5月20日(土)、2017年FIA世界ラリー選手権(WRC)第6戦 ラリー・ポルトガルの競技3日目となるデイ3がポルトガル北部で行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのユホ・ハンニネン/カイ・リンドストローム組(ヤリスWRC#11号車)が総合7位に、ヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ組(ヤリスWRC #10号車)が総合9位に、エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組(ヤリスWRC#12号車) が総合11位につけた。各選手とも、それぞれ異なる困難に直面したが、それでも全員がすべてのステージを走りきり、ヤリスWRCは全車が明日の競技最終日に駒を進めることになった。
- #11号車(ユホ・ハンニネン、カイ・リンドストローム)
ラリー・ポルトガルの競技3日目デイ3は、サービスパークが置かれるマトジニョスの北〜東北エリアで6本のグラベル(未舗装路)SSが行われた。ハンニネンは堅実な走りを続けていたが、午後のステージの途中でクルマが一時的にストップするトラブルに見舞われタイムを失った。ラトバラは、胃痛に苦しみながらもSS14ではトップ3タイムを記録し、総合9位に順位を上げた。今回がヤリスWRCでのデビュー戦となったラッピは、徐々にクルマに慣れ良いタイムを刻んでいたが、SS15でルーズグラベルに乗った際に走行ラインがワイドに膨らみ、クルマの右リヤを壁にヒットし破損。サスペンションとブレーキにダメージを負い、大幅にタイムを失うことになった。このようにデイ3では各クルーとも何かしら問題に直面したが、今ラリーでもっとも長い1日を揃って走破し、貴重な経験を積むことに成功した。
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- <<トミ・マキネン(チーム代表)>>
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今日はクルマとタイヤに大きな負担がかる、とてもハードな1日でした。コースは昨日とは大きく違い、より硬い路面の上に砂のようなグラベルが乗るロードコンディションでした。エサペッカは終盤まで非常に良いペースで走っていましたが、最後のSSでは小さなミスを冒してしまいました。しかし、私は彼を責めるつもりは全くなく、今日起こったことから彼が多くを学んだと信じています。ヤリ-マティは体調が優れなかったにも関わらず、昨日に続き良いタイムを刻みました。もし昨日転倒していなければ、きっと上位争いに参加できていたはずです。そして、ユホは今日も堅実な走りを実践し、3人の中でトップの位置につけチームを牽引するなど期待に応えてくれました。彼のクルマに起こった小さなトラブルに関しては、今晩精査します。
- <<ヤリ-マティ・ラトバラ (ヤリスWRC #10号車)>>
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今日は胃がとても痛み、何も食べ物を受け付けないぐらい酷い体調で1日をスタートしました。しかし、幸いにして、体調はだんだんと良くなっていきました。クルマは、小さなトラブルこそありましたが、走りは大きく進化したと思います。特に、ステージを2回目に走行する際のサスペンションのセッティングは、昨日よりもかなり良くなり、正しい方向に向かっていると思いました。今日のコースは昨日よりも硬く、ルーズグラベルによる影響は大きくなりましたが、午後の2回目の走行時でも道はそれほど荒れていませんでした。ここまでのところ、我々はこのラリーから多くのことを吸収しています。
- <<ユホ・ハンニネン (ヤリスWRC #11号車)>>
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最終ステージでは、前を走るエサペッカのクルマのダストが見えたその直後に、彼は迅速に道を譲ってくれました。彼らクルーと、それを指示したチームの采配に心から感謝します。午後のSS14ではなぜかクルマが止まってしまい1分程度を失い、タイムをロスしました。しかし、今晩チームが問題を解決してくれると信じています。コースは全体的に昨日よりも良いコンディションだったと思いますが、私は今日のステージの経験がないため、着実な走りに徹しました。タイヤのグリップは1日を通して変わりやすく一定ではないと感じましたが、特に大きな問題はありませんでした。明日も冷静さを失わずに走り、良い順位でフィニッシュできることを願っています。
- <<エサペッカ・ラッピ(ヤリスWRC #12号車)>>
