックジャッキ用バーフレーム、ボンネットピン、給油口移設、大容量ガソリンタンク、3点式ロールバー、レーシングサス
エンジン:フライホイール&冷却ファン軽量化、オイルパン増設、大口径キャブレター&マニホールド、圧縮比アップ、ハイカム、メガホンマフラー(最高出力70ps ※ノーマル45ps)

■GRチューニング内容
ボディ補強(ロッカー~サスペンション支持部)、エンジンバランス取り、専用フロントパイプ&マフラー、点火系強化、専用ダンパー
専用シート&内装、専用メータパネル

【スポーツ800 GR CONCEPTが蘇るまで】

レストア前の状態
(トヨタ自動車東日本社内で撮影した写真)

この朽ち果てたトヨタ・スポーツ800をGRとして甦らせるという話を聞いたとき、これは大変なことだなと思ったのと同時に、とても光栄に感じました。10007号車という歴史ある名車をレストアする事は、自分たちの腕も試されているとプレッシャーも大きかったです。
耐久レース仕様ということもあり、艤装品を含め改造跡が沢山あり、市販車と全く異なっていました。特に、軽量化の部分は現代では考えられない程、シンプル且つ、贅肉をそぎ落とす先人達の努力の跡が残っていました。
私たちは、エンジニアとしての魂やこのクルマに込められた熱い想いをしっかりと受け止め、それを次の世代へ引継ぐことが、このGRプロジェクトの使命だと感じています。

トヨタ自動車東日本株式会社 小竹敦 菊池敬厚

「当時の味を残しつつ、しっかり走れる」を目標に復元とGRチューニングを実施しました。ボディは半分以上の部分が職人の技で新たに作り直され、更に見えない部分にGRボディ補強を施し、また、サスペンションは当時のレーシングサスをそのままに凄腕技能養成部によるGRダンパチューニングにより旋回性能を向上しています。エンジンは当時の高回転チューニングを再現し、加工精度向上とバランス取りを行い高回転の伸びを更に磨きました。また、オーナーズクラブ様による部品入手のご協力や、トヨタグループ各社様の部品製作のご協力など、このクルマのもつ魅力が「この指とまれ」となりエンジニアを惹きつけ垣根を越えた輪を作り、プロジェクトに関わる全ての人の情熱と技能と技術により特別な1台が完成しました。五感を使ってクルマと対話しながら上手く走れたときに「ニコッ」となれる、そんなスポーツドライビングの楽しさのヒントがつまっています。

スポーツ800 GR CONCEPT プロジェクト リーダー トヨタ自動車 小川裕之