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S-FR開発者
スペシャルインタビュー

SPECIAL INTERVIEW

  • KAZUO MORI
  • KOICHI MATSUMOTO

カートレースでの経験がS-FRに活かされている!?

まず、お二人がS-FRの担当になるまでの経歴を教えてください。

スポーツ車両統括部森 和生

スポーツ車両統括部 森 和生 1986年に入社して、最初はシャシー設計でランクルのフレームやサスペンションを5年くらい担当していました。その後、一瞬だけ実験をやりましたが、その後はずっと製品企画の担当です。初代イプサム、ガイア、2代目エスティマ、北米向けの2代目シエナなどを担当した後、3代目シエナでチーフエンジニアに。そういう意味では製品企画では「ミニバン人生」を歩んできたことになります。その後、2010年にスポーツ車両統括部に移りました。プライベートではレースをやっていたので、周りの人には「よかったね!!」と。スポーツ車両統括部でiQ GRMNスーパーチャージャーなどを担当した後、S-FRを担当することになりました。

デザイン部松本 宏一

デザイン部 松本 宏一 1988年に入社して、最初は7代目カローラを担当、カローラ系はバリエーションも仕向け地も多かったので色々とやりました。その後、11代目クラウンやアルテッツァなども担当しています。その後、研究開発の部署に移り、モーターショーモデルのデザインやブランディング/デザイン戦略などの先行開発を担当し、レクサス国内立ち上げなども行ないました。その後、先行企画の担当となり、森さんとS-FRと出会いました。

つまり、お二人は元々スポーツカーの担当は一度もしていなかったわけですね?

そうですね。これまで色々な事をやってきましたが、実は松本さんとの接点も全くありませんでした。

松本

私は森さんの存在は知っていましたよ。「シエナの北米大陸横断プロジェクト」と言うのがありましたが、その時にデザインの話に来たのが森さんでした。「何か変なおじさんだな?」と(笑)。

ちなみに、お二人ともレーシングカートをやられていると聞きましたが?

レース歴はかなり長いです。ちなみに先日参戦したカートレースでコースアウト。実はアバラ骨が折れています(笑)

松本

私は学生の時にやっていたのですが、S-FRのコンセプトを練るための「合宿」をやった時に、森さんがカートをやっている事を知って再開、今は同じチームです。

東京モーターショーでの大反響
しかし、その続きがあった!!

東京モーターショーでS-FRを発表しましたが、大変大きな反響があったと聞いています。松本さんは現場で生の声を聞いたそうですが、どのような評価でしたか?

松本

印象的だったのは「トヨタからようやく欲しいクルマが出てきたね」と何人にも言われたことですね。他には「本当にでるの? でないの?」と言う質問も多かったです。少なくても説明員である私に声をかけてくれた人は100%ポジティブな意見でした。

実は出すまでは正直「本当にエントリースポーツの受け皿はあるのか?」と言う疑問もありました。しかし、我々の想像を大きく越える反響に「受け皿はシッカリあるな!!」、「このようなクルマをユーザーは求めているんだ!!」と言う感触はありました。

ただ、トヨタにはすでにFRスポーツの86がラインナップされていますよね?

社内でも「ミニ86を作ってどうするの?」と言われました。そのため、我々が最初から言ってきたのは「ちょっと不便なFRのヴィッツ」でした。ハッチバックを買いに来た人が「何これ?」と気になる存在。そんな敷居の低さでいいのではないかと。

松本

それがスポーツカーのようにシューっとしたスタイルだったら、「私にはちょっと」と一歩下がってしまいます。なので、S-FRは「スポーツカーのエントリー」ではなく「クルマのエントリー」という認識ですね。入口はスポーツカーじゃなくても、乗っていくうちに「クルマって楽しいね」、「使っているとスポーツだね」と変わればいいんです。

シンプルで親しみやすいS-FRが
スポーティ&精悍なイメージに変貌!!

そんなS-FRがベースとなったのが、東京オートサロンでお披露目の「S-FR Racing Concept」です。S-FRの新たな提案だと思いますが、開発コンセプトは?

