第9戦 新城ラリー2013
勝田範彦選手が4年連続チャンピオンに!ラリーは奴田原選手が逆転勝利
2013年の全日本ラリー選手権も最終戦を迎えた。舞台となるのは愛知県新城市。オールターマック(舗装路)での戦いだ。
新城ラリーは、アウトドアスポーツにより地域を活性化させる試み「DOS地域再生プラン」のひとつとしてスタート。10年目を迎える今年は愛知県の後援を受け、会場を県営の新城総合公園へ移した。公園内にSS(スペシャルステージ)を設置し、運動場内のラリースタジアム(未舗装路)では、昨年に続き元WRCチャンピオンのビョルン・ワルデガルド氏がデモランを披露するなど、国内最大規模のラリーイベントとなった。
今回設定されたSSは4カ所。そのうち初日はツイスティで滑りやすい路面をもつ9.18kmの「ほうらいせん - 一念不動」、2車線のハイスピードな6.96kmの「作手北」、公園内の道路を使用した0.95kmの「県営総合公園」の3カ所を2回ずつ走行する6本で争われた。2日目は毎年コースアウトが続出する名物ステージの14.27kmの「雁峰西」、初日にも使用した「作手北」、「県営総合公園」の3カ所を2回ずつの6本を走行する。
ラリーの直前には台風27号、28号の影響が心配されたが、開催自体に影響はなかった。しかしこの土曜日の雨がもたらしたウェットコンディションが、チャンピオン争いの命運を大きく左右し、劇的な最終戦を演出することになった。
ポイントリーダーから脱落し、前戦終了時点でランキング2位につけていた奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)は、この最終戦においてデイ1、デイ2ともに首位を獲得し、なおかつ優勝しなければタイトルを獲れない状況だった。一方、ポイントリーダーの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)は地元愛知県でチャンピオンを決めたいと意欲を燃やす。
緊迫した雰囲気のなかで始まったデイ1は、最初のSS1では勝田、奴田原ともにタイムが伸びず、4番手、7番手という予想外の出だしとなった。両者とも徐々にタイムを縮めていくが、午後1本目のSS4で勝田がなんとクラッシュ。コースを塞いだため、このSSは後続の選手に全車同一タイムが与えられるという措置がとられた。
結局、奴田原はデイ1で首位に立つことができず、この時点で勝田がデイ1リタイアながら、4年連続となる2013年JN4クラスチャンピオンを決めた。
高山は初優勝ならず。奴田原、今季4勝目
台風の影響でウェットコンディションとなったJN4クラスのデイ1は、勝田のリタイアにより高山仁/河野洋志組(スバル・インプレッサ)が首位、2番手に柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサ)、3番手に奴田原/佐藤組というオーダーに。高山にとって、デイ2の先頭スタートは初めての経験だ。しかし、SS7で右フロントをヒットしてタイムロス。一方、奴田原はデイ2すべてのステージで高山を上まわるタイムをマーク。高山も、「どのSSでも奴田原さんより1秒程度遅いのは分かっていたのですが、そこに自分のミスによるタイムロスが重なってしまいました。とても悔しいです」と来シーズンでのリベンジを誓う。この結果、デイ2で逆転を果たした奴田原が北海道から続いた不運を断ち切り、今季4勝目で2013年シーズンを締めくくった。
旧世代のレビンを駆る山口が2勝目
すでに横尾芳則(トヨタ86)の年間チャンピオンが決まっているJN3クラスは、その横尾と山口清司/島津雅彦組(トヨタ・レビン)による熾烈なバトルが2日間にわたって展開された。デイ1は横尾が首位で終えるが、山口との差はわずか2.9秒。しかしデイ2のSS10で横尾がハーフスピンを喫してタイムロス。対する山口はパワーで劣るレビンで、テクニカルなSS7/SS10「雁峰西」とハイスピードなSS8/SS11の「作手北」でタイヤを使い分ける作戦が功を奏し、6.2秒のマージンを守り切って、地元愛知県で今季2勝目を飾った。
2012年王者の天野が新王者の川名を下す
JN2クラスは新旧王者による最後の対決。新王者の川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)がデイ1を制するも、2012年王者の天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS G's)とは6.7秒差。勝負は新城ラリーの名物ステージである「雁峰西」で決した。1本目のSS7では、天野がスピンを喫して15秒をロスしながらも、川名に8.2秒差をつける圧倒的なベストタイムをマーク。これでトータル20秒以上の差をつけた天野は首位に立ち、リピートとなるSS10でもさらに川名を引き離す。最終的に、JN3クラスのトップ3に割って入る総合7位というリザルトで、天野が川名にベテランの実力を見せつけ、優勝を果たした。
