第1戦 オーストラリアGP 2003

2003年03月09日(日)

高橋敬三ゼネラルマネージャーに聞く:決勝

ベストグリッドから一転、2台リタイア。
しかし、その戦いの中に手応えは十分にあった。

 3月9日、オーストラリアGPの決勝日は朝から空一面を雲が覆う、いまにも雨が降りそうな天気だった。午前10時ごろには激しく雨が降り始め、サポートレースは完全なウェット状態で行われることになった。

 昨日の予選後に車両保管された車両は朝7時過ぎにピットに戻ってきた。しかし、レギュレーションではF1カーをいじることがほとんど許されないため、メカニックたちは車両を綺麗に磨くくらいで、手持ち無沙汰にしていた。チームのテクニカルスポンサーのひとつである天気予報会社のメテオ・フランスの予報官は、前日から日曜日の雨を予想しており、午後のレースまでには止むことも予想していた。そのため、ピットにはレインタイヤが用意されていたが、ピットの中は比較的のんびりした様子だった。
「とにかく、今年は新しいレギュレーションのため、金曜日、土曜日が非常に忙しく、予選が終わると決勝までがすごく暇ですね」と高橋GMはピットの裏で余裕をみせる。
 午前11時半ごろ、ピットにトヨタ自動車の張富士夫社長が激励に訪れる。ピットの中で新しいF1カー”TF103”について説明を受け、「新しいクルマは非常に空気の流れを考えた作りになっているようですね。昨年一年F1をやったことで、ずいぶん勉強したようです。昨年は勉強の年、今年は挑戦する年ということでやってますが、今年はずいぶんとやってくれそうです」とコメントした。

 決勝直前、それまで付けられていたレインタイヤを外され、ドライタイヤが取り付けられた。「雨はこれ以上降らないということで、ドライタイヤでいきます」と高橋GM。風も強く吹いており、路面も乾きかけていたことから、完全に路面が乾くのも時間の問題と読んだのだ。

 午後2時、レースはスタートした。パニスは5番手から好スタートを切り、4番手まで上がる。3番手のモントーヤもかわしそうな勢いだったが、並びかけるが前には出られず。幸先良いスタートを切ったパニスだったが、まだ路面は濡れており、そこからペースを上げることができない。後ろのザウバーやルノー、BARらはインターミディタイヤを付けており、徐々に順位を落とすことに。1周目終了時点でパニスは11位まで順位を落としていた。ダ・マッタは19位。しかし、その後、路面は徐々に乾いていき、それとともにパニス、ダ・マッタともに順位を挽回していく。7周目にはパニスは6位、ダ・マッタも11位まで上がっていた。

 しかし、8周目。ダ・マッタは前をいく2台のクルマに視界をふさがれ、ブレーキポイントを誤り、スピン。グラベルにはまってしまいリタイヤとなってしまった。この直後、ジョーダンのファーマンのクラッシュのためにセーフティカーが出る。ここで、チームはパニスをピットに入れる。ピットクルーの素早い対応もあり、パニスは10番手でコースに戻っていった。この作戦が功を奏して、パニスはまたもや順位を上げていく。17周目には6番手まで再び上がっていた。18周目、2度目のセーフティカーが入る。セーフティカー解除後の25周目、BARホンダの2台がピットに入るとパニスは5番手まで順位を上げていた。ここまでは、完璧なレース運びで進んでいると思われた。

 しかし、5位に上がった直後、パニスにピットスルーのペナルティが出される。8周目のピットインの際にピット出口の白線を踏んだことへのペナルティだった。さらに不運がパニスを襲う。ピットインのサインが出された周回、パニスのクルマのエンジンが一瞬ぐずついた。不調を感じながら、ピットに入るパニス。しかし、ピットアウトした後、パニスのクルマはターン10のコーナーあたりでエンジンが止まってしまった。燃料系のトラブルだった。
「まだ、詳しいことは調べていませんが、金曜日の燃圧低下のトラブルと似たような部分もあります。燃料系のトラブルです。ダ・マッタは前のクルマを抜こうとラインを変えたところが汚れていて滑ったみたいですね。パニスはスタートから作戦もセッティングも完璧だったのに。セーフティカーが入った時に予定外でしたがピットインさせたのも結果としては良かったし。トラブルを出してしまったのは本当に悔しいですね」とレース後、肩を落とす高橋GM。とは言いながらも、全体的に考えれば、今回のレースの内容には満足していたようだった。
「今回、新しいレギュレーションで戦ってみて、うまく戦えたと思います。土曜日のセッティングも完璧だったし、レース直前にドライタイヤをチョイスしたのも当たった。ピットインも完璧だったと思います。車両も去年に比べて戦闘力が大幅にアップしているという手応えもあります。今回の反省点はトラブルを出してしまったこと。いち早く新型車を発表して2ヶ月近くもテストしてきたのに、トラブルが出てしまったことに対しては非常に悔しいです」。残念な結果となってしまったレースだったが、レース後の高橋GMの表情は“次”へ向けての期待が感じられるものだった。