Round10
ラリーチャレンジ 2017年 第10戦 高岡 万葉
レポート
ラリーチャレンジ 2017年 第10戦 高岡 万葉 レポート

シーズンポイントをかけたシリーズ終盤で
熾烈なバトルを展開

 10月8日、富山県高岡市を舞台としてTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジカップ in 高岡 万葉が開催された。4年目の開催で年々盛り上がりを見せる高岡 万葉ラウンドは、規定台数の75台を上回るエントリー希望を集め、大盛況のうち開催された。
 当日は徐々に晴れ間が広がる天候に恵まれたが、午前セクションは前日の雨の影響で濡れた箇所がある難しいコースとなった。高岡市内に設定した3箇所のSS(スペシャルステージ・タイムアタック区間)を2回ずつ走行し、合計6つのSSで競われる本戦。三千坊SSは道路幅の広い前半のハイスピード区間を抜け名物のスイッチバックヘアピン(進行方向が鋭角的に変わる急カーブ)を越えると、狭く滑りやすい難関コースへと表情を変える。続く万葉SSは上りのストップ&ゴーのリズミカルなコースだが、側溝蓋や落ち葉など路面の変化に注意が必要となる。伏木SSは広い砂利の敷地に設置されたパイロンの間を攻めるグラベル(未舗装路)コース。深めの砂利路面が走行を重ねる度に掘られ、マシンコントロールが難しくなっていく。伏木SSは一般観戦可能なSSとなり多くの観客が見守る中でのアタックとなったが、勢いよくコーナーに侵入すると砂利に足元を取られてしまうため、慎重にスローダウンして走行する選手、観客の前で迫力の走りを見せる選手など、各選手の個性、戦術が光るアタックに観客も魅了されるひと時となった。

75台のエントラント勢ぞろいでスタート前の集合撮影。高岡市長も交え笑顔で一日の健闘と安全を誓い合あった。
75台のエントラント勢ぞろいでスタート前の集合撮影。高岡市長も交え笑顔で一日の健闘と安全を誓い合った。

 E-1クラス(Expert/ヴィッツ1500cc)は、西シリーズポイントトップの野村 長/山田 実歩組が序盤からリードを広げる形で展開していく。激化する2位争いの中、順調にペースを上げていった高桑 真人/高桑 真組が見事2位を獲得。1位は17.5秒もの差を広げた野村/山田組の圧勝となった。
 E-2クラス(Expert/TOYOTA 86)は、長﨑 雅志/秋田 典昭組に対し西シリーズ2位の石田 政晃/小林 長門組が食らいつく。本戦の結果次第では大逆転もありえることから、石田/小林組も必死に追いすがるが、SS3で痛恨のタイムロス。安定したスピードを見せた長﨑/秋田組が勝利。最終戦を前に悲願のE-2クラス西シリーズチャンピオン獲得をものにした。
 トヨタ車限定(1500cc以下)のExpert E-3クラスは3台のヴィッツがエントリー。モータージャーナリストとして活躍する清水 和夫/高波 陽二組がセットアップの進んだヴィッツで好走を見せ、堂々優勝を果たした。

75台のエントラント勢ぞろいでスタート前の集合撮影。高岡市長も交え笑顔で一日の健闘と安全を誓い合あった。
75台のエントラント勢ぞろいでスタート前の集合撮影。高岡市長も交え笑顔で一日の健闘と安全を誓い合った。
E-4クラス用の後期86にマシンを変更してからなかなか波に乗れなかった山口 忍/坂田 智子組が悲願の今季初優勝を果たした。
E-4クラス用の後期86にマシンを変更してからなかなか波に乗れなかった山口 忍/坂田 智子組が悲願の今季初優勝を果たした。

