第3戦 がんばろう!福島MSCCラリー2013
高速ステージを制した勝田範彦選手が逆転優勝 JN3はGAZOOラック86が全日本ラリー初優勝!
全日本ラリー選手権第4戦が、7月5日(金)~7日(日)に北海道洞爺湖周辺で開催された。今年は全9戦でシリーズが争われるが、今回はその前半戦を締めくくるとともに、第2戦から続くグラベル(未舗装路)ラリー3連戦のラストイベント。全日本選手権と併催された地方選手権を合わせて73台が出場した。
舞台となる洞爺湖周辺は、北海道でも有数の観光地。今年は新たにスキーリゾートとして名高いニセコ方面にもステージを設定し、2日間合わせて総距離80.42kmのスペシャルステージを設定。初日には昨年のこのラリーで初めて使用した4本の林道ステージを2周する8本、2日目は今年初めて使用する3本のSSを2周する6本の合計14本SSが用意された。
初日は比較的距離の短いコンパクトなSSが多く、さらにターマック(舗装路)とグラベルがミックスしたステージや、ウォータースプラッシュのような川渡りが組み込まれている多彩なステージ設定だ。一方、2日目はSSの距離が長い上に、スピード域が高い高速ステージが多い。全体的に固く引き締まった路面が多かったが、スピード域が高い分だけリタイア率も高く、第3戦に続き有力選手が次々と姿を消し、特に51台が出走した全日本選手権は、18台がリタイアするという厳しいラリーとなった。
SS1でベストタイムを獲得した桑田幸典/澤田耕一組(三菱ランサーエボリューション)が、SS6の川渡りでエンジンに水を吸い込むとともにラジエターファンを破損してリタイア。さらに同じSSでシリーズランキングトップの柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサ)が電気系トラブルでエンジンが止まりリタイア、ベテランの大嶋治夫/井手上達也組(三菱ランサーエボリューション)も転倒のためリタイアと上位陣が次々と姿を消す中、第3戦優勝の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューション)が4本のSSでベストタイムを奪い、初日をトップで折り返す。
だが、2日目に入ると、「うまくペースを掴めない」と11.4秒差の2番手で初日を折り返した勝田範彦/足立さやか組が逆襲。2日目のオープニングとなるSS9から3連続ベストタイムをマークし、ついにSS11で奴田原を捉えトップに躍り出た。一方の奴田原は、初日の後半からセンターデフが不調になりペースが上がらない。その後も勝田が奴田原との差を広げ、開幕戦に次ぐ今季2勝目を挙げた。トラブルを抱えた奴田原は2位に入賞。初日の後半でフロントサスペンションを破損した石田正史/宮城孝仁組(三菱ランサーエボリューション)が、2日目もポジションを守り切り3位に入賞した。
「気持ちの持ち方でタイムが変わる」
初日に、一時はトップとの差が13.3秒だった勝田が、2日目は序盤から一気にタイムを伸ばし、見事な逆手優勝を飾った。「初日はドライバーの気持ちが集中し切れていなかったんです。これでは勝てないと思い、2日目は集中力を持続させて走りました。マシンのセッティングは初日のままだったんですが、気持ちの持ち方でこれだけタイムが変わるということを、あらためて実感することができました。今回の結果を次戦につなげたいですね」と勝田。これでシリーズポイントはトップの奴田原と8ポイント差の2番手に浮上。シリーズトップに立った奴田原、3番手にポジションを下げた柳澤とともに、後半戦も三つ巴の熾烈な戦いが展開されそうだ。
GAZOO Racing ラック86が初制覇
JN3クラスは、昨年のラリー北海道をトヨタ86で制した三好秀昌/保井隆宏組が序盤から快調に好タイムを重ねトップに立つ。さらにトヨタ86の横尾芳則/船木一祥組が2番手につけ、トヨタ86のワンツー体制を築き上げる。だが、SS4で三好がコースオフしてしまいリタイアとなってしまう。これでトップに浮上した横尾は、2日目に入ると高速ステージに強い香川秀樹/浦雅史組(ホンダ・インテグラ)、初日はマシントラブルで出遅れた小倉雅俊/木村裕介組(ダイハツ・ブーンX4)が激しく追い上げるが、初日に築き上げたリードを最後までしっかりと守り切り、GAZOO Racing ラック86としては全日本ラリー初優勝、トヨタ86としては全日本ラリー2勝目を獲得した。
川名賢が2位に大差をつけグラベル2連勝
