第1戦 ツール・ド・九州2013 in 唐津
勝田範彦選手がツール・ド・九州8年連続優勝!
2013年JAF全日本ラリー選手権第1戦「ツール・ド・九州2013 in 唐津」が4月12日(金)~14日(日)、佐賀県唐津市周辺を舞台に開催された。ラリーは、12日(金)に選手一同が市内の唐津神社で交通安全の祈願を行ったのちに大鳥居前でセレモニーを行い、13日(土)から本格的な競技がスタートする。
初日のスペシャルステージ(SS)が12本、2日目のSSが7本と、総走行距離313.69kmに合計19本のSSが設定されている。2日間のSS走行距離は67.54km。SSの最短距離が0.36km、最長距離は10.90kmと、バラエティに富んだステージを数多く用意しているのが、このラリーの大きな特徴だ。
2日間とも天候に恵まれ、オールターマック(舗装路)の路面はドライコンディション。昼間の気温は20℃近くまで上がる陽気となったが、早朝の気温は5℃程度と肌寒く、1日の中で大きく変わる路面温度に合わせてどのようなタイヤコンパウンドを選択するかが難しいラリーとなった。
昨年、JN4クラスで3年連続チャンピオンを獲得した勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)が、初日のSS1から快走をみせた。SS1でトップタイムをマークした勝田は、その後も次々とトップタイムを連発。初日に用意された12本のSS中9本のSSでトップタイムを奪う速さをみせ、初日を終えた時点で2番手の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューション)に10.4秒差を付け2日目を迎える。
その2日目、オープニングとなるSS13で奴田原が1.1秒返すものの、今回のラリー最長となる10.90kmのSS14で勝田が奴田原に7.7秒差のトップタイムをマークし、両者の差を17.0秒差にまで拡大する。勝負はここで決した。その後は奴田原が追い上げをみせるものの、その差は10.2秒差にとどまるのみ。勝田は初日からトップの座を一度も譲ることなく、盤石の走りで8年連続となる開幕戦優勝を果たした。
トラブルを克服して獲得した“8年連続優勝”
全日本ラリー選手権の新記録となる開幕戦8連覇を達成した勝田範彦だが、その道程は決して順風万端ではなかった。実は今回のラリーも、「初日は自分でも上出来だと思っていましたが、2日目のSS16でミッショントラブルが起きてしまい、その後はゴールするまで3速がまったく使えず、いつリタイアしてもおかしくないという状態でした」と勝田。その状況でもライバルとのタイム差を最小限に食い止め、マシントラブルを克服する粘り強い走りが、今回の優勝をもたらした。2006年に「ツール・ド・九州 in 唐津」が開催されて以来、「このラリーでは1度も負けたことがない」という勝田がどこまで連覇記録を更新できるのか、来年の大会にも注目だ。
山口清司が激戦を制しツール・ド・九州初優勝
JN3クラスは、山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラレビン)、筒井克彦/永山聡一郎(ホンダS2000)がSS1から激戦を展開し、SSを終えるごとに順位が入れ替わるという接戦が展開された。さらに、その山口、筒井の激戦に三好秀昌/保井隆宏組(トヨタ86)が加わり、その三好を今年からトヨタ86で参戦する横尾芳則/船木一祥組と曽根崇仁/桝谷知彦組が追いかけるという、これまでにない激しい戦いとなった。2日目に入って山口がSS15でバーストして順位を落とすが、SS17でトップに再浮上し優勝。3.2秒差で筒井が2位、3台のトヨタ86によって争われた3位争いは、5本のSSでベストタイムを刻んだ三好が入賞した。
JN2初代チャンピオンの榊雅広が異次元の速さで優勝
JN2クラス(当時はJN1.5クラス)が設立された2008年に初代チャンピオンを獲得した榊雅広/井出上達也組(トヨタ・ヴィッツRS)が久々にJN2クラスに登場し、序盤からライバルを圧倒する速さを発揮し、総合12番手というJN3クラスのトップに迫る速さで優勝を飾った。2位には、昨シーズンの最終戦までチャンピオン争いを展開した川名賢/安東貞敏組(トヨタ・ヴィッツRS)が、SS1でコースアウトしてタイムロスするものの、その後挽回して入賞。3位には地元九州を本拠地とするベテランの岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)が入賞した。昨年のチャンピオン天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS)は、ギャラリーSSで痛恨のスピンを喫し、開幕戦を4位で終えた。
