第3戦 がんばろう!福島MSCCラリー2013
リタイア続出のサバイバルラリー 圧倒的な速さを見せつけた奴田原文雄選手が今季初優勝
2013年全日本ラリー選手権第3戦は、福島県を舞台に6月7日(金)~9日(日)の日程で開催された。2011年から大会名称に「がんばろう!福島」のタイトルが加えられたこのラリーは、震災復興とともにラリーを通じて風評被害払拭を支援しようという願いが込められているラリーでもある。
ラリールートは、福島県内の棚倉町をホストタウンにいわき市、古殿町、鮫川村の1市2町1村に配置され、ラリー総走行距離は581.77kmと広範囲に及ぶ。また「三和ふれあい館」と「鹿角平観光牧場」の2カ所にラリーパークが設定され、県外からラリー観戦に訪れたギャラリーとともに地域の住民が、ラリーと触れ合う機会が設けられている。
第2戦に続きグラベル(未舗装路)で行われる今回のラリーは、初日に9本、2日目に7本のSS(スペシャルステージ)が設定されているが、ラリーカーにダメージを与えやすいハードな路面が多く、例年、マシントラブルやコースアウトなどでリタイアしてしまう選手も多い。今年も、2日間合わせて総勢22台がリタイアというサバイバルラリーとなった。
今年のラリーは、序盤戦に比較的距離の長い2本のSSを2回ループするという設定となっている。そのため、各陣営とも「SS1からSS4までが大きな山場となる」と予想。各クラスともSS1から壮絶なバトルが展開された。
そのなかで、奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)がSS1から4連続ベストタイムをマーク。SS4を終えた時点で、2番手につける柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサ)に対し16.8秒のリードを築き上げた。
一方、先頭スタートとなった昨年のチャンピオン勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)は、1ループ目で路面を覆う浮き砂利の掃除役となってしまったため、タイムが伸びず苦戦。SS4を終えた時点でトップの奴田原に25.9秒差の3番手につける。
その後も奴田原は快調に後続との差を広げ、初日は9本のSS中8本のSSでベストタイムを奪い、2番手の柳澤との差を23.6秒差に広げ、初日を折り返す。
2日目に入っても奴田原の速さは衰えをみせず、最終的には2位の柳澤に対し33.6秒差まで広げ、独走態勢のまま今季初優勝を飾った。
インプレッサ勢による2位争い
圧倒的な速さで2位以降を大きく引き離し、「久々に自分らしいラリーを展開することができた」という奴田原。その一方で2位争いは、柳澤と勝田の2台のインプレッサによるバトルが終盤まで展開された。昨年は、わずか0.8秒差で雌雄を分けたこのふたりだが、今年は柳澤が勝田に対し9.2秒のリードを保ち、初日を折り返す。しかし、2日目に入って勝田が反撃。SS10で0.7秒、SS11で1.7秒と柳澤に7.1秒差まで詰め寄るが、続くSS12でステアリングのボールジョイントを破損してしまいリタイアという結果に。勝田に代わって福永修/奥村久嗣組(スバル・インプレッサ)が3位に浮上するが、柳澤とのタイム差はすでに40秒近くあり、そのまま柳澤が逃げ切り2位入賞を果たした。
上原利宏がグラベル2連勝
JN3クラスは、第2戦を制した上原利宏/佐瀬拓野組(ホンダ・シビック)が、第3戦でも速さをみせた。今回はクラス先頭スタートとなった上原は、「第2戦は上位ゼッケンとのタイム差を見ながらペース配分することができたけど、今回は先頭ゼッケンのためライバル選手のタイムが分からず、最初はなかなかペースを掴めなかった」と言うものの、初日のSS1からベストタイムを連発してトップを独走。第2戦に続き2戦連続優勝を飾った。2位にはマシントラブルに見舞われながらも「最後まで大事に走った」という香川秀樹/浦雅史組が、こちらも2戦連続2位入賞。3位には、横尾芳則/福村幸則組(トヨタ86)と粟津原豊/竹下紀子組(トヨタ86)が最終SSまで0.1秒を争うバトルを展開したが、粟津原が痛恨のフライングペナルティを計上してしまい、横尾が2戦連続3位に入賞した。
若手ドライバーがトップ争いを展開
