第3戦 ブラジルGP 2003

2003年04月05日(土)

高橋敬三GMに聞く:予選

フリー走行ではチーム初の「P1」を記録。しかし、予選では思わぬ展開に。気持ちを切り替えて、決勝に臨む。

灼熱のマレーシアから2週間、パナソニック・トヨタ・レーシングはブラジル・サンパウロに渡ってきた。南半球のサンパウロでは、秋に入ったばかり。とはいえ、日中の気温は30度に達するなど、ドライバーや車両にとって決して楽な環境とはいえない。

1周4.309kmのインテルラゴス・サーキットは、グランプリサーキットとしては少数派の左回りのレイアウトを持つ。細かな凹凸が激しく、滑りやすい路面もドライバーを悩ませる要素だ。サーキットを所有するサンパウロ市は、総額170万ドルを投資してサーキットの各施設を補修。このうちの25%をコース部分に充てた。コースの25%にあたる920mは路面が舗装しなおされ、コーナー各所の排水溝を改良、コース前半部分のランオフエリアも新しい舗装に直されている。

昨年の予選は、ミハエル・シューマッハーが1分13秒241でポールポジションを獲得。決勝でもそのまま逃げ切り、ポール・トゥ・ウィンを達成した。デビュー3戦目のパナソニック・トヨタ・レーシングは開幕戦に続き6位入賞を果たしている。

「ここはバンピーなサーキットだということがわかっていましたので、先週のバルセロナでサスペンションをいろいろ試しました。いいのが見つかりました。リヤの安定性がだいぶ良くなっています。マレーシアで発生した燃圧の問題も解決し、万全の態勢で臨んでいます。ドライバーの気合いも入っています」と高橋GMは、ブラジルGPに向けた意気込みを語る。

 金曜日の朝8時半から2時間かけて行われるテストセッションの途中、10時頃から雨が降り始めた。11時からフリープラクティスが始まったが、雨は勢いを増すばかり。パナソニック・トヨタ・レーシングをはじめとするミシュラン勢は、インターミディエイト、浅溝、深溝と3種類持ち込んだウエットタイヤのうち、真ん中にあたる“浅溝”タイヤを持ち込んでいた。インターミディエイトを履くブリヂストン勢よりは有利とはいえ、コースの随所に水たまりができるほどの激しい雨では、深溝のウエットが最適。チームは無理をせず、パニスは2周、ダ・マッタは3周の計測ラップを終えただけでセッションを終了した。

「路面にあまりにも水が溜まっていたので、危ないと判断し、走らせるのを見合わせました。今年からドライタイヤは何種類も持ち込めるんですが、ウエットは1種類だけなんです(注:昨年までは2種類)。ミシュラン勢は浅溝なんですが、あの雨では危ないですね。9年ぶりにインテルラゴスを走るクリスチアーノにはもっと走らせたかったですけど」と高橋GMは振り返る。

 予選も雨。しかも、強く降ったり、弱くなったり、ときおり止んだりと、コンディションが安定しない状況で行われた。15番目にタイムアタックを行ったダ・マッタは1分26秒554で11番手。出走20台のうち最後にタイムアタックを行ったパニスは、好転する路面状況にも助けられて1分25秒614で6番手に食い込んだ。

「クリスチアーノが出たときの路面コンディションは最悪でした。午前中に2周しか計測走行をしていないわりには良く走りました。感心します。オリビエが走ったときは、路面がどんどん良くなっていたようなのですが、トラクションコントロールのセッティングが合わせきれなかった。もう少し濡れた状態に合わせていたんですけど、思ったより乾いていたんですね。明日はドライでいけるはずですから、最初からやり直しですね」

 雲はところどころに浮かんでいるものの、土曜日は晴れ。路面はドライとなった。午前中のウォームアップ走行では、ダ・マッタが16番手に終わったものの、パニスがトップタイムをマーク。パナソニック・トヨタ・レーシングがF1公式セッションで記録した初の「P1」である。予選に向けた順調な仕上がりぶりを予見させたが、結果はパニス15番手、ダ・マッタ18番手に終わる。予選終了後の高橋GMは複雑な表情を見せた。

「予定外なんてもんじゃありません。戦略を変えたわけでもないんです。オリビエはコースの半分まで午前中と変わらないペースで走っていたんですが、セクター2でミスをして、その影響でリズムを崩したんでしょう。1秒以上はロスしたと思います。1戦目、2戦目と残念な結果に終わっていたので、彼も上位を狙っていたんだと思います。ドライバーだってミスしようと思ってミスしているわけではなくて、アタックした結果としてミスですから仕方ありません」

 燃料の積載量が違うダ・マッタは“トップ狙い”ではなかったのもの、18番手のポジションは必ずしも想定どおりではなかった。

「クリスチアーノはセットアップが違う方向に進んでしまったみたいです。午前中のプラクティスでスピンして走り込めなかった部分もあります。オリビエのデータを使ってセットアップし直したんですけど、結果的にはスピードをかなりロスしていました。彼の場合はセットアップを充分にできなかったところが、タイムを落とした一番の原因でしょうね。エンジニア側の責任だと思います。ダウンフォースを減らすとストレートは伸びるんですが、すると低速のセクター2が遅くなってしまう。そこをメカニカルグリップで稼ごうと試したんですが、結局はあまりフィットせずに元に戻したりと、ちょっとした混乱がありました」

 最後に高橋GMは、「レースは何があるかわからないし、天候も不安定なようですから、気持ち切り替えてやります」と語って、ブリーフィングルームに引き上げた。