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新型8気筒エンジン搭載の“TF106”をF1バルセロナ合同テストに投入2005.11.28

新型8気筒エンジン搭載の“TF106”をF1バルセロナ合同テストに投入

パナソニック・トヨタ・レーシングは、2006年シーズンへ向けて開発された新型“TF106”を、他チームに先駆け、いち早くシェイクダウンする。11月29日(火)からスペイン・バルセロナ近郊のカタルニア・サーキットで4日間に渡って行われるF1合同テストでシェイクダウンを行うもので、来シーズンへ向けた準備を開始する予定。

新型“TF106”のデザイン概要
毎年、いち早く新型車発表を行うトヨタだが、今年はその期待をより早めることになる。来年3月12日に2006年シーズン開幕戦として行われる第1戦バーレーンGPの3ヶ月以上前に、新型“TF106”がその姿を現す。シャシー部門テクニカルディレクターのマイク・ガスコインは、この冬のオフシーズンでライバルよりも早いスタートを切ることは、チームが、時間的な優位性を持つことを確信している。

「我々は2004年の終わりから“TF106”の開発を始めていた」とマイク・ガスコインは明らかにした。「そして、このように早い時期に新型車を投入出来ることは、チームの本当の能力を示すものであり、F1の最前線において十分に対応し、さらに進んでいくことが出来るということを示している」

“TF106”は、トヨタの最新V型8気筒エンジンに合わせた、全く新しい後部デザインとモノコック、そして2005年シーズン終盤の2レースを戦い、表彰台を獲得した“TF105B”で使用されたフロントサスペンション形式が組み合わされたものである。

「“TF106”のバルセロナ合同テストでの初走行は、開発の第一段階であり、シーズンの開幕戦へ向けて、さらなる改良が予定されている。新型車によるテストを早くから行うことにより、開幕戦までの間、新たな空力パーツを開発しながら、徹底的にメカニカルな面での開発も出来ることを意味している。同様の戦略によって、2005年シーズンも我々は、極めて競争力の高いスタートを切ることが出来た。そして、来る2006年シーズンも同じように成果をあげると確信している」

「車体前部は日本GPと中国GPを戦った“TF105B”の進化版だが、2006年へ向けてデザインが改良された主な部分は、V型8気筒エンジン搭載という新しい技術規則による、後部のデザイン変更だ」とマイク・ガスコインは付け加えた。

V型8気筒エンジンへの変更
パナソニック・トヨタ・レーシングは、2レースを1基のエンジンで戦わなくてはならないという、新たな規則によって、より信頼性が重要となった2005年シーズンにおいて、全19戦で、エンジンに起因するリタイアはただ1回という素晴らしい記録を残した。「トヨタのV型10気筒エンジンは、その比較的短い歴史の中で、このような記録と強力なパフォーマンスを示してきたが、また、新しいV型8気筒ユニットの開発においても、非常に貴重なベースとなった」と、エンジン部門テクニカルディレクターのルカ・マルモリーニは語る。

「これだけ厳しい信頼性に関する規則の下では、全く新しいものへ挑戦する余裕はない」とマルモリーニは続けた。「しかし、エンジンの性能について妥協することは出来ない。このため、性能低下を最小限にする事に全力を注いだ。我々には、トヨタで6年間に渡ってF1エンジンを開発し続けてきた強力なエンジニアチームがある。この情熱とチームワークこそが我々のアドバンテージであり、最大の資産だ」

マイク・ガスコインは、ルカ・マルモリーニによるエンジン面での開発に対し、迅速なバックアップを行っている。「ルカ・マルモリーニと彼のエンジン開発チームは卓越した仕事をしており、一つ屋根の下で、同じファクトリーのシャシー開発部門に良い影響を与えてくれる。冬季テストのために2台の “TF106”を用意出来たことは、機械的な面でのパッケージ開発において、著しい進化を遂げられるであろうことを意味する」

新しい“RVX-06”V型8気筒エンジンは、チームが初めての表彰台を獲得した第2戦マレーシアGPの翌日、2005年3月21日にベンチでのテストが開始された。6月末に初めてサーキット走行を行い、以来何度かに渡って、通算8日間、291周、2143kmの距離を走破してきた。

