第2戦 マレーシアGP 2003
2003年03月23日(日)
高橋敬三GMに聞く:決勝
明暗を分けたマレーシアの暑さ
しかし、レースごとに自信は深まっている
マレーシアGPの決勝日はいかにもマレーシアらしい、暑い一日となりそうな朝を迎えた。そして、この暑さがトヨタにとってレースを左右する要因になるとは、この時は誰も思っていなかった。前日、高橋GMは「パニスとダ・マッタは作戦的に大きく変えました。タイヤの選択はもちろんのこと、ピット戦略も大きく違っています。どちらがどちらとは言えませんが。楽しみにしていてください」と不敵に微笑む自信を見せていた。ただ、その一方で木曜日、金曜日と激しく降っていた夕立については「(決勝では)降って欲しくない」とウェットタイヤとのマッチングに若干の不安を持っていたようだった。
レースはスタート時間が午後3時と、いつものグランプリに比べて、遅いスタートとなっていた。いつにも増して、メカニックたちはやることのない日曜日を長く感じていた。スタート時間が近づくと、空には黒々とした雨雲が立ち込め始めたが、高橋GMの思いが通じたのか、スタートの頃にはその雲も無くなり、南国らしい青空の中、レースはスタートとなった。
しかし、そのスタート前にトヨタに第1のトラブルが発生していた。ダミーグリッドにつこうとピットを後にしたダ・マッタがピットに帰ってきて、クルマの不調を訴えたのだ。スロットルのハイドロ系のトラブルだった。ダ・マッタのレースカーはすぐにガレージ内に入れられ、ダ・マッタはTカーに乗り換え、ピットスタートとなってしまった。
気温34度、路面温度39度。文字どおり、熱いマレーシアGPの戦いの火蓋はきって落とされた。スタートでまず波乱が起こる。予選2位のトゥルーリと3位のM・シューマッハーが2コーナーで接触。後続の数台がそのアクシデントに巻き込まれる形でダメージを負っていた。10番手スタートからうまくスタートを決めたパニスは、この混乱をベテランらしくうまく避けて、大幅にポジションを上げることに成功する。1周目、パニスは7位。ピットスタートだったダ・マッタも14位と大混乱の中を生き残っていた。さらにパニスはマクラーレンのクルサードがリタイアして6位、さらにBARのバトンと抜き去り5位にまで上がっていた。ダ・マッタもピットスタートながら12位と健闘していた。
12周目、パニスはいち早くピットインした。ルーティンのピットストップを行い、素早くピットアウトするパニス。ちょうど、ダ・マッタの前あたりでコース復帰。すると、すぐさま前のファーマンを抜き去る。クルマの調子の良さを見せ付けるような抜き方だった。しかし、ここでパニスに思いも寄らないトラブルが発生する。何の前触れもなく、燃圧が落ちクルマを止めることになってしまったのだ。さらに、同じようなトラブルがダ・マッタにも出てしまう。ピットインを予定していた20周前後、ダ・マッタのクルマにミスファイアが起こってきた。急遽、早めにピットインさせて、燃料を一杯に入れる。ここまでダ・マッタはしぶとく走り、8位まで上がってきていた。しかし、その後も34周目、49周目と、結局3回ピットに入らなければならないことになってしまい、上位入賞を果たすことはできなかったのだった。
レース後、長い緊急ミーティングから出てきた高橋GMは沈痛な面持ちでトラブルに関して次のように語った。「パニス、ダ・マッタともに同じような燃料系トラブルです。オーストラリアの時とは違うトラブルです。現時点で断定はできませんが、おそらく暑さのために燃料がパーコレーションを起こしてしまったのではないかと思われます。クルマの調子は非常に良かっただけに残念です。ダ・マッタの方は軽かったので、症状が出るとすぐに燃料を一杯にして冷やして対処しました。しかし、そのため3回もピットに入る結果となってしまいました。オーストラリア、マレーシアとトラブルに見舞われたことは残念です。何とか、これを解決して、次のサンパウロでは完走、入賞を果たしたいと思います」
結果的には燃料を多く積んだダ・マッタの方は、症状が軽く済み、それに対処したことで完走することができたが、常に燃料を一杯に積まなくてはならず、遅いペースでしか走ることができなかった。しかし、今後の対策について、TMG来栖副社長は「レース後のミーティングで、原因は大体つかみました。3日で解決してみせます。クルマのパフォーマンスに関しては手応えを感じているので、信頼性を取り戻せば、戦える自信はある」と力強く語ってくれた。
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