 激戦のC-2クラス(Challenge/ヴィッツ1500cc)は、西シリーズポイント上位の牧野 達哉/別所 雄治組と深津 勇人/栗山 尚広組の直接対決となる。2016年シリーズの高岡ラウンドから参戦を始めたという牧野/別所組にとっては1年ぶりの高岡でのラリーとなったが、序盤から危なげない走りを見せ12秒以上の差で勝利を収めた。
 トヨタ車限定(1501cc以上)のExpert E-4クラスはモータースポーツで活躍する歴代のトヨタスポーツカーが揃う人気のクラスとなった。その中で、山口 忍/坂田 智子組が得意の林道コースで速さを見せる。難しいコンディションとなったグラベルの伏木SSでFF駆動のレビンを駆る原田 善夫/早川 正資組が全体ベストタイムを叩き出し猛追するが、山口/坂田組は再び林道コースでマージンを築き、1.6秒差で逃げ切り嬉しい優勝を決めた。

E-4クラス用の後期86にマシンを変更してからなかなか波に乗れなかった山口 忍/坂田 智子組が悲願の今季初優勝を果たした。
E-4クラス用の後期86にマシンを変更してからなかなか波に乗れなかった山口 忍/坂田 智子組が悲願の今季初優勝を果たした。

 C-3クラス(Challenge/TOYOTA 86)は、ドライビングに余裕が出てきたと語る大森 陽介/長澤 奨平組が序盤からミスなくベストタイムを連発。與座 健/大矢 啓太組も追い上げたが、1.8秒差で大森/長澤組の勝利となった。
 C-1クラス(Challenge/AQUA)は、今回ドライバーとして初の参戦となった鍵野 大輔/内田 桂太組がSS1から2位に5秒近くの差をつけるベストタイムを刻む。グラベル路面のSS3/SS6でベテランの岩城 のぼる/髙橋 功組が大幅にタイム差を詰めるが、林道コースでのマージンを残した鍵野/内田組が優勝を果たした。

  • 走行を重ね、コース内にいくつもジャンピングスポットができてしまったが、大森/長澤組は冷静に処理していた。
    走行を重ね、コース内にいくつもジャンピングスポットができてしまったが、大森/長澤組は冷静に処理していた。
  • これまでコ・ドライバーとして2度参戦経験がある鍵野選手。初のドライバー参戦ながら見事な走りを見せた。
    これまでコ・ドライバーとして2度参戦経験がある鍵野選手。初のドライバー参戦ながら見事な走りを見せた。
Rally Experienceでは、ラリー/ジムカーナ/ドリフトで活躍する選手が、それぞれの参戦カテゴリの違いが分かるパフォーマンスを見せた。
Rally Experienceでは、ラリー/ジムカーナ/ドリフトで活躍する選手が、それぞれの参戦カテゴリの違いが分かるパフォーマンスを見せた。

 一般観戦できるSSが設定された伏木SS。日本総合リサイクル(株)敷地内に設営された会場内ではTOYOTA GAZOO Racing PARKも開催され、朝から多くの観客が訪れることとなった。会場中心の走行エリアで行われたRally Experience(ラリードライバー同乗体験)ではプロのドライバーの助手席で迫力の走りを体験できるとあり大人気。限られた走行エリアの中を縦横無尽にマシンを振り回す圧巻のパフォーマンスを披露した。また、同じエリア内ではSUVオフロードチャレンジも実施。特設オフロードコースの障害物を難なく越えていくSUVの走破性能に驚きの声が上がった。会場内ではその他に、豊富な飲食ブースや東京大学が2018ラリー・モンテカルロ・ヒストリックに参戦するために製作したTE27型 レビンなどの展示も行われた。

Rally Experienceでは、ラリー/ジムカーナ/ドリフトで活躍する選手が、それぞれの参戦カテゴリの違いが分かるパフォーマンスを見せた。
Rally Experienceでは、ラリー/ジムカーナ/ドリフトで活躍する選手が、それぞれの参戦カテゴリの違いが分かるパフォーマンスを見せた。

PICK UP多くの地元参戦チームが盛り上げる高岡ラウンド!

