ヤリスWRC 大図解ヤリスWRC 大図解

ヤリスWRC 大図解~380馬力オーバーのモンスターVitz~

世界中のあらゆる道が戦いの舞台となる世界最高峰のレースWRC。TOYOTA GAZOO Racingは、その過酷なレースに勝つために、常に究極のクルマづくりをおこなっています。

2017年の新ワールドラリーカー規定に基づいて開発されたヤリスWRC、見かけはヴィッツと瓜二つだけど、中身はWRCを戦い抜くためのモンスターマシン。そんなヤリスWRCの秘密に迫ります。

ヤリスWRC = ヴィッツなの!?

「ヤリス」は、「ヴィッツ」の海外での名前。WRCを戦うヤリスWRCは、ヴィッツをベースにWRカーに仕立て上げたクルマなのです。ボディの大きさや車両重量、エンジンの搭載位置など、クルマの性能を決める主要な要素については、ルールで改造できる範囲が厳しく制限されています。つまりベース車の持つ特性が、競技車両にも大きく反映されるのです。

EXTERIOR 外観

AERO PARTS

エアロパーツ

2017年の学びを活かし、
進化した大迫力デザイン

大きく張り出したサイドシル(ドアの下の部分)、巨大なリアウィングなど、大迫力のエアロパーツに身を包んだヤリスWRC。その形状にはひとつひとつ、重要な役割があります。

前方がえぐられたサイドシル(ドアの下の部分)は、車体と地面の間に入り込んだ空気をサイドに逃がして、車体の浮き上がりを抑えます。二重になったリアウィングはルーフに沿って流れた空気を捉え、強力なダウンフォース(地面に押さえつける力)を発生。空気の力によってタイヤを地面に押さえつけることで、エンジンから絞り出される大出力を可能な限り路面に伝えます。

また、2018年には、フロント周りの空力パッケージ改良し、更なるダウンフォースを得ることで走行安定性を向上しています。

HEADLIGHT

競技用ヘッドライト

道路の起伏を描き出す6連ライト

競技が夜間に行われる場合は、ほとんど灯りのない真っ暗闇の中を時には時速200km近くで駆け抜けなくてはなりません。
そこで、ボンネットの上に「ライトポッド」を装着。6つのライトと左右のコーナリングライトで進路を照らします。
一般車のヘッドライトより遠くまで、道路の起伏を分かりやすく描き出すような配光が工夫されています。

COLORING

カラーリング

ボディ形状を引き立たせる特注カラー

TOYOTA GAZOO Racingの赤と黒、白を用いたアグレッシブなデザインが、ヤリスWRCのスポーティーさをさらに引き立てます。
全身に貼り付けられたロゴは、パートナー企業のもの。
多くのパートナーの協力があって、1台のWRカーができあがるのです。

INTERIOR 室内

INTERIOR

内装

無駄なものは一切ない、
走りに特化した空間

高級感のあるダッシュボードや上質なスイッチは、WRカーには必要ありません。
軽量化のため、すべての内装は取り外してあります。
ロールケージが張り巡らされた室内にむき出しのパーツが設置された空間は、まさに戦いの場という雰囲気。

SEAT

シート

ドライバーに合わせて作る、
カスタムメイド

WRカーは二人乗り。重量配分を考え、2つのシートが前後方向のちょうど真ん中付近に固定されています。なるべく重心を低くするため、コ・ドライバーの座る助手席は、ドライバー席よりも低く設置。フロアすれすれに座ります。

ドライバーのカラダを支えるシートは、各ドライバー向けのカスタム仕様。ドライバーの身体に合うようにひとつひとつ調節されています。

AIR CONDITIONER

エアコン

天井から取り入れる風がエアコン代わり

ラリーに必要ない装備は一切なし。ということで、もちろんWRカーにエアコンはありません。
さらに、ドアの窓も市販車のように大きく開かない構造。
そこで屋根に取り付けられた空気取り入れ口(ルーフベンチレーター)からの外気で室内を冷やします。

さらにシート脇には、トレーナーが用意したスポーツドリンクを入れた水筒を装着。
いつでもストローで飲めるようになっています。

CAR NAVIGATION

カーナビ

カーナビならぬ人ナビ!?
コ・ドライバーのナビゲーション

WRカーには市販車のようなカーナビは付いていませんが、その代わりに優秀なコ・ドライバーが道案内。コ・ドライバーはドライバーとともにコースを事前に下見して(レッキといいます)、カーブの大きさから路面状況まで詳細にチェック。ペースノートと呼ばれる自分専用のメモを作ります。レースのときは、現在位置に合わせてペースノートを読み上げ、ドライバーに道路状況を逐一伝えます。コ・ドライバーの道案内があるからこそ、ドライバーは安心して先の見えないカーブを猛スピードで疾走できるのです。

DRIVEABILITY 走行性能

ENGINE

エンジン

380馬力オーバーのモンスターエンジン!