東京モーターショーでS-FRを出す時から、「素性がいいのでカスタマイズしたらビックリするくらい違う物になる」と思っていました。ならば違う世界感を表現してみようと言うことで開発したのがS-FR Racing Conceptです。S-FRはピラーの立ち方がいいので、CFRP製の大型エアロパーツやオーバーフェンダーをプラスすることで、よりスポーティなスタイルに仕上がっていると思います。

S-FRに対して精悍なイメージになっていると思います。ただ、写真だとサイズ感が解りにくいですね(汗)。

S-FRもそうでしたが「写真で見るより実物のほうが」と言う意見が多いです。ヴィッツを横に置くと良く解るのですが(笑)。

松本

ちなみに基本のボディはS-FRと全く一緒で、全幅のみオーバーフェンダーで片側+20mmずつ拡大(1695→1735mm)しています。それに合わせてタイヤも大きなサイズを履かせています。全高も1320→1270mmと大きく下げています。

S-FRは愛着のわくシンプルで親しみやすいスタイルですが、S-FR Racing Conceptでは?

松本

S-FRのデザインは流行り廃りのないシンプルさと中身(=FR)の素性の良さを表現しています。その素性を使って車高を下げ、全幅を広げたらもっとカッコ良くなるのでは? という純粋な発想です。

パッと見た時、KP61スターレットやAE86のレースカーの現代版のような雰囲気がしました。シンプルなモデルにちょっと手を加えるだけで、こんなに精悍でスポーティなモデルに変貌するんだと。

まさにそれが狙いです。ちなみにおじさん世代であれば、グッとくる物があると思いませんか(笑)。日産GT-RやレクサスRC Fなどの大きなモデルに大きなウイング…と言うのは、若い人でも見慣れていると思いますが、逆にコンパクトなモデルだと新鮮に見えるかもしれません。

パワートレインはターボを搭載
ベースの素性がいいと何でもできる!?

レーシングコンセプトと言うことは、やはりレース専用のモデルなんでしょうか?

そうではなく、「S-FRは色々やれますよ!!」と言う世界感を見せるための提案の一つです。このクルマを東京オートサロンでお披露目するのは、S-FRには「カスタマイズモデルとしてユーザーに楽しんでもらいたい」、「色々な用途に合わせて引き出しがあるんだよ」と言う想いがあるからです。S-FRとS-FR Racing Conceptがあることで、ユーザーも「あぁしたい、こうしたい!!」と言う意見も出てくるのではないかと。

つまり、ノーマルのS-FRと非日常であるS-FR Racing Conceptをお披露目することで、その間をユーザーに想像してもらおうと?

色々な使い方ができますが、非日常までOKですよ、という部分を見せたかったのです。古い言葉で言えば「羊の皮を被った狼」のようなイメージですかね?

ちなみに、今回もパワートレインに関しての詳細はありませんが、どのような物をイメージしているのでしょうか?

S-FRは「高回転型のNAエンジンでパワーウェイトレシオ6kg/PS位が理想」と自動車メディアに語りましたが、S-FRはそれに過給機をプラスするイメージですね。

松本

フロントマスクの奥にはインタークーラーもちゃんと見えていますからね(笑)。

つまり、見た目に見合ったパフォーマンスを盛り込みたいというわけですね?

そうです。

お客さんの声に応えるために
欲しい物には“蓋”はできない!?

東京モーターショーに続き、東京オートサロンでも大きな反響が出ると思いますが?

色々な意見が出ると思います。それによってベースをどうするのかを再考する必要もありますが、個人的には「あの方向でよかったね」と言う結論になって欲しいですね。

東京モーターショー、東京オートサロンと続けて提案があると言うことは、その先も気になりますが。確か86も同じような境遇を経てきたと思いますが?

詳しい事は言えませんが、一つだけ言えるのは「メーカーはお客さまが『欲しい!!』と言っている物に簡単に蓋をすることはできない」ということです。

豊田章男社長も多く人から「S-FR楽しみにしています」と言われたそうですね。

松本

他メーカーの人から色々と褒められたと聞いています。

クルマが現存する限り、「エントリーとして身近に置く」、「趣味として身近に置く」、「カスタマイズのために身近に置く」と言うクルマは何年先も変わらないと思います。東京オートサロンでは3日間クルマの近くにおりますので、クルマ好きの皆さんから色々な意見や提案を聞きたいと思っています。