第10戦 イギリスGP 2002
ルカ・マルモリーニ(パナソニック・トヨタ・レーシング エンジン担当 プロジェクト・リーダー)に聞く
今シーズンこれまでのTF102の成績をどう見ていますか?
私たちは地に足をつけた仕事をする必要があります。今シーズンいくつかのレースで、基本的にはいいパッケージを持ち込めていることを証明しています。 最近の数レースでは、決勝レース中に問題が出てしまいました。これからは、信頼性と完走することにフォーカスを当てられると思っています。もしこれが達成できたら、私は満足です。シーズン前にはあまり多くを望んではいなかったのですが、もちろん私たちはレース魂を持っていますし、常に上に上に行きたいと思っています。
他チームのエンジンと比べ、トヨタのF1エンジンの評価はどうですか?
私たちのエンジンはまずまずの出来で、ここまでいい仕事ができたと言ってもいいと思っています。あまり先の予想を立てたくはありませんが、私たちのRVX-02はこれまでとても高い信頼性を示しています。他チームのエンジンとの相対的なポジションというのは分かりません。
ノルベルト・クライヤー(パナソニック・トヨタ・レーシング エンジン部門担当 ゼネラル・マネージャー)との関係はどうですか?
ノルベルトはエンジン部門担当のゼネラル・マネージャーとして、組織としての役割すべてに責任があります。私は、技術分野での活動を担当しています。つまり、エンジンのデザイン、開発、計測、レースでのサポートといったことです。
パナソニック・トヨタ・レーシングにはチャンピオンシップをとるために必要なものはすべて揃っていますか?
まだ、すべて揃っているというわけではありませんが、私はチームには秘められた可能性があることを確信しています。チームのファシリティは最新式のもので、必要な人材も集まっています。F1プロジェクト発足当初に採用した多くの若手エンジニアたちとも、今や現場でともに働いています。しかし、さらに学んで行かなければいけないことの一つに、プレッシャーのもとでの働きかたがありますね。時にはリラックスすることも必要でしょう。職場ではうまく仕事することはできていますが、現場のプレッシャーの中では、なかなかそれも難しいことかも知れません。
どれくらいのエンジン開発スタッフが、トヨタのラリー・ルマンプロジェクトの時代から引き続きチームに残っているのでしょうか?
ラリー、ルマンのプログラム時代からのスタッフは多くいますが、彼らは皆モータースポーツの血を持っています。したがって、彼らが現時点でF1での経験があまりないことは、あまり関係はありません。もしレースができる人なら、F1レースもチャレンジできるというのが私の信念です。もちろん、カテゴリーが違えばエンジンも違ってきますが、アプローチは似ています。もちろん、チームにはF1エンジンの経験豊富な人間もいて、いいミックスになっていると思います。
あなたのフェラーリでの10年の経験は、パナソニック・トヨタ・レーシングでどう活かされていますか?
トヨタもフェラーリもひとつの屋根の下ですべてをやっているので、両チームのアプローチには多くの類似性があります。しかし、トヨタのエンジンは、フェラーリで使われているエンジンと比較はできません。私たちは、2年前にF1エンジンのプログラムをスタートさせたので、わたしがフェラーリ時代に知っていた技術は、いまや関連性はありません。私がフェラーリで学んだことを、新しくかつ違う方向に、持ってきているのです。
シーズン中に、今のエンジンはどれくらいバージョンアップされるのですか?
少なくとも、もう何ステップかはバージョンアップの予定です。イモラでドライバビリティも改善された第1ステップの改良があり、これはうまく行きました。次のステップがじきにあり、もうひとつシーズン終盤に予定しています。
2003年向けエンジンは全く新しいものとなるのでしょうか?
そうですね。デザイン工程にはすでに着手されていますし、近いうちに、エンジンもダイナモメータへ載せることになるでしょう。
現行のエンジン関連のレギュレーションは、研究・開発のしがいがある規定になっていますか?
とてもチャレンジングです。しかしながら、エンジン構造関係の規定は、もう少し緩和してほしいと感じています。特に気筒数に関しては、もし制限がなければ、12気筒が最も理想的だと、私は思います。とは言いましても、F1のレギュレーションは、それほど制限が多いほうではないところがいいですね。レヴ・リミッターや、エア・レストリクターもなくていいですからね。
F1カーの信頼性を向上するための、一番手軽な方法は何ですか?
エンジンの回転数を下げれば済むことですが、もちろん、そのようなことは誰もしないですよね。パフォーマンスを落とさずに、より高い信頼性を獲得することが目標ですからね。ですからコストセーブということはなかなか難しいです。もっともこれは技術面からの意見ですが。
現行のレギュレーションのもとでは、2万回転が目標とされる回転数でしょうか?
そうですね。2年以内には実現可能でしょう。
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