ヤリスWRCは、1.6リットル直噴ターボエンジンを搭載。ヴィッツに近い小排気量にもかかわらず、その出力は、なんと380馬力以上。
4リットルクラスの自然吸気エンジンに匹敵するハイパワーです。
パワーだけでなく、長く過酷なコースを走りきるだけの耐久性も兼ね備えています。

モンスターマシンだけど、WRカーの運転はそんなに難しくはありません。
マニュアル車の運転ができれば動かすことは可能で、一般的なスピードで走らせる分には特別な技術は必要ありません。
幅広い環境を走らせるWRカーは、「乗りやすさ」も重要なんです。
テストドライブの後、メカニックやエンジニアが運転して帰ることもあります。

SUSPENSION

サスペンション

大ジャンプにも耐える、
超高性能サスペンション

舗装路未舗装路、そして雪道など、悪路を猛スピードで走るために専用開発のサスペンションを搭載。その高い性能の一端は、ジャンプを見れば分かります。40メートル近い大ジャンプをしても、着地の衝撃をしっかりと吸収。何事もなかったかのように走り続けます。

BRAKE

ブレーキ

コースに合わせてブレーキを選択

コースや路面の状態によってブレーキに求められる性能は異なります。舗装路(ターマック)では制動力が強いブレーキディスクを装着。一方、路面が滑りやすく大きな制動力を必要としないグラベルでは、ターマックよりも小さいブレーキディスクを装着します。

SAFETY 安全性能

SEAT BELT

シートベルト

強力な
シートベルトで
全身をがっちり固定

フル加速やハードなブレーキング、高速でのコーナリング、そして大ジャンプと、前後左右上下、あらゆる方向から大きな力が加わるWRカー。どんな状況でも正確に運転するため、肩、腰、そして大腿部を固定するシートベルトでドライバーをしっかりとシートに固定します。

HELMET WEAR

ヘルメット・ウェア

クルーもフル装備で

WRカーにエアバッグはありません。その代わり、ドライバーとコ・ドライバーは、ヘルメットに加え、"HANSシステム"なる首を保護する装備も装着。さらに燃えにくい素材でできたレーシングスーツを着用し、万が一のアクシデントに備えて万全の準備をします。

ROLL CAGE

ロールケージ

クルーを守る頑丈な“鳥かご”

WRカーの車内をのぞき込むと、車内に太いパイプが張り巡らされています。
これはロールケージと呼ばれ、万が一の横転(ロール)時に、車内空間を確保するケージ(鳥かご)。
ルールで装着が義務づけられています。このケージが安全を守ってくれるから、
ドライバーは安心して狭い道を猛スピードで走り抜けることができるのです。

MAINTENANCE 整備

TOOL

車載工具

走行中のトラブルはドライバーが応急処置

走行中のアクシデントに対応するため、工具、スペアタイヤ、消火器などの搭載が義務づけられています。競技中に故障やパンクなどのアクシデントが発生した場合、基本的にメカニックが助けることはできません。ドライバーとコ・ドライバーが協力し、自らのマシンを修理して走行を続けることもあります。

MECHANIC

メカニック

足回り交換は5分程度!
整備性も大事な性能のひとつ

悪路を走るラリーでは、走行中に障害物にヒットしたり、マシンにトラブルが発生したりすることも少なくありません。そんなときは次のスタート時間までの短時間に、大急ぎの修理がはじまります。

WRカーは、修理や整備がしやすいよう設計段階から考えられています。例えば、ナットを締める箇所には工具を差し込む隙間も確保。短時間で修理やパーツ交換ができるよう考えられています。このため、訓練されたメカニックなら、5分程度でフロントの足回り一式を交換してしまいます。

普段は一般車が行き交う舗装路から、荒れた砂利道、雪道まで。世界中の道路を舞台に戦う世界最高峰のレースWRC。走行性能はもちろんのこと、
あらゆる路面に対応する柔軟性や、最後まで走りきる耐久性など、クルマの総合力が問われます。そして、それこそがクルマを磨き上げるために最高の試練となるのです。「もっといいクルマ」を作るために。それが、TOYOTA GAZOO Racingがこの過酷なレースに挑戦する理由です。

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