Round4
スーパー耐久 第4戦 富士
レポート
スーパー耐久 第4戦 富士決勝レポート

9時間の激戦の幕切れは0.791秒差の2位

第4戦はTOYOTA GAZOO Racingドライバーの兄貴分の一人で、スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が加入
第4戦はTOYOTA GAZOO Racingドライバーの兄貴分の一人で、スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が加入

静岡県の富士スピードウェイで行われた、スーパー耐久シリーズ2016第4戦「富士SUPER TEC YOKOHAMA Summer Festival!!」。今年は昨年の大会よりも更に1時間の延長により、国内最長の9時間。ドライバーのテクニック、マシンのポテンシャルはもちろんだが、ピットワークなどのチーム戦術、天候の変化、信頼性など、「耐久レース」の醍醐味をより感じるレースだ。今回は長丁場のレースと言うこともあり、松井孝允/井口卓人/蒲生尚弥選手のレギュラードライバーに加え、TOYOTA GAZOO Racingドライバーの兄貴分の一人でスーパーGTドライバーの大嶋和也選手が加入。3戦を終えて、TOYOTA Team TOM’S SPIRITのシリーズランキングは2位。今回は通常の決勝ポイントよりも50%増しとなるため、シリーズチャンピオンを狙うチームにとっては、何としてでも“勝ち”が欲しいレースでもある。

第4戦はTOYOTA GAZOO Racingドライバーの兄貴分の一人で、スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が加入
第4戦はTOYOTA GAZOO Racingドライバーの兄貴分の一人で、スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が加入
先日発表されたばかりのKOUKI(後期・マイナーチェンジ後の86)のヘッドランプ&リアコンビランプを装着
先日発表されたばかりのKOUKI(後期・マイナーチェンジ後の86)のヘッドランプ&リアコンビランプを装着

第3戦以降、いつもより長めのインターバルがあったこともあり、チームは合同テストへの参加など9時間の耐久レースに備えた。86のパイロットチームでもあるTOYOTA Team TOM’S SPIRITは、ブレーキの負担が多い富士スピードウェイに合わせてブレーキのバージョンアップや、先日発表されたばかりのKOUKI(後期・マイナーチェンジ後の86)のヘッドランプ&リアコンビランプを装着。KOUKIのパワートレイン系もテストされたようだが、「極限までバランスされた現仕様のほうが戦闘力は高い」と言うチームの判断で今回の投入は見送られた。しかし、ピット裏にはKOUKIアイテムを展示するなど、今後の実践投入を匂わせていた。
木/金曜日の練習走行ではセットアップに専念し、タイム的にも満足のできる結果となった。

先日発表されたばかりのKOUKI(後期・マイナーチェンジ後の86)のヘッドランプ&リアコンビランプを装着
先日発表されたばかりのKOUKI(後期・マイナーチェンジ後の86)のヘッドランプ&リアコンビランプを装着
TOYOTA Team TOM’S SPIRITの強みの一つは、“チーム総合力”
TOYOTA Team TOM’S SPIRITの強みの一つは、“チーム総合力”

3日(土曜日)、12時50分から行なわれたAドライバー予選は松井孝允選手がトップの77号車(CUSCO with Key’s 86)と0.332秒差の1分58秒017で2位。Bドライバー予選は大嶋和也選手がトップの55号車(SunOasisAUTOFACTORY86)と0.053秒差の1分57秒645で2位。合計タイムにより、今年3回目となるポールポジションを獲得した。その後、Cドライバーの井口卓人選手、Dドライバーの蒲生尚弥選手も安定したタイムを記録、明日の決勝に向けて様々なセットアップのトライも実施。
耐久レースでは一発のタイムよりも、4人のドライバーのタイム差が非常に少ないことのほうが重要となる。TOYOTA Team TOM’S SPIRITの強みの一つは、この“チーム総合力”なのだ。
4日(日曜日)の決勝スタートは、いつもよりもかなり早めの朝9時。事前の予報では雨の心配もあったが、夜間から早朝に降った雨はスタート前には止み、ほぼドライコンディションの中で9時間のサバイバルレースの火蓋が切られた。
上位クラスでスタート直後に接触があったものの、ST-4クラスはクリーンなスタートとなった。スタートドライバーの松井孝允選手は序盤はトップを走るも、無理をせずにペースコントロール。一時は5位まで順位を落とすものの、ライバルの脱落やピットインなどで3位まで順位を戻す。スタートから1時間30分経過後に蒲生尚弥選手にドライバーチェンジ。蒲生選手は7位から安定したラップでトップに浮上。そのまま2位以下を20秒近く引き離し独走状態。
スタートから約3時間、井口卓人選手にドライバーチェンジ。4位に落ちるが安定したラップで走行を続け、スタートから約4時間後にはトップに再浮上。その勢いは留まることなく2位以下を1LAP差まで引き離し、約4時間半で大嶋和也選手にドライバーチェンジ。約1LAPのマージンがあったため、トップのままコースへと復帰。大嶋選手はその後も快調に周回を刻み、再び2位以下を20秒近く引き離した。

