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川井ちゃん、右京さん、これがWECで戦っているクルマ(TS050 HYBRID)なんですよ! 後編「待望のWEC富士へ! 見どころと決意を語る」

川井ちゃん、右京さん、これがWECで戦っているクルマ(TS050 HYBRID)なんですよ!
後編「待望のWEC富士へ! 見どころと決意を語る」(1/2)

F1をよく知る川井一仁さん、片山右京さんと、TOYOTA GAZOO RacingのWECドライバーである中嶋一貴選手と小林可夢偉選手の座談会の第2弾。

後編では、間近に迫ったWEC 第7戦 富士6時間レースの見どころや楽しみ方を語ります。

昨年、WEC富士を現地から観戦された川井さんは、昨年の優勝ドライバーである可夢偉選手にするどく切り込み、片山さんは富士での両選手の活躍に心を馳せます。

これを読んでおけば、10月13〜15日のWEC富士がさらにおもしろくなること間違いなしです!

昨年のWEC富士、タイヤ無交換の舞台裏

―― いよいよ来週に迫ったWEC富士6時間レース。4輪駆動にエネルギー回生で最大1000馬力を誇るTS050 HYBRIDが、富士スピードウェイで見られますね。

小林可夢偉(以下、可夢偉) たぶん今年、富士スピードウェイを走ったレーシングカーの中では、WECのクルマが一番速いクルマになると思います。(国内で1番速い)スーパーフォーミュラより、絶対速いですよ。
富士スピードウェイの第3セクターとか、4輪駆動のTS050 HYBRIDで攻めたら、曲がりながらでも(アクセルを)踏めて気持ちいいもんなぁ。

中嶋一貴(以下、一貴) 確かに「トラクションがないから我慢して・・・」というのが基本ないので、特にタイヤの状態がいいときはすごく楽しめると思います。

富士山を望むことができる富士スピードウェイの第3セクター 富士山を望むことができる富士スピードウェイの第3セクター。
ドライバーふたりとも「楽しめるポイント」に上げた。

―― 川井さんは昨年の対談後に、WEC富士を観戦されましたね。いい機会ですので、おふたりに聞きたかったことなどありますか?

川井一仁氏(以下、川井) じゃあ、可夢偉くんに。
最後のピットストップで「絶対タイヤ交換するんじゃない!」と思って見ていました。だから、本当にタイヤ交換しないで、勝負に出たときは「やったー! やったー!」って一緒に見てた人たちと喜んでました(笑)
あれは誰が決断したの?

可夢偉 クルマに乗る前から「タイヤ交換なしでいきたい」とエンジニアに言ってました。勝つためにはそれしかなかったし、逆にそれをしないと勝てないから。「最後のそれに賭けるよ」って。
でも、エンジニアはイエスとも、ノーとも言わず・・・(苦笑)
エンジニアって基本「考えておく」としか言わないので、走りながら状況をみて判断しました。

川井 タイヤのことは、ドライバーに聞くのがベストでしょ。
エンジニアはウエアレート(タイヤの消耗率)とか、温度とかのデータではタイヤの状態を判断することができるけど、F1でもやっぱりドライバーにしつこく聞くからね。

TS050 HYBRIDを囲んで話す川井一仁さん、片山右京さん、中嶋一貴、小林可夢偉 TS050 HYBRIDを囲んで話す4人。

可夢偉 状況は厳しかったんです。
あのときのアドバンテージは、レース終盤になって路面にタイヤのラバーが乗って路面コンディションよくなっているというぐらい。
夕方になって路面温度は下がっていたから、摩耗したタイヤで、おまけにタイヤが冷えてきた状態でTGRコーナー(1コーナー)のブレーキを踏まなきゃいけないから、リスクもすごくありました。
2位のアウディとはほんのわずかしか差がなかったから(なんらかのアクシデントで)セーフティカーが出たら終わりだなというのもあったけど。
とにかくタイヤ無交換じゃないと、トップにはなれないなというのがあったから。

―― 昨年のレースをご覧になっていない方向けに補足をしておくと、昨年のWEC富士6時間レースは、5時間を経過した時点でも上位3台が10秒以内でトップを争う僅差のレースでした。
小林可夢偉選手の乗るTS050 HYBRID 6号車は、最後のピットストップでタイヤを交換せず、ピットストップにかかる時間を短くする作戦でトップに浮上。
ライバルが新品タイヤに交換していたため、徐々に差を詰められたものの、可夢偉選手はタイヤをいたわりながらトップを堅守。最後は1.439秒差という僅差で逃げ切り、優勝を果たしました。

片山右京氏(以下、右京) そうそう、思い出したよ。6時間レースしてたのに、トップと2位の差がたった1.439秒だなんてすごいレースだったよね。
WECは、クルマの進化だけじゃなく、こういったコース上でのバトルや作戦面もおもしろいよね。

一貴 WECは「人」の部分が、すごく残っているレースだと思います。

トップチェッカーを受けた小林可夢偉選手がドライブするTS050 HYBRID 6号車。ゴール時の2位、アウディ8号車と差はわずか1.439秒だった

あっという間の6時間

―― 川井さん、普段解説されているF1は、長くても2時間でレースが終わりますよね。WECは普通のレースでも6時間ですから、見ていて長く感じませんでしたか?

川井 いやぁ、飽きることはなかったですよ。(トップと順位が)ひっくり返る要素もあるし。

可夢偉 最近のF1は展開が読めてしまうからね。
WECはドライバーもしんどいだろうし、クルマもきついよなって、見ていると心配事がだんだん増えてくるんです(苦笑)その分、気持ちも入っていく。

川井 だから、ル・マンの24時間はもっとひやひやしたよ。
「今そこでバックマーカー抜かなくていいじゃん!?って、走っているそこはコース外だろ!」って(笑)

右京 そうだよね。もうちょっとしたら寝ようとか思いながら見てたら、今年も結局24時間見ちゃったし。

川井 可夢偉くんがポールを獲ったのも悪い!(笑)

可夢偉 (苦笑)

普段、約2時間でレースが行われるF1の仕事を行っている川井一仁さん 普段、約2時間でレースが行われるF1の仕事を行っている川井さん。
WECはその3倍のレース時間にも関わらず、飽きることはなかったと語った。

右京 今年のル・マンはファン目線で見ていました。トヨタが勝つだろうって思いもあったし、なにかが起きてもひっくり返すだろうと思っていたら。
でも、やっぱりドラマが起きるし。本当にどうなるかわからない。ル・マンは、人生の縮図みたいですね。

川井 ちょっと提案があるんだけど、6時間のレースだったら、3時間走って、1回中休みを入れたあと、もう3時間っていうのはダメ?

右京 ダメ!
それじゃあドラマが切れちゃう。

川井 中休みの間にパドックでクルマを直していいとか・・・。

右京 ダメ、ダメ!
みんな、傷んで苦しんでいるところを見るの。そこからどうがんばるか、どういう作戦で挽回するか・・・っていうのが大事なんだから。

川井 出た!!この人は自分に感動して泣く人だからね(笑)

右京 そこまで変態じゃないよ(笑)

川井 一緒に仕事していると、時々あるんだよ。
「お、右京。今、自分に感動している!」とか(笑)

右京 川井ちゃん!!僕はそんなやばい人じゃないですから(苦笑)

一貴、可夢偉 (笑)

川井さんのツッコミに苦笑いする片山右京さん 川井さんのツッコミに苦笑いする片山右京さん。