小泉茂が昨年の同大会に続き2連覇
最小排気量クラスのJN1クラスに難波巧/石下谷美津雄組のマツダRX-8が登場し話題を集めたが、「まだまだセッティング不足」と苦戦。さらに2日目はエンジントラブルを起こしてしまい、初戦はリタイアという結果で終えた。コンパクトカー勢による戦いとなったJN1クラスは、ターマックを得意とする小泉茂/小泉由起組(日産マーチ)が、「クルマとサスペンションとタイヤがコースにマッチしていた」と次々と好タイムを刻み、2位の松岡竜也/縄田幸裕組(ダイハツ・ストーリアX4)に2分以上の大差を付け、開幕戦を制した。3位には地元九州の山北研二/大谷三紀夫組(日産マーチ)、4位にはベテランの鷲尾俊一/田代啓之組(トヨタ・ヴィッツRS)がそれぞれ入賞した。
昨年はドライバーオーディションにより選考された筒井克彦がターマック(舗装路)ラリー、香川秀樹がグラベル(未舗装路)ラリーという2ドライバー体制で全日本ラリー選手権に挑んだGAZOO Racing ラック86。今シーズンは、誰がステアリングを握るのか注目を集めたが、開幕戦の唐津には2005年にホンダ・インテグラで、2006年はトヨタ・セリカで2年連続全日本チャンピオンを獲得した横尾芳則がドライバーとして登場した。
2003年、当時30歳の時に「誕生日を記念して初めてラリーに出場した」という横尾は、そのデビュー戦で総合優勝を飾り、2005年には当時最激戦区といわれていた全日本二輪駆動部門のBクラスにデビュー。その年にチャンピオンを獲得し、ラリーデビューわずか2年で全日本チャンピオンに輝いたという異例の経歴の持ち主だ。2010年から3シーズン、ラリー活動を休止していた横尾だが、久々に出場した今回の開幕戦もブランクを感じさせない速さを発揮した。
「初日は、まずはクルマに馴れることが一番の目標だったので、無理をせずに走ることを心がけました」という横尾は、2日目のロングステージで「クルマにも馴れてきたので、プッシュして走りました」と2番手を8秒以上引き離すベストタイムをマークし、4番手のポジションから一気にトップと4.1秒差の2番手までに浮上。その実力の片鱗をしっかりと発揮してくれた。
「でも、次のSSでスピンしてしまい、順位を落としてしまいました。今回のラリーの一番の反省点です」と横尾。ラックラリーチームの勝田照夫代表も、「彼本来の速さも確認できましたし、今シーズンの活躍を充分に期待できると思います」と太鼓判を押す。
「本格的にトヨタ86に乗ったのは今回が初めてですが、しっかりとセットアップされていて、気持ち良く走ることができました。昨シーズンの成果が活かされていると思います。次はもっと上位を狙います」と横尾。2年目を迎えるGAZOO Racing ラック86。今年の活躍に注目だ。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ |
2 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX | |
3 | 柳澤 宏至/中原 祥雅 | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 山口 清司/島津 雅彦 | トヨタ・カローラレビン |
2 | 筒井 克彦/永山 聡一郎 | ホンダS2000 | |
3 | 三好 秀昌/谷内 壽隆 | トヨタ86 | |
JN2 | 1 | 榊 雅広/井手上 達也 | トヨタ・ヴィッツRS |
2 | 川名 賢/安東 貞敏 | トヨタ・ヴィッツRS | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 小泉 茂/小泉 由起 | 日産マーチ |
2 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリア X4 | |
3 | 山北 研二/大谷 三紀夫 | 日産マーチ |