日産リーフ&国沢が全日本初優勝
最終戦までタイトル争いが続くJN1クラスは、ポイントリーダーの松岡竜也/縄田幸裕組(ダイハツ・ストーリアX4)がシリーズ2位の鷲尾俊一/佐竹尚子組(ダイハツ・ストーリアX4)に11秒差をつけて初日をリード。しかし、2日目1本目のSS7で松岡はウェット路面でコントロールを失いマシンをヒット。このタイムロスで、鷲尾との差は2.2秒までに縮まる。逆転を期し最後の勝負に出た鷲尾だったが、続くSS8の右コーナーでフロントからガードレールに衝突。サービスへの帰還は果たしたものの、ラジエターが破損し走行できずリタイア。松岡のJN1クラス初タイトル獲得が決まった。タイトルを決めた松岡だが、2本目の「雁峰西」でもスピンを喫し、首位から脱落。日産リーフでラリーで参戦する国沢光宏/木原雅彦組の逆転で首位に浮上。電気自動車のラリーカーとして初となる全日本ラリー優勝を挙げた。
ここ新城ラリーでは、2台のトヨタ86が大いに注目を集めた。
まずは、SUPER GTや全日本ジムカーナ選手権で活躍する山野哲也がドライブするトヨタ86だ。「小学生の頃からラリードライバーに憧れていました。このような大きなイベントに参加できて本当に光栄です。すべてのステージをリタイアせず走り切りたい」と語っていた。山野はラリー初挑戦ながらハイスピードコースの「作手北」のSS4/8/11の3カ所でベストタイムをたたき出し周囲を驚かせた。
ジムカーナやレースと異なり、コンディションの異なるステージをすべて攻略しなくてはならないラリーの難しさに触れた山野は、「ラリーは本当に奥深いですね。1本のステージのなかに、コケで滑るところもあれば、ウェットが残っていたり土が出ていて危ないところなど、色々な局面に対応しなくてはならない。ドライバー自身の資質が試されると思います」と語った。山野はJN3クラス5位に入賞を果たした。
もう1台は、この最終戦でJN4クラス4連覇を決めた勝田範彦の子息で、全日本F3選手権シリーズ2位の勝田貴元が駆るGAZOO Racing ラック86。2012年の新城ラリー以来2回目のラリー参戦だ。「レーシングドライバーは本能的に滑ることを避けようとするので、滑らせて走るラリーは勝手が違って難しいです」と語っていた貴元だが、初日のハイスピードコースとして知られる「作手北」の2回目のSSで、JN3クラスベストのタイムをマークする。
「昨年はリタイアしているので、とにかく最後まで走り切ってできる限り経験を重ねること」と目標を語っていた貴元だが、新城ラリー最大の難所といわれる2日目の「雁峰北」の2回目のSSでクラッシュを喫してしまう。「路面が濡れていてコーションマーク(危険な場所を示すマーク)がついていたのに、ぶつかってしまいました。ずっと抑えて走っていたのですが、抑えが足りませんでした。でも、ラリー参戦は2度目だったので落ち着いてやれました。結果はリタイアでとても残念ですが、SSベストも獲れましたし、見せる走りができたのでよかったです」と2度目のチャレンジを振り返った。
複雑な状況に対応して好タイムをマークしたふたりのレーシングドライバーの卓越したドライビングテクニックに、観客からも惜しみない拍手がおくられた。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 高山 仁/河野 洋志 | スバル・インプレッサ | |
3 | 柳澤 宏至/中原 祥雅 | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 山口 清司/島津 雅彦 | トヨタ・カローラレビン |
2 | 横尾 芳則/永山 聡一郎 | トヨタ86 | |
3 | 香川 秀樹/浦 雅史 | ホンダ・インテグラタイプR | |
JN2 | 1 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツRS G's |
2 | 川名 賢/小阪 典嵩 | トヨタ・ヴィッツRS | |
3 | 高橋 悟志/箕作 裕子 | トヨタ・ヴィッツRS | |
JN1 | 1 | 国沢 光宏/木原 雅彦 | 日産リーフ |
2 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリアX4 | |
3 | 中西 昌人/北川 紗衣 | スズキ・スイフト |