TOYOTA Team TOM’S SPIRITの強みの一つは、“チーム総合力”
TOYOTA Team TOM’S SPIRITの強みの一つは、“チーム総合力”
レース終盤、13号車とのタイム差は毎周ごとに増減を繰り返す接戦に…
レース終盤、13号車とのタイム差は毎周ごとに増減を繰り返す接戦に…

富士スピードウェイは、これまで直線スピードの勝るS2000が得意で86にとっては不利なコースと言われていきたが、マシンの開発・熟成が進んだことで、今やその勢力図は変わりつつある。上位陣の争いは86/BRZによるものがほとんどだ。
スタートから6時間、再び松井孝允選手にドライバーチェンジ。トップのままでコースに復帰。ルーティンの作業以外は全く問題がなく順調なレース運びではあるが、ゴール直前のトラブル/ミスを何度も経験しているチームとしては、ピット内の緊張感は普段のレースと何ら変わらない。しかし、チームの雰囲気やメカニック/エンジニアの表情には余裕があるように見えた。その後、トップ争いは86号車と13号車(エンドレスアドバン86)に絞られ、松井選手は2位とのギャップを広げようとするが、13号車の追い上げもありタイム差は毎周ごとに増減を繰り返す接戦に…。
スタートから7時間半を過ぎるタイミングで13号車が先にピットインし最終ドライバーの元嶋選手にチェンジ。その1周後に松井選手もピットインし最終ドライバーの蒲生尚弥選手へ。トップのままでコースへ復帰したが、13号車はタイヤ交換を行なったのに対し、86号車はタイヤ無交換を選択、その結果、2位との差を40秒に広げることに成功。残り1時間、蒲生選手はタイヤを労わりながら走るが、13号車のスピードは予想以上に速く、ファステストラップを更新しながらギャップを縮めてくる。
ゴールまで残り10分、一度は抜かれるも再び首位を奪い返したが、残り6分で再び抜かれて2位に転落。そのままチェッカーとなった。その差は9時間でわずか0.791秒…。
練習走行~予選は流れもよく、決勝もドライバー/メカニック共にノーミス、レース戦略も完璧だったが、それをさらに上回った13号車の速さを称えたい。
残り2戦は岡山国際サーキットとオートポリス、どちらもTOYOTA Team TOM’S SPIRITとは相性のいいコースである。今日の悔しさをバネに、次の戦いに挑みたい。

レース終盤、13号車とのタイム差は毎周ごとに増減を繰り返す接戦に…
レース終盤、13号車とのタイム差は毎周ごとに増減を繰り返す接戦に…

松井孝允選手
「レース展開はチームの作戦も予定通り進めることができましたが、今回はライバルの方が速かった。当然悔しさはありますが、次戦(岡山)に向けてクルマをもっと良くしていかなければいけないことも解ったので、次のステップに繋げていきたいと思っています。」

大嶋和也選手
「僕の持つ知識と経験でチームに貢献できるように頑張ったのですが、最後がちょっと足りなかったのが残念でした。チームもノーミスでしたし、3人のドライバーも凄い成長していて頼もしい存在になったと感じました。ただ、次戦からはまたライバルかな。」

井口卓人選手
「予選はポールポジションを獲得、決勝も完璧な作戦でしたが、13号車は予想以上に速かった。今チームが持っているパッケージで最大限の努力をしていますが、より高みを目指すためにはマシンのパフォーマンスを根本的に高める必要があるでしょうね。」

蒲生尚弥選手
「タイヤの状態が厳しかったのと、13号車のスピードが予想以上に速かったので追いつかれてしまいました。チームとしてはやり切りましたが、13号車はそこを上回っていました。今年は予選はいいのですが、決勝の速さがないのでそこが課題だと思っています。」

影山正彦監督
「予選は2名のドライバーの合算でポールポジションを獲得、決勝は13号車と互角の状態で作戦もほぼ一緒でしたが、タイヤ交換の有無だけが違いました。我々はタイヤが持つだろうと言う判断で無交換を選択しましたが、タイヤ交換を行なった13号車の元嶋君が思っている以上の追い上げだったので完敗です。さすがエンドレスさんはしぶといですね。ただ、チームの流れは決して悪くないので、反省材料を洗い出して、残りの2戦を「心をひとつ」にして戦っていきたいと思います。」