チーム内で行われたオーディションでドライバーシートを獲得した能勢選手。大勢の仲間の声援に見送られながらのスタートとなった。
チーム内で行われたオーディションでドライバーシートを獲得した能勢選手。大勢の仲間の声援に見送られながらのスタートとなった。

 地元富山からのエントリーを多く集めた本戦。C-1クラスに参戦した能勢 裕貴/篠原 弘幸組は地元ディーラーチームからエントリー。モータースポーツ競技に参戦するのは初というドライバーの能勢選手は、スタート前こそ緊張の表情だったが、ステージを進めるごとに表情が柔和に。ラリー後には「また参戦したいです!」と笑顔で語りラリーを楽しんでいた様子だった。
 ハイレベルな争いとなったE-1クラスでは、野村 長/山田 実歩組、西能 徹/山村 浩三組、富本 諒/山岸 佑也組というラリチャレでお馴染みの顔ぶれが地元富山からのエントリー。E-1クラス優勝を果たした野村/山田組に負けじと好スタートを切った西能/山村組だったが、午後のラリーでは高桑組のペースについていけず3位。富本/山岸組はコース特性と自身の得意とする走行スタイルがマッチせず苦しい展開だったが、SS5でクラス2位のタイムを記録し、苦しい中でも何かを掴んだようだった。

チーム内で行われたオーディションでドライバーシートを獲得した能勢選手。大勢の仲間の声援に見送られながらのスタートとなった。
チーム内で行われたオーディションでドライバーシートを獲得した能勢選手。大勢の仲間の声援に見送られながらのスタートとなった。

Entrant interview大学自動車部出身の若手選手。
まだまだモータースポーツは辞められない!

チーム名:KTUACリキモリVitz
ドライバー:今西 正和
コ・ドライバー:小西 建也

今西 正和選手(31)と小西 建也選手(30)は、同じ大学の自動車部で出会いモータースポーツの魅力にハマっていったという二人。2014年からラリーチャレンジに参戦し、昨年はシリーズ上位選手のみ参戦できる新城ラリーにも参戦を果たした。自動車部という環境で得られたものや苦労した事を伺いました。

Expertクラスはレベルが高すぎてChallengeクラスに戻りたいと冗談ながらに語ってくれた二人。これからのレベルアップに期待が高まる。
Expertクラスはレベルが高すぎてChallengeクラスに戻りたいと冗談ながらに語ってくれた二人。これからのレベルアップに期待が高まる。
最低でも完走と語り慎重な走りを見せたが、観客が見守る中しっかりとアクセルを踏み込んでいた。
最低でも完走と語り慎重な走りを見せたが、観客が見守る中しっかりとアクセルを踏み込んでいた。

Q:モータースポーツに参戦するきっかけを教えてください。
A(小西さん):もともと車が好きだったので、大学に自動車部があると聞いて自然と入部しました。その頃はジムカーナ競技(スラローム競技)に参加することが多かったですね。
A(今西さん):僕も車が好きだったので、免許取ってすぐに自動車部入りました。その頃はダートトライアル(未舗装の路面に設定されたコースを走行しのタイムを競う競技)に挑戦してましたね。
Q:ラリーチャレンジに参戦するきっかけを教えてください。
A(今西さん):地区戦ラリーにも参戦したことがあるんですけど、週末2日間や3日間となると参加するのだけでも難しいんですよね。その点ラリチャレは1日だけ開催の1DAYなので時間的に都合がつけやすかったんです。
Q:今回ラリーチャレンジの目標は?
A(今西さん):できれば入賞できたらいいな、と。でも去年の新城戦でクラッシュしてしまいマシンを治すのが大変だったので、完走が最低条件です。
A(小西さん):去年はチャレンジクラスだったので「楽しく走ればいいか」という軽い気持ちで参加できたんですけど、上位でシリーズを終えてしまったが為に、強豪揃いのExpertクラスに放り込まれてしまいました。できればChallengeクラスでゆる〜く楽しみたかったです(笑)
Q:自動車部時代、苦労したことは?
A(今西さん):やはり学生なので大会に出るための車両製作や費用面で苦労しましたが、部員確保も大変でしたね。車に興味なさそうな子でも気軽に参加できるように「ドライブだけでもいいから来てみない?」と声をかけたり。
A(小西さん):今C-2クラスで大活躍してる福島くん(福島 康宏選手・デンソーDACヴィッツYRP)は同じ自動車部の後輩なんですけど、彼をモータースポーツに引き込んだのも僕達なんですよ。今じゃあんなに立派になっちゃいましたが(笑)
A(今西さん):でも、こうやってモータースポーツを続けてくれてるのが、引き込んだ僕らにとっても嬉しいですね。
Q:モータースポーツに参加するにあたって、社会人になって何か変わりましたか?
A(今西さん):学生時代とは逆の悩みですね。お金の工面はできるようになっても、時間が無い。練習する時間も無い。でも、週末に向けて仕事を頑張るモチベーションは上がりますね。
Q:現役自動車部の方に一言。
A(今西さん):ラリーチャレンジに参加して仲間がたくさん増えました。大会にエントリーするだけじゃなく、オフィシャルとしてモータースポーツのお手伝いをするのも楽しいですよ!こっちの世界においでよ!
Q:あなたにとってモータースポーツとは?
A(小西さん):日々の生活の中で大きな楽しみの一つです
A(今西さん):なんでしょう…もう、全てですね。