JN2クラスは、第2戦優勝の天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRSG's)が初日から快調に好タイムを連発して後続とのリードを広げるが、SS6で駆動系トラブルのため痛恨のリタイアとなった。代わってトップに立ったのが、22歳の若手ドライバー加藤辰哉/松浦俊朗組(マツダ・デミオ)だ。ところが、「最初はサスペンションのセッティングがうまくいかずに苦戦したが、中盤戦以降はうまくセッティングを合わすことができた」という28歳の川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)が、SS8で加藤を逆転。20代ドライバーふたりによる優勝争いは、2日目もトップの座を守った川名が、全日本ラリー選手権3度目となる優勝を勝ち取った。また、加藤も2位を守り切り、本人にとっては初となる表彰台を獲得した。
松岡竜也が今季初優勝
松岡竜也/縄田幸裕組(ダイハツ・ストーリアX4)、鷲尾俊一/菊池正樹組(ダイハツ・ストーリアX4)、葛西一省/安田弘美組(ダイハツ・ストーリア)という駆動方式の異なるストーリア勢の戦いとなったJN1クラス。グラベルでの4WDの優位性を発揮し、16本のSS中15本のSSでベストタイムを奪った松岡が、2位の鷲尾に2分以上の差をつけて今季初優勝を飾った。「第2戦は地元ということもあって優勝したかったのですが、残念ながら隣の高知県の若手ドライバー(宇田圭佑)に優勝を奪われてしまいました。それもあって、第3戦はどうしても優勝したかった」という愛媛県出身の松岡。次戦はその宇田も出場する予定のため、「直接対決が楽しみです」と早くも気持ちを第4戦の洞爺に向けていた。
かつて、全日本ラリーと全日本ダートトライアルで幾度もチャンピオンを獲得した粟津原豊が、第3戦にトヨタ86で出場してきた。
昨年もターマックラリー3戦にトヨタ86で出場した粟津原は、「もともとターマックよりもグラベルの方が得意」というドライバーだ。その粟津原が、GAZOO Racing ラック86の横尾芳則と最終SSまで0.1秒を争う3位争いを展開。ゴールした時点では横尾に対し0.7秒差の3位だったが、フライングスタートのペナルティが加算され、4位となった。
「自分でも“あっ、ちょっと速かったかな”と思いました(笑)。あとでオフィシャルに確認したら、0.2秒前にスタートしてしまったようです。明らかに自分のミスなので、仕方ないですね」と語る粟津原だが、その存在をしっかりとアピールする結果となったのも確かだ。
粟津原にとってはトヨタ86では初となるグラベルラリー。「まずはベストなセッティングを探るのが今回の大きな目標でした。そのため、2セットのサスペンションを用意して、サービスで交換しながらいろいろなセッティングを試しながら走りました。現状では、7~8割程度まではセットアップできてきたと思います。良いデータを得ることができたのが一番の成果ですね」と、しっかりと手応えを感じたようだ。
その粟津原のコ・ドライバーを務めたのが、昨年の新城ラリーでモリゾウ選手ことトヨタ自動車の豊田章男社長のコ・ドライバーを務めた竹下紀子だ。「粟津原選手とは初めてコンビを組みましたが、SSを走る前の集中力の高め方がすごいと思いました。短いコースを全力で走るダートトライアルと同じ集中力を保ちながら、長い距離のSSも走り切るんです。しかも、どんなに気合いを入れて走っても、けっして危険な走りにはならない。0.1秒のタイムを詰めるためにはどんな走りをしたらいいのかということを、しっかりと知ってるドライバーだと思います。私にとっても良い経験を得ることができました」と竹下。
全日本ラリー2輪駆動部門でチャンピオンを獲得している横尾芳則、さらにFIAアフリカラリー選手権でチャンピオンを獲得している三好秀昌とともに、この3人のチャンピオンドライバーがトヨタ86でどんな戦いを見せてくれるのか、今後も注目だ。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 柳澤 宏至/中原 祥雅 | スバル・インプレッサ | |
3 | 福永 修/奥村 久継 | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 上原 利宏/佐瀬 拓野 | ホンダ・シビック |
2 | 香川 秀樹/浦 雅史 | ホンダ・インテグラ | |
3 | 横尾 芳則/福村 幸則 | トヨタ86 | |
JN2 | 1 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツRS |
2 | 加藤 辰弥/松浦 俊朗 | マツダ・デミオ | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリア X4 |
2 | 鷲尾 俊一/菊地 正樹 | ダイハツ・ストーリア X4 | |
3 | 葛西 一省/安田 弘美 | ダイハツ・ストーリア |