第4戦 サンマリノGP 2002

2002年4月12日(金)

チーフ・デザイナー グスタフ・ブルナーに聞く

これまでの3戦でのTF102のスピードはブルナーさんにとって驚きですか?

そうですね。思っていたよりも速く、実際のところ、私たち自身も驚いています。ただ、これは、すべて自分たちの力だけで成し得ていることではないと思っています。今までの3戦は、ヨーロッパから離れた'アウェイ'のレースであったため、他チームが自分たちのクルマを、ヨーロッパラウンドでのようなテンポでは開発できなかったことによることが大きいと思います。

TF102を開発するにあたって、どんな信念を持ちましたか?

F1の世界では、保守的ということはありませんが、コンサバティブ(保守的)なクルマをつくることでした。当初の目標は、21・22番目のグリッドにつけること、すなわち、予選通過ということでした。トヨタのF1カーのうちで、もっとも保守的な部分はエアロダイナミクスでした。このクルマをデザインしていた時には、しょっちゅう、イギリスにあるローラの風洞実験施設に行ったり来たりしていたものです。ケルンに建設したトヨタの風洞設備が稼動しはじめたのが、やっとマレーシアGPの頃であったためです。

昨年度のテストカーから、今年のTF102に受け継がれた点はあるのでしょうか?

いいえ、ありません。すべて新しくしました。TF102にあるすべてのものは全く新しいものです。

TF102には、いろいろ新しい開発が盛り込まれたのでしょうか?

今年1月にこのクルマをシェークダウンした時は、エアロダイナミクスの部分があまり良くありませんでした。その後、風洞実験を繰り返して、オーストラリアGPの前までには、いくつかの改良点を見出すことができました。今週末のサンマリノGPでは、フロントウィングとリアウィングに新しい工夫を加えるといった、エアロダイナミクスの点で一歩進んだ改良をする予定です。

シーズンがはじまってから、チームの中に期待感は高まってきましたか?

チームは今はとてもリラックスしています。大きなプレッシャーもありません。トヨタにははっきりした長期的な目標があり、それに向かって進んでいるという状況です。もちろん、掲げた目標を早く達成することに越したことはないと思っています。

トヨタのF1プロジェクト準備状況全般は、例えばフェラーリと比べるとどうでしょうか?

ケルンでのトヨタF1プロジェクトには、約550人の人々が携わっています。エンジンとシャシーを同時に開発していますが、組織的な構成、また、プロジェクトの準備状況に関して言えば、まだまだトップチームと比べて、その差は大きいものです。

他のチームと比べて、トヨタのエンジンはどうですか?

今シーズン、トヨタのエンジンは大変信頼性があることを証明しています。これはとても良いことだと思います。他チームとの比較については、はっきりとは分かりません。比較することは、とても難しいですが、現段階では、トヨタのエンジンはとても状態が良いようです。

ブルナーさんの仕事の中に、全体の開発チームをつくりあげるということもありますか?

私の仕事の責任範囲という意味でいえば、それはありません。しかし、チームのマネージメントにはアドバイスしています。チームをつくりあげるということは、良いクルマをつくりあげること以上に難しいということもあります。チームが大きくなればそれだけ、良いチームであることも難しくなってきます。

今シーズン、今後のレースの目標は?

F1では、皆同じ時期に開発を行っていますので、常に動き続ける目標を追っています。これからの3ヶ月の間は、前進することは、それほど難しいことではないでしょう。私たちは最後尾のほうからのスタートになるわけですから。しかしながら、難しいのは、シーズンが終わりに近づいてきた時です。その頃には、トヨタも高いレベルまで開発が進んでいることと思いますので、そこから先の改良というのは、簡単なことではありません。年間のレースを通じて、予選で10位以内に入ることができれば、上出来だと思っています。

今年に入ってから、チームはどれくらい良くなってきましたか?

決勝当日は、まだまだ難しいです。戦略、ピットワークなど課題が多いですね。しかし、金曜日、土曜日には、とても良い仕事が出来ています。

ミカ・サロ、アラン・マクニッシュについて、どう思っていますか?

二人とも、とても素晴らしいチームメンバーです。非常にハードな仕事をしてもらっています。チームとして、二人の頑張りにはとても感謝しています。あえていいますと、ミカは私が思っていたよりもずっと忍耐強い人間でしたね。

ルーキーのアラン・マクニッシュは、どれくらいF1に適応してきていますか?

アランはモータースポーツの世界に長くいますので、自分が何をすべきなのかきちんと分かっています。F1にも適応していると思います。

シャシーに関するレギュレーションが今後2年間、変更なしとのことですが。

これはとても助かります。来年、レギュレーションが全く刷新されてしまったとしたら、チームをつくりあげている途上の私たちにとって、大変な痛手となりますから。

今のF1カーは速すぎますか?それとも、もっと速くするべきだと思いますか?

クルマの速度を遅くしたいとは思っていません。しかし、安全性の問題については、考えていかなければならないことです。今のF1カーはグリップのレベルからすると力がありすぎますが、安全性に問題がない限り、レースが面白くなります。クルマ自体の安全性は現状とても向上していますが、サーキット側の安全性向上も必要だと思います。