第11戦 フランスGP 2002
2002年7月20日(土)
チーム・マネージャー アンジュ・パスカリに聞く
パスカリさんは、チームの若手メンバーの中では、兄貴分のような存在ですか?
ケルンにあるファクトリーの中では、そんなことはありません。何か問題があれば、彼らは自分たちの直属のボスのところに行きます。しかし、レース現場では、少し状況は違います。もし問題があれば、私がコンタクトパーソンとなっており、喜んで問題解決への手助けをしています。
チームに色々な国籍の人がいることに対して、どのような影響があるのでしょうか。
国籍の違いがあっても、うまくいっています。さまざまな国から、さまざまな文化を持った人々がひとつのチームに集まっているということは、結束力を高めることになると思っています。なぜなら、誰もがお互いの文化を尊重するようになるからです。どこか違う国から来た人と付き合うには、同郷の人よりもより多くの努力をするではありませんか?
外国人のスタッフをドイツに住むように説得するのは難しいことではありませんか?
ドイツに住むか否かは、各自の選択となります。F1のように、非常に多くの事柄に多くの労力と時間を費やすことをしようとするには、100%自分の精力を注いでもらう必要があります。私もコルシカ出身で、家族に会えずに寂しい思いをしていますが、トヨタに入るチャンスが来た時に、私は自分に3つの質問を投げかけました - 1)それが欲しいか 2)私にはそれが必要か 3)そして私にそれを成し遂げる能力があるか。これらの質問の答えが出たときに、私はこのチャレンジに飛びつくことを決めました。仕事をするところとしても、パナソニック・トヨタ・レーシングというチームは最高のチームです。私はチームメンバーにも、このチームで働いていることへの誇りを持ってもらえればと思っています。
ケルンを拠点にすることには、なにか他に問題はありませんでしたか?
そんなことは全くありません。私たちの選択肢の中では、最良のロケーションではないかと思っています。ケルンのファクトリーからとても近いグランプリサーキットが3つもあるのです。ホッケンハイム(ドイツGP)、ニュルブルクリンク(ヨーロッパGP)、そしてスパ(ベルギーGP)です。そして、ヨーロッパで行われるほとんどのレースへは、ファクトリーからちょっとしたドライブで行けるところです。ですから、地理的な面からは、イギリスにある他のチームより恵まれていると思っています。
チームは、能力をすべて出し切れている状況ですか?
シーズンが終わった段階で、この組織をもう一度注意深く見直して、どこが今後改善できるかということを検証していかなければいけません。大切なことは、個々の人間から100%の力を引き出すということで、今年学んだことをベースに、オフシーズン中には、いろいろ変えていかなければならないこともあるでしょう。
チームは今年、どのように改善されてきていますか?
私たちはとても進歩してきています。チームメンバーたちも一緒に働くことがうまく出来るようになってきています。もっとも、シーズンのはじめには、チーム内でのミスコミュニケーションということもありました。 たとえば、マレーシアGPでのピットエラーの原因でもそれがありました。それによって、アランはポイントを獲得できたかも知れないチャンスを失ってしまいました。
グランプリレースには、それぞれどのような違いがありますか?
パドック一つとっても同じものはありません。ピットガレージにも同じものはありません。私たちのピットはほとんどがピットレーンの最後尾にありますが、入口付近に配置されるグランプリレースもあります。これによって、多くの変更が必要となってきます。もちろん、各グランプリそれぞれのウィークエンドのパターンというものは同じですが、しなくてはいけないことに過小評価をしないことが、私の仕事です。もしレースウィークの流れに慣れきってしまって、自己満足に陥ってしまったとしたら、ミスを起こすことに必ずつながります。
自分のマネージメントスタイルについて、どのように自己評価していますか?
マネージャーとしては、私はとても物静かだと思います。何か決定をする前には、その状況を徹底的に、詳細に至るまで評価をして、それから行動に移ります。今は毎日何かを学んでいる段階ですので、自分のマネージメント能力を評価するのは難しいです。私はまだF1では新人ですし、グランプリ毎戦が私にとっては新しい出来事です。もともとはラリー出身で、レースということでは、トヨタのル・マン プロジェクトに1997年に参加したことがはじまりです。チームにいる経験豊富なメンバーからたくさん学んだということは言えます。ル・マン プロジェクトで一緒だったドライバーのマーティン・ブランドルさんからも多くのことを学びました。3年間、一緒に働いたわけですが、彼はとてもプロフェッショナルで、合理的でした。マーティンとの仕事ではあらゆることがとてもスムーズに運びました。常に合理的にポイントをついてくる人でしたから。
ル・マン プログラムはF1へ向けての良いステップとなりましたか?
トップレベルへのレースへの入門としては、いい経験となりました。もっとも、ル・マンは1年に1回のレースですが、3台のクルマに、9人のドライバー、そして、ピットには100人のクルーがいるというこのレースには、非常に大きな組織を必要とします。そして、ル・マンでは、年間9ヶ月も続く、精力的なテストプログラムがあり、そしてレースの1週間のうちに手持ちのカードをすべて出すことになるのです。自分自身を管理し、予期できないことを予想することにおいて、ル・マンはとてもいい学校です。 ル・マンでの2年間の経験なくして、F1へ飛び込んできていたら、このF1というものをもっと複雑なものと考えていたかもしません。
F1は驚くようなものですか?
多かれ少なかれ、思っていた通りです。F1参戦前の2年間において、私たちはグランプリを訪れ、ものごとがサーキットでどう進んでいるかを見てきました。これがとても役立ってきましたが、この準備期間では、どのようにメディアのプレッシャーに応じていくかということまでは、知り得ることができませんでした。F1の世界ではメディアの影響は計り知れないですからね!もちろん、大きくメディアに取り上げられることは、トヨタがF1参戦を決めた理由の一つではありますが、メディアと付き合う方法と、それには時間がかかるということを学んでいかなければならないでしょう。
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