JN2クラスは、SS1から川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)がベストタイムを連発し、JN3クラスのトップよりもさらに速いタイムで初日を折り返す。2日目に入っても川名の速さは衰えず、トップを快走。終盤はペースを落とす余裕もみせ、2位に50.9秒の大差をつけて、第3戦に続き2連勝を飾った。終盤まで熾烈な戦いとなったのが2位争いだ。初日を終えた時点で3年連続チャンピオン・天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS G's)が2番手、その天野に0.4秒差で全日本最年少ドライバーの加藤辰弥/新井祐一組(マツダ・デミオ)、さらに1.8秒差でベテランの岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)と、若手とベテラン勢が一歩も譲らない展開となった。しかし2日目のSS9で加藤がコースオフしてしまいリタイア。岡田との差を10.2秒差まで広げた天野が2位に入賞した。
松岡竜也が第3戦に続き2連勝
5台が出場したJN1クラスは、第2戦優勝の宇田圭佑/石川恭啓組(マツダ・デミオ)と、第3戦優勝の松岡竜也/縄田幸裕組(ダイハツ・ストーリアX4)のマッチレースとなることが予想された。だが、松岡が初日の序盤から宇田に大差をつけるベストタイムを重ね、SS4を終えて44.4秒もの大量リードを築き上げる。だが、SS5で松岡が3速ギヤを失ってしまい、宇田が猛反撃を開始。初日を終えた時点で、44.4秒の差が23.9秒にまで縮まっていた。2日目、手負い状態となった松岡に対し宇田は猛アタックを開始し逆転を狙うが、SS9のジャンクションをオーバースピードで入ってしまい痛恨のコースアウト。「(宇田に)抜かれることは覚悟していた」という松岡が、2位に浮上した葛西一省/安田弘美組(ダイハツ・ストーリア)との差を守り切り、第3戦に続き今季2勝目を挙げた。
ついにGAZOO Racing ラック86が全日本ラリーを制した。全日本ラリー二輪駆動部門で2度のチャンピオンを獲得しているドライバーの横尾芳則は、本来はターマックの速さに定評のあるドライバーだった。その横尾が優勝1回、3位2回という好成績で、第2戦からのグラベル3連戦を戦った。
「実は北海道のグラベルとは相性が良く、二輪駆動部門時代も北海道ではけっこう結果を残せているんです」と横尾。特にフラットダートの高速コーナーに強く、「コーナーに進入する時のスピードを高く保てるので、その勢いでクルマの挙動を変化させやすいんです。高速コーナーでは、アクセルを踏み負けているというつもりはありません。北海道は、それくらいダイナミックな走りを可能にしてくれる路面だと思います」という。
その横尾が、グラベルで課題としているのが低速コーナーだという。「低速コーナーは、自分のドライビングが荒くなってしまい、路面の状態を無視した走り方になってしまうことが多かったですね。要するに運転が雑なんです。第2戦の久万高原や第3戦の福島はけっこうそういった低速コーナーが多く、反省点のひとつでした。でも今回は、低速コーナーでも冷静に判断できたということが、優勝につながったと思います」と、勝因を分析している。
横尾の速さの秘密がこの分析力で、全日本ラリーには毎回ドライビングの課題を持ちながら挑んでいる。「例えば、こういう乗り方で走ったらタイムが出るんじゃないかとか、毎回色々な可能性を探っています。今回、優勝することができましたが、クルマもドライビングもまだまだ速くなる伸び代がある。そういった意味でも、トヨタ86がJN3クラスの主力マシンとなるのは、そう遠いことではないと思います」と横尾。次戦からは横尾が得意とするターマックラリーが続く。ターマックラリーでのさらなる活躍に期待したい。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ |
2 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX | |
3 | 石田 正史/宮城 孝仁 | 三菱ランサーエボリューションX | |
JN3 | 1 | 横尾 芳則/福村 幸則 | トヨタ86 |
2 | 香川 秀樹/浦 雅史 | ホンダ・インテグラ | |
3 | 小倉 雅俊/木村 裕介 | ダイハツ・ブーンX4 | |
JN2 | 1 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツRS |
2 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツRS G's | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリア X4 |
2 | 葛西 一省/安田 弘美 | ダイハツ・ストーリア | |
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