第3戦 ブラジルGP 2003
2003年04月06日(日)
高橋敬三GMに聞く:決勝
不安定な天候に戦略を変更するも
予想外の展開に悩まされることに。
ヨーロッパラウンドでの起死回生を目指す。
高橋GMの言ったとおり、日曜日の天候は不安定だった。前夜の雨が濡らした路面は朝10時の時点では乾いていたが、突然空が暗くなると、大粒の雨が落ちてきた。グランドスタンドのひさしからは滝のような水が下に落ち、コースのある部分では、雨水が濁流となって流れていた。誰もが午後2時から始まる決勝レースのスタートを心配していた。
午後12時50分、悪天候のための特例としてライドハイト(車高)と前後ウイングの調整を認める発表があった。通常、予選終了後に天候が変わった場合は、フロントウイングの調整だけしか認められていないが、これだけの調整範囲では「危険」だと主催者側は判断したのだろう。
「クリスチアーノの車両はウイングもライドハイトもほぼウエットのセッティングだったのであまりメリットはなかったんですが、パニスにとってはメリットになりました」と高橋GM。
パニスはダ・マッタが装着していた、ダウンフォースを強く発生させる新しいリヤウイングを装着し、レースに臨んだ。さらに、「セーフティカー・スタートになる」という確信を持っていたパナソニック・トヨタ・レーシングは、ピット作戦で攻めに出た。レースのスタートは見送られ、スケジュールより15分遅れてグリーンライトが点灯した。
「セーフティカー・スタートになることが分かっていたので、オリビエとは『セーフティカーが入ったらすぐにピットに入ろう』と打ち合わせをしていましたし、クリスチアーノとは『(燃費をセーブする走りで)なるべく引っ張って、1ストップでいける可能性が出てきたら、そっちに切り替えよう』と事前に決めていました」
予想どおり、レースはセーフティカー・スタートとなる。パニスは1周目にピットに入り給油を終えてコースに戻った。ピットインの影響でポジションを19番手に落としたが、71周のレースの中盤以降に1回だけピットストップをするだけで済む。2ストップ勢が順位を落とすのを尻目に、ポジションを上げる狙いだった。ところが、18周目の1コーナーで他車に追突され、1回ストップ作戦の効果が現れる前にレースを終えることになった。
「オリビエはショックだったんじゃないでしょうか。充分1ストップでいけましたから。まあ、“たられば”を言っても仕方ないんですが」
セーフティカーは9周目までコース上にとどまった。「ダ・マッタも1ストップでいける」可能性にぴったりとはまる。チームは2回目にセーフティカーが出た27周目にダ・マッタをピットに呼び戻すと、給油を行った。これで1ストップ切り替え作戦は完了した(はずだった)。ダ・マッタは燃費をセーブする走りに徹したが、精密に燃料の消費量を計算した結果、最後まで走りきれない可能性が出てきた。35周目に2回目のピットイン。燃料を足してコースに戻ったダ・マッタだったが、今度は別の問題が彼を待っていた。
コースが乾いて路面のコンディションが変わってきたため、リヤタイヤが異常摩耗を引き起こしたのだ。ハンドリングの不調を訴えたダ・マッタは45周目にこのレース3度目のピットイン。タイヤを履き替えたが、完全なバランスを取り戻すには至らず、我慢の走行を強いられた。それでも赤旗によりレースが中止されるまで走りきり、2戦連続の完走を果たした。
「ダ・マッタは当初2回ストップでいく予定だったんです。ですが、セーフティカーが長く入っていたので、途中から燃費をセーブする走りに切り替えさせ、さらに、1ストップ作戦に切り替えました。その後も燃費をセーブさせたのですが、ぎりぎり持ちそうになかったので、セーフティカーが入ったタイミングで再度燃料を満タンにしました。これで最後まで走らせる予定だったんですが、路面が意外に早く乾いてきたんです。もうちょっと乾きが遅いと思っていました。路面の状況に合わせて空気圧を調整したんですけど……。ただ、濡れているところもありましたからね。乾いているところに合わせると、濡れたところでズルッといくかもしれない。いろんな要素が絡まった難しいレースでした」
パニスが土曜日のフリープラクティスで冴えた走りを見せ、ダ・マッタが2戦連続の完走を果たしたブラジルGPだったが、高橋GMの表情はいつになく厳しかった。「4戦目以降は他のチームもレベルアップをしてくるはずです。しかし、混戦なのでウチがレベルアップをすれば上位に上がるチャンスは充分にある。気持ちを入れ換えて頑張ります」
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