第2戦 マレーシアGP 2003

2003年03月22日(土)

高橋敬三GMに聞く:マレーシアGP予選

異なるタイヤで予選に挑んだパニスとダ・マッタ
ダ・マッタの適応能力の高さに改めて驚かされる

メルボルンでの開幕戦から2週間、F1サーカスは熱帯のマレーシアに移動してきた。日中は気温が35度近くまで上がる、灼熱の国でのグランプリ開催である。マレーシアの首都、クアラルンプールから約70㎞、KL国際空港の側にあるセパン・サーキットは、1周5.543㎞を15のコーナーで繋ぐコースだ。グランプリ・コースとしては一番新しいサーキットで、それだけに安全面も十分に考慮された、すばらしい施設を持つ。昨年は予選でミハエル・シューマッハーが1分35秒266のタイムでポールポジションを獲得。決勝では、弟のラルフ・シューマッハーが優勝した。パナソニック・トヨタ・レーシング チームにとっては昨年、デビュー戦のオーストラリアでの6位入賞の勢いにのり、見事7位完走を果たしている、得意のサーキットでもある。

金曜日の午前中、トヨタのオリビエ・パニスとクリスチアーノ・ダ・マッタは決勝用のセッティングで何種類かのタイヤを試した。「開幕戦のオーストラリアでは金曜日の午前中は、予選のセッティングを試していましたが、ここでは燃料を積んで、タイヤを試すことにしました。土曜日の午前中だけでは時間が足りないと思いまして」と高橋GM。
そのせいか、午後の一回目の予選アタックではパニス、ダ・マッタともに上位進出はならなかった。パニスは「バランスはいいけど、グリップが足りない」とコメント。午前中のクルマよりも燃料を抜いていたが、タイムは変わらない。「タイヤとかの問題ではなく、メカニカル・グリップが足りないのでは」と高橋GM。
ダ・マッタの方は、「ブレーキングでのクルマの挙動が非常に不安定だった」とのことで、ブレーキングでマシンの挙動を乱してしまい、大きくタイムロスしてしまう。それでも、パニス14位、ダ・マッタ11位と、このコースを初めて走るダ・マッタがベテランのパニスを上回った。
「みんな、ダ・マッタのことをいろいろ言うけど、メルボルンとここと全く初めてのコースでパニスと遜色ない走りを見せるダ・マッタの走りは評価できる」とTMG来栖副社長もダ・マッタの速さに感激。高橋GMも「ダ・マッタは初めて走るこのコースにも慣れるのにあまり時間を要さなかった。適応能力は高いと思う」と驚きを隠せないでいた。
初日の結果は、1分36秒台に何と11台がいるという混戦模様。トヨタの2台もその真っ只中にいた。「この混戦の中で、セッティングを煮詰め切れなければ、あっという間に順位が落ちてしまうだけに、責任重大ですね」と高橋GM。タイヤについては、「ここはプライムもオプションもあまり差がありませんね。特に気温が高くなればなるほど性能差はなくなりますね」と語っていた。

翌土曜日、午前中のセッションはダ・マッタ5番手、パニス12番手。パニスはエンジントラブルで途中で止めてしまう。
「コンロッドのトラブルのようです。製造不良が原因だったようですね」と高橋GM。さらにダ・マッタはクラッチのセンサー不良と、2台ともトラブルに見舞われる。
このため、午後の予選に向けパニスの車両はエンジンが載せかえられ、ダ・マッタはTカーに乗り換えることとなった。

予選前に行われるウォームアップ走行では、パニスは5番手とクルマが完全に修復されたことを証明したが、Tカーに乗ったダ・マッタは13番手と出遅れる。
「ダ・マッタはTカーに乗らなければならなかったので、ちょっとかわいそうでしたね。」と高橋GM。セッティングの出ていないTカーでの予選となったダ・マッタだったが、それでも予選ではパニスの10番手に続く11番手と健闘した。
「予選は2台とも、実は違うタイヤを選択しました。どちらが、どちらということは言えませんが。今回はプライムとオプション、タイヤの性格の差が少なかったので、選択はかなり難しかったですね。予選結果は大体、自分たちが予想していたタイムは出せたと思います。しかし、順位に関しては他のチームがどのくらい燃料を積んでいるかによることが大きいですから、判断は難しいですね。特にトップの2台は結構軽いタンクで走っているんだと思いますが。今年のレギュレーションでは、予選で決勝の作戦も考えなければいけないので、いろいろとシミュレーションをしなければならないことも多く、明日の決勝を走ってみなければ、すべてはわからないですね」と高橋GMの気持ちは明日の決勝モードに入っている。