今季は全9戦で争われる全日本ラリー選手権も、残すところあと2戦となった。終盤戦の山場となる第8戦「M.C.S.C.ハイランドマスターズラリー」は、岐阜県の飛騨高山が舞台となる。今年で40回目の開催を数える伝統の一戦は、グラベル(未舗装路)ラリーとして開催されていた2007年まではその長大で過酷なステージから「カーブレイクラリー」と称されたラリーだ。2008年以降はオールターマック(舗装路)ラリーとして開催されているが、高低差の大きいスペシャルステージ(SS)は予期せぬアクシデントが起きやすく、大番狂わせが起こることも少なくない。今年も、数多くのステージでドラマが待ち受けていた。
8本のSSが用意され、SS総走行距離77.38kmで争われたこのラリーは、初日のSS1、SS2を奴田原 文雄/佐藤 忠宜組(三菱ランサーエボリューション)が連取し、ラリーの主導権を握る。一方、このラリーで優勝すればシリーズチャンピオンが確定する勝田 範彦/足立 さやか組(スバル・インプレッサ)は、SS2を終えた時点で奴田原に対し10.7秒遅れの4番手と出遅れてしまう。その後、勝田はSS3とSS4で追い上げ2番手に浮上するが、奴田原とのタイム差は9.3秒差という苦しい展開。2日目は勝田が調子を上げトップに迫るが、初日のマージンを守り切った奴田原がわずか0.7秒という僅差で勝利した。
クラス別順位結果(上位3クルー)
※クラス区分の説明については、こちらを参照クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
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JN4 | 1 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ | |
3 | 高山 仁/河野 洋志 | 三菱ランサーエボリューションVII | |
JN3 | 1 | 眞貝 知志/田中 直哉 | ホンダ・インテグラ |
2 | 山口 清司/島津 雅彦 | トヨタ・カローラレビン | |
3 | 三好 秀昌/谷内 壽隆 | トヨタ86 | |
JN2 | 1 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツ RS |
2 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツ RS G's | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 山口 貴利/山田 真記子 | ダイハツ・ストーリア X4 |
2 | 小泉 茂/小泉 由起 | 日産マーチ | |
3 | 篠原 正行/馬瀬 耕平 | ダイハツ・ストーリア X4 |
このラリーに合わせて新車を仕上げて投入した勝田は「初日のタイムが悪すぎた。だが、2日目はタイムも上がり、マシンの仕上がり自体に問題はない」と、3年連続のタイトルに向け自信を覗かせる。一方の奴田原も「実は2日目のSS5であわやクラッシュというアクシデントがあったんだけど、結果的にタイムロスは0.3秒差に抑えることができた。ラリーはゴールするまで何が起きるか分からない。最後まで諦めずに戦う」と、逆転チャンピオンを狙う。勝利の女神はどちらに微笑むのか、最終決戦の新城ラリーに注目だ。
SS1でベストタイムを奪った眞貝 知志/田中 直哉組(ホンダ・インテグラ)がSS2でスピンを喫しクラス8番手に沈むという波乱の展開となったJN3クラス。その眞貝が約30秒のビハインドを跳ね返し逆転優勝を奪った。2位には最終SSで三好 秀昌/保井 隆宏(トヨタ86)を逆転した山口 清司/島津 雅彦組(トヨタ・カローラ)が入賞。シリーズリーダーの村田 康介が今大会をスキップしたため、シリーズポイントはわずか1ポイントの中に村田と三好と眞貝の3人が並ぶという大接戦となった。
JN2クラスは、第6戦京都で全日本初優勝を飾った川名 賢/小坂 典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)が、初日すべてのSSでベストタイムを奪う速さを見せ、今季2勝目を挙げた。2位には、初日のSS1でスピンして大きくタイムロスしてしまった天野 智之/井上 裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS G's)が、30秒近くあったロスタイムを取り返して入賞、3位には岡田 孝一/漆戸 あゆみ組(マツダ・デミオ)が入賞した。
第7戦ラリー北海道で三好 秀昌が全日本初優勝を奪い、高速グラベルラリーでのポテンシャルの高さを実証したトヨタ86。今回のターマックラリーでも一時は三好がトップを快走する活躍を見せてくれた。
また、GAZOO Racingトヨタ86のターマックドライバーを務める筒井 克彦も、初日の序盤戦に「バケットシートのシートポジションを固定するボルトが緩んでしまい、まともに運転することができない状態でした」というアクシデントに見舞われたが、サービスで修復した中盤戦以降は好タイムを連発し、最終的には三好に次ぐ4位でゴールを果たした。
「今年はシーズンを通してGAZOO Racingトヨタ86のセッティングに携われる機会をいただき、貴重な経験を得ることができました」と筒井。今シーズン、全日本ラリー選手権に登場以来、確実に進化を続けるGAZOO Racingトヨタ86。最終戦での活躍もぜひ期待したい。