クラス:E-1
車種:トヨタ ヴィッツ
型式:NCP131

Expertクラスはレベルが高すぎてChallengeクラスに戻りたいと冗談ながらに語ってくれた二人。これからのレベルアップに期待が高まる。
Expertクラスはレベルが高すぎてChallengeクラスに戻りたいと冗談ながらに語ってくれた二人。これからのレベルアップに期待が高まる。
最低でも完走と語り慎重な走りを見せたが、観客が見守る中しっかりとアクセルを踏み込んでいた。
最低でも完走と語り慎重な走りを見せたが、観客が見守る中しっかりとアクセルを踏み込んでいた。

Rally DataTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジカップ in 高岡 万葉

  • 主催

    エースナビゲーター&ドライバーズ(AND)
    〒933-8601 富山県高岡市広小路7-50(HQ)

  • 開催日

    2017年10月8日(日)

  • セレモニアルスタート会場

    高岡市役所

  • サービスパーク

    高岡市役所駐車場

  • ゴール会場

    高岡市役所

  • セクション数/SS本数

    2/6本

  • SSトータル距離/総走行距離

    12km/90km

  • 参加台数

    75台
    C-1 13台/C-2 13台/C-3 18台
    E-1 10台/E-2 10台/E-3 3台/E-4 8台

  • 出走台数/完走台数

    73台/75台

クラス別順位

E-2

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 長﨑 雅志/秋田 典昭/トヨタ 86
2 石田 政晃/小林 長門/トヨタ 86
3 鶴田 健二/大城 明人/トヨタ 86

E-4

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 山口 忍/坂田 智子/トヨタ 86
2 原田 善夫/早川 正資/トヨタ レビン
3 小林 成広/瀬戸 宏幸/トヨタ スターレット

E-3

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 清水 和夫/高波 陽二/トヨタ ヴィッツ
2 吉田 知史/高田 幸治/トヨタ ヴィッツ
3 松井 克樹/鹿肝 利明/トヨタ ヴィッツ

E-1

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 野村 長/山田 実歩/トヨタ ヴィッツ
2 高桑 真人/高桑 真/トヨタ ヴィッツ
3 西能 徹/山村 浩三/トヨタ ヴィッツ

C-3

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 大森 陽介/長澤 奨平/トヨタ 86
2 與座 健/大矢 啓太/トヨタ 86
3 宮下 貴光/行徳 聡/トヨタ 86

C-2

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 牧野 達哉/別所 雄治/トヨタ ヴィッツ
2 深津 勇人/栗山 尚広/トヨタ ヴィッツ
3 福島 康宏/藏元 裕太/トヨタ ヴィッツ

C-1

順位 ドライバー / コ・ドライバー / 車名
1 鍵野 大輔/内田 桂太/トヨタ アクア
2 田中 和幸/中村 匠/トヨタ アクア
3 岩城 のぼる/髙橋 功/トヨタ アクア