「V型8気筒エンジンの開発にあたって、初期トラブルは数多くあったが、それらは我々の努力によって、早期に解決された」とルカ・マルモリーニは付け加えた。「我々はサーキット及びファクトリーの双方で多くのデータを集めてきた。11月3日には、2レースの週末を通して必要とされる距離を初めてベンチテストで完遂したことで、レース仕様の“RVX-06”エンジンとして仕上がり、冬季テストのプログラムをスタートすることが出来ることとなった。現在の我々の仕事は、“RVX-06”エンジンの限界をさらに見極め、シーズン開幕前に出来る限りその限界を高めることにある」

新たなブリヂストンタイヤの採用
今週、バルセロナで行われる4日間のテストはまた、先日2006年シーズン以降の契約が発表になったばかりの、ブリヂストンタイヤを使用する初めてのテストでもある。

トヨタ・モータースポーツGmbH(以下TMG)社長ジョン・ハウエットは、「ブリヂストンとの契約はつい最近締結されたばかりであり、出来る限り迅速に技術的な関係を増強し、2006年シーズンへ向けた準備のために、シャシーとブリヂストン・ポテンザ・タイヤの開発を行うべく、パートナーシップを取って作業を行っていくことが重要だ。V型8気筒エンジンとともに新しいメカニカル・パッケージとサスペンション、そしてブリヂストンタイヤという組み合わせで、いち早くテストを行えるという事実は、確実に、貴重な時間的優勢を得られるだろう。我々の相対的な競争力の幾ばくかを明らかにしてしまうのは早過ぎるかも知れないが、“TF106”の開発において、我々は最大限の改良を続け、常に上位に居続けるための努力は惜しまない」と語る。

より多くの“トヨタ・ウェイ”を実践
T新型“TF106”は、前身となる“TF105B”からの正常進化モデルであり、グローバルなトヨタのDNAに不可欠な「カイゼン(絶え間ない改良)」の具現化である。

「数年かけて、トヨタは作業の効率化を発展させてきた」とTMG会長である冨田務は説明する。「いわゆる“トヨタ・ウェイ”と“トヨタ生産方式(TPS)”による製造方法論は、トヨタという企業DNAの2つの重要な基盤である。そして、ケルンの我々のF1チームもまた、そのDNAに 沿って進んでいる。F1世界選手権に挑戦する上で、この独自のアプローチについては、全てが理想通りに進行している。まだ我々は“TF106”の開発をスタートしたばかりであるが、2006年シーズンが開幕するバーレーンGPまで、まだまるまる3ヶ月以上残して、新型車を用意することが出来た。我々のF1における成功への意志を実証できることを期待している」


4人のドライバーラインナップは継続
「今週の新型“TF106”デビューにおいて、2006年のレースドライバーとなるラルフ・シューマッハーとヤルノ・トゥルーリがそのステアリングを握ることになる。2人は2005年シーズンのドライバーズ選手権をそれぞれ6位と7位で終え、また、パナソニック・トヨタ・レーシングがコンストラクターズ選手権で4位を獲得する上で大きな貢献を残した。この2人に加え、リカルド・ゾンタが、チームのサードドライバー及びリザーブドライバーとして、2006年も、1年間の契約を更新した。そして、パナソニック・トヨタ・レーシングのドライバーとして4年目を迎えるオリビエ・パニスは、2006年も重要なテストドライバーの役を務める。

「来るシーズンへ向けて、再びパナソニック・トヨタ・レーシングと契約を継続することが出来、非常に嬉しい」とリカルド・ゾンタは語った。「2005年は成功したシーズンを楽しく過ごし、今年もその勢いを維持出来ると確信している。トヨタ・ファミリーの一員であることを実感しており、F1ほどは楽しめないであろう他のカテゴリでレースドライバーの座に就くよりも、サードドライバーとして頑張り続けたいと思っている。私はトヨタの成功にとても貢献出来たと感じており、F1のトップへ向かうための“TF106”の本格的なテストを楽しみにしている」

パナソニック・トヨタ・レーシングは、恒例の冬季オフシーズンテストで、3回のテストセッションを予定している。バルセロナでの4日間のテストの後、チームは南へ移動し、12月7日からヘレス・サーキットでテストを行う。

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