子供たちとふれあう成瀬弘氏
トヨタブース内に設けられたGAZOO Racingコーナーでは、ニュルブルクリンク24時間耐久レースを走破した LEXUS LF-A 15号車と、今年8月に100台限定発売になり、完売した iQ GAZOO Racing tuned by MN が展示され、初日から子どもたちのみならず、クルマの周りにはたくさんの人が集まった。
最近見かけることが少なくなってしまったスポーツカー。レース仕様のカラーリングが施された LEXUS LF-Aを目の前にし、カメラのシャッターを押さずにはいられない。見るだけではなく、子どもたちへのコックピット搭乗体験が許され、LEXUS LF-Aの生みの親でもありトヨタマスターテストドライバーの成瀬弘氏が、2日間に渡り訪れた子どもたちをアテンド。子どもたちの輝く瞳に成瀬氏は、コックピットのみならずボンネットにまで乗せてしまう大サービスぶりだった。
同じくGAZOO Racingドライバー飯田章選手も同様のサービスや、気軽に記念撮影に応じるなど、ファンサービスに勤しんだ。 子どもたちに「憧れ、夢、希望」を抱いてもらえないと、モータースポーツファンのすそ野は広がらないと飯田選手は語った。
今回のようなイベントを通して、自分が担う役割や使命を理解したうえで、GAZOO Racingと共に成瀬氏、飯田選手、スタッフが尽力している姿がそこに見られた。
さて、その2台のクルマは展示されるだけではなく走る姿も披露。お台場特設会場走行エリアで開催された「トヨタモータースポーツスペシャルラン」に登場したのは、 LEXUS LF-A。ベテラン飯田選手が駆り、決して広くない走行エリアを縦横無尽に走り周り、コースぎりぎりまで攻める姿に会場は固唾を飲む。5分間の走行中、観衆はその姿を追い甲高いV10サウンドに酔いしれた。
もう1台のiQ GAZOO Racing tuned by MNは、同所で11日(日)F1ブラジルGP参戦が発表されたパナソニックトヨタレーシングの小林可夢偉選手が、抽選で選ばれたファンの方との同乗走行を行った。既に完売し話題にのぼったこのクルマに、さらに今回小林選手のF1参戦の話題がプラスされ、ファンにとっては貴重な走行となった。
トヨタブースステージでは、初日は飯田選手、成瀬氏の2人によるニュルブルクリンク24時間耐久レースの裏話やクルマの「味づくり」について、2日目は、飯田選手、TOM’S所属の脇阪寿一選手、大嶋和也選手の3人によりモータースポーツをテーマとしたGAZOOトークショーが行われた。
初日、これまでのニュルブルクリンク24時間耐久レースについて、飯田選手、成瀬氏より語られた。複雑に入り組んだニュルブルクリンクのコースは、森の中にアドルフ・ヒトラーが作ったテストコース。つまり一般道。初めて走った時、成瀬氏はこのバンピーな難コースを習得するのに1週間かかったと言う。GAZOO Racingで参戦した当初のほろ苦い体験をここで吐露。しかしLEXUS LF-Aを強くするには最高のコースであり、得るものは大きいと語った。成瀬氏のこれまでのキャリアの話に、さらに会場が聞き入る。自身が初めて、ニュルブルクリンクでレースに参戦したのは、40年前。セリカ1600GTを駆り日本車として初めて参戦した。当時はピットに入れてもらえず、傘をさして屋外で作業したという。しかし結果は2リットルクラスで優勝。会場から拍手が巻き起こった。
いぶし銀のトークは更に続き、話題のiQ開発のトークへ。素材が良ければ扱うのも楽しいもの。食べた料理がおいしければ、また食べたいと思うのと同じ。iQを見て、かわいい、かっこ良い、クルマがおもしろい、またこのクルマに乗りたいと思う「後味」が大事だ と語った。成瀬氏自身も調理師免許を持っているとのことだが、クルマの開発を料理にたとえ、難しくなりがちな専門的なテーマを、一般の方にわかりやすい切り口でシンプルに説明。ここまで来ると、聴衆が聴き惚れてしまうほどだ。成瀬氏のトークは、彼の歴史のほんの1ページに過ぎない。クルママイスターからの貴重なトークは、開催コンセプトにマッチした素晴らしいものであった。
またクルマ好き、モータースポーツ好きを増やしたいという2人の意見も熱く語られた。飯田選手自身もクルマに抱いた子どもの頃の憧れを語り、ここに集った子どもたちにも、クルマの前で撮った1枚の写真から生まれた思い出に、成長してからもクルマが伴って欲しいと願いを込めた。
イベント2日目、グランドフィナーレの前に、トヨタステージ最後の催しとして開催された GAZOOトークショーでは、モータースポーツの魅力などが語られた。現在レースを戦っている面々による硬軟織り交ぜての会話が繰り広げられた。過去にチームメイト同士だった飯田、脇阪両選手は息のあった掛け合いで、GAZOO Racingも参加しているプリウスカップの裏話を披露。
また、こういったファンとの交流イベントが、子どもたちに夢を与えると共にモータースポーツへのアプローチになるとアピール。脇阪選手自身も、メーカーの枠を超えたファンイベントを今年8月に主催しており、今回のようなイベントを有意義に感じていたようだ。
飯田選手、脇阪選手、大嶋選手のさまざまなレースシーンに関わる話題に会場が最後まで沸き、時間も大幅にオーバーしたが、大盛況のまま、2日間に渡るイベントはフィナーレを迎えた。
日本最大のモータースポーツイベントに、今回初参加したGAZOO Racingにも、新しいページが増えた。これからもページは更に加えられていくことだろう。