第6戦 オーストリアGP 2002
2002年5月13日(月)
アラン・マクニッシュ - オーストリアGPを振り返って
オーストリアGPの8位と9位という成績は今のパナソニック・トヨタ・レーシングの本当の可能性を反映したものではないんだ。モータースポーツに何が起こるかは誰にも予測がつかないものだけれど、2回のセーフティーカー導入はチームにとって不利にはたらいてしまった。それがなければ、僕は本当に2台ともポイントを獲れたかもしれないと思っている。
実のところ、土曜日の最初から、チームは僕のF1カーを頑強なレース用セットアップにすることに集中していた。TF102はA1リンク(オーストリアGP開催サーキット)ではよく走れたからね。エンジンも丈夫だし、ブレーキングの調子も上々だった。オーストリアではこの2つの点がとても大切で、きっとレースでオーバーテイクできるから、予選結果はそれほど重要ではないと確信していたんだ。それをふまえて、僕はミシュランが用意した2種類のタイヤのうち、"ハード"を選び、これでレース終盤までタイヤがタレずに行けると期待していたんだよ。
最初のセーフティーカーが導入されたのは、ちょうど僕がアクションをおこしかけていたところだった。僕は再スタートの時には、レースは5位フィニッシュしたG.フィジケラを抜いていたのだけれど、その再スタートからたった1周で2回目のセーフティーカーが入った時は、まだピットに入るには早過ぎるタイミングだった。2ストップ作戦が他のいくつかのチームで採用されることは、あらかじめ分かっていたのだけれど、セーフティーカーが入ったことで、彼らの方が有利になってしまった。2ストップをするチームは、セーフティーカーが入っている間にピットに入れたけれど、僕たちは計画していた利点を充分生かすことが出来なくなってしまったんだ。
僕はA1リンクでレースをすることが好きで、ここではいつも調子が良かったよ。僕のスポーツカー時代の昔のチームメイトの一人が訪ねてきてくれて、応援の言葉をもらって握手をしたんだ。レースでは、最初の数ラップはとてもあわただしく、トラブルに巻き込まれないよう全神経を集中したよ。
今回のオーストリアGPの予選、決勝レースについて、ペースについてはとても満足しているんだ。ミシュランのハードタイヤを選んだのはモントーヤと僕だけだったけれど、レース全体を通して、クルマ自体の性能ととても良くマッチしていたよ。チームはどんどん強くなっていっていると思うし、レースが終わったばかりだけれど、さっそく今週末からテストに入れるように準備がされているんだ。
あるサーキットで、実際にそこでレースをしたという経験はとても役立つね。一人でサーキットを走るのと、他のドライバーもいるレースの状況で走り、何が出来て何が出来ないのか、ちょっとしたことを知っているかどうかというのは、大きな違いだからね。スペインGPの行われたバルセロナは、僕が前にレースをしたことがあるサーキットで、ここオーストリアのA1リンクは2つ目のサーキットだったんだ。その経験にずいぶん助けられたよ。
もうひとつオーストリアで嬉しかったのは、母のシェイラが初めてF1グランプリを観戦しに来てくれたことだよ。レース当日は母の日で、他の11人のドライバーのお母さんたちと一緒に招待を受けて、サーキットに来てくれたんだ。母は僕のキャリアにとても影響を与えてくれた人で、カート(KART)時代には父と一緒にイギリスじゅうを付き添って回ってくれたんだ。母はジュニアフォーミュラ時代の僕のレースをほとんどすべて観ていたけれど、F1は今回が初めてだったんだよ。
そんな母だけれど、本当はレースをとても緊張して見てしまう人なんだ。レースが思ったよりうまくいかなかったりすると、僕が機嫌悪く戻ってきたりするからね。でも、今回はとても喜んでくれて、レースも楽しんだようだったよ。
琢磨のご両親もサーキットに来ていたけれど、あのアクシデントの後はとても心配な時を過ごされたと思う。大きな怪我をしなかったと聞いて、本当に安心したよ。タク(琢磨)はとても好きなドライバーだよ。偶然、オーストラリアで彼の隣に立つことがあったのだけれど、今季のF1ドライバーの中で僕より背の低いドライバーは琢磨だけかな。
次のレースはモナコだけれど、新しい僕のアパートから離れていないのが嬉しいね。
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