サーキットの魅力
耐久レースならではの面白さ

1台のマシンを1人のドライバーがゴールまで走り切る「スプリントレース」。今回は「174台が参戦の史上最大のワンメイクレース」86/BRZレース+ヴィッツレースも開催され、TOYOTA GAZOO Racingドライバーの一人である井口卓人選手は86/BRZレースで自身初の表彰台を獲得している。
その一方、時間が長く複数のドライバーが交代しながら走るのが「耐久レース」。当然、耐久レースはレース時間が長いことから、観戦する側もスプリントレースとは違った楽しみ方がある。スプリントレースではレース途中に観戦ポイントを移動するのは厳しいが、時間が贅沢に使える耐久レースでは色々な場所に行けるのが嬉しいポイントだ。富士スピードウェイは様々なコースレイアウトが凝縮されているので、観戦コーナーによって異なるバトルを見ることは可能だ。

例えば、メインストレートでは「スリップストリームを使った追い越し」、TGRコーナー(1コーナー)やダンロップコーナーでは「ブレーキング勝負」、トヨペット100Rコーナーや第13コーナー~パナソニックコーナーなどでは「アクセルコントロールとライン取り」などに注目してほしい。また、移動の際には今年で50周年をむかえる富士スピードウェイの歴史の一つである「30度バンクメモリアルパーク」に足を運んでみるのもいいだろう。
ちなみにスーパー耐久のチケットは全席自由席だが、今回はパドックも無料なのでレース中のバトルだけでなく、迅速かつ正確なピット作業も是非チェックしてほしい。

また、耐久レースの楽しみ方はレース観戦だけでない。今回はグランドスタンド裏のイベント広場で「TOYOTA GAZOO Racing PARK」が開催。ミニサーキットで本格的なエンジンカーに乗ってタイムアタックを楽しめる「THE KART」、新旧86の比較もできる「フルブレーキ/スラロームエクスペリエンス」、「レーシングシミュレーター」、「86KOUKI&G’sモデルの展示」、AKB Team8スペシャルライブやルーキーじゃんけん大会なども行なわれる「TOYOTA GAZOO Racing Stage」と楽しめるコンテンツが盛りだくさんだが、レース時間も長いので時間を気にせず楽しめるのだ。
お腹が空いたら、グランドスタンド裏の「ショッピングテラス」やパドック裏の「レストランORIZURU」を利用するのもいい。時間に余裕がある時には、御殿場市街まで足を伸ばして地元グルメを堪能するのもアリだろう。

このような“耐久レース”ならではの面白さを味わいに、ぜひサーキットに足を運んでほしい!!

  • 約1.5kmにも及ぶメインストレート。「スリップストリームを使った追い越し」は必見。
    約1.5kmにも及ぶメインストレート。「スリップストリームを使った追い越し」は必見。
  • メインストレートからのTGRコーナーでは、ドライバーのブレーキング勝負に目が離せない。
    メインストレートからのTGRコーナーでは、ドライバーのブレーキング勝負に目が離せない。
  • 今年で50周年を富士スピードウェイの歴史の一つである「30度バンクメモリアルパーク」
    富士スピードウェイの歴史の一つである「30度バンクメモリアルパーク」
  • 今回はTOYOTA GAZOO Racing PARKも開催。レース観戦以外にも楽めるイベントが盛りだくさん!
    今回はTOYOTA GAZOO Racing PARKも開催。レース観戦以外にも楽めるイベントが盛りだくさん!
  • 「THE KART」。TOYOTA GAZOO Racing PARKでは大人だけではなく小さなお子様も楽しむことができる。
    「THE KART」。TOYOTA GAZOO Racing PARKでは大人だけではなく小さなお子様も楽しむことができる。
  • レーシングシミュレーター。ドライビングテクニックを腕試しする事ができる。
    レーシングシミュレーター。ドライビングテクニックを腕試しする事ができる。
  • グランドスタンド裏の「ショッピングテラス」。メニューは全てテイクアウト可能。レースを観ながら食事をしたい人にもお勧め。
    グランドスタンド裏の「ショッピングテラス」。メニューは全てテイクアウト可能。レースを観ながら食事をしたい人にもお勧め。
  • パドック裏の「レストランORIZURU」。アドバンコーナーや富士山を望みながら食事を楽しめる。
    パドック裏の「レストランORIZURU」。アドバンコーナーや富士山を望みながら食事を楽しめる。

次戦予告

スーパー耐久 第5戦
開催予定:2016.10.22 ~ 23
場所:岡山国際サーキット

※プレビューページは2016年10月上旬公開予定です。

スーパー耐久最多勝男!木下隆之のスーパー耐久まるわかり