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最後のSSの、アスファルトの上にルーズグラベルが乗ったセクションでミスを冒しクルマのリヤをコース脇の壁にぶつけてしまいました。その結果右のリヤにダメージを受け、ブレーキディスクも失ってしまいましたが、サービスパークまで戻れたのは幸運でした。また、今日の午前中の2本目のSSでは私のミスで走行中にエンジンが止まり、再スタートするまでに1分程かかってしまいました。このように今日はいくつか失敗を冒し、またタイヤ選択に関しても見誤った部分はありますが、これも成長の過程の一部であると思っています。また、今日は昨日よりも路面が滑りやすく、そのためブレーキのタイミングが少し早すぎたと感じることが多かった1日でした。
- <<ラリー・ポルトガル デイ3の結果>>
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1 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (フォード フィエスタ WRC) 3h 15m24.6s
2 ティエリー・ヌービル/ニコラス・ジルソー (ヒュンダイ i20 クーペ WRC) +16.8s
3 ダニ・ソルド/マルク・マルティ (ヒュンダイ i20 クーペ WRC) +51.3s
4 オット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (フォード フィエスタ WRC) +1m29.6s
5 クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン (シトロエン C3 WRC) +1m32.4s
6 エルフィン・エバンス/ダニエル・バリット (フォード フィエスタ WRC) +3m01.8s
7 ユホ・ハンニネン/カイ・リンドストローム (トヨタ ヤリス WRC) +3m29.8s
8 マッズ・オストベルグ/オーラ・フローネ (フォード フィエスタ WRC) +5m16.6s
9 ヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ (トヨタ ヤリス WRC) +5m32.7s
10 アンドレアス・ミケルセン/アンダース・ジーガー (シュコダ ファビア R5) +7m06.6s
11 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (トヨタ ヤリス WRC) +8m00.9s
(現地時間5月20日21時00分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
- <<Topics>>
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長い歴史を誇るラリー・ポルトガルでは、WRCの歴史に残るような名勝負が多く繰り広げられ、いくつもの興味深いストーリーが記されてきた。その中でも、1980年にワルター・ロールが成し遂げた快挙は永遠に語り継がれるべきものだ。フィアットをドライブするロールと、当時彼のチームメイトだったマルク・アレンは激しいトップ争いを展開した。アレンはポルトガルを得意としており、彼の5勝という最多優勝記録は現在も破られていない。ラリー終盤、ポルト南側のアルガニルのSSで二人の勝負はほぼ決まった。SSは深い霧に包まれ視界はゼロに等しかった。しかし、誰もが大幅にペースを落とす中、ロールは42kmのSSでライバルに約5分という圧倒的なタイム差をつけて優勝を手にしたのだ。ではなぜ、ロールは霧の中でそれほどまでに速かったのか?ロールは夜中のうちにSSを走り込み、コースを熟知すると共に、完璧なペースノートを作り上げていたのだ。その当時は、現在のようにレッキ(コースの事前下見走行)の制限がなく、走ろうと思えば本番のコースをラリー前に何度でも走ることができたのである。
- <<明日のステージ情報>>
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競技最終日となる5月21日(日)のデイ4は、マトジニョスの東〜東北で4本、計42.93kmのSSが設定される。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は254.04kmと、4日間でもっとも短い1日だ。しかし途中に整備を行なうサービスは設けられないため、クルマを壊さぬように細心の注意を払って走る必要がある。SS16と、その再走ステージとなるSS19「ファフェ」はビッグジャンプで知られる名物ステージであり、毎年多くの観客がSSを訪れる。そして最後のステージとなるSS19は、トップ5タイムを刻んだ選手にボーナスの選手権ポイントが付与される「パワーステージ」に設定されている。最初のSSは午前9時過ぎにスタートし、ウイナーは午後3時45分からマトジニョスで行われる表彰式で、優勝トロフィーを受け取る。