第4戦 サンマリノGP 2003

2003年04月19日(土)

高橋敬三GMに聞く:予選

初日の苦戦から一転、予選では好パフォーマンスを発揮。
荒れそうな予感の決勝へ向けて、期待が高まる。

F1サーカスはいよいよヨーロッパ大陸でのレースを迎え、本格的なシーズンへと突入した。ヨーロッパでの初戦となるサンマリノGPは、イタリアのイモラ・サーキットで行われる。フェラーリの本拠地であるフィオラノやミナルディのファクトリーがあるファエンツァなどが近くにあるため、毎年多くのファンでスタンドが埋め尽くされる、熱狂的なグランプリだ。1周4.933キロメートルのコースは、アップダウンも多く、高速コーナーとシケインがある、非常にテクニカルなレイアウト。セッティングも難しく、昨年初めてのレースに挑んだパナソニック・トヨタ・レーシングは縁石に乗り上げた時のクルマの挙動に悩まされた。

「昨年は縁石に悩まされましたが、そのデータをもとに基本セッティングを考えてきました」と高橋GM。昨年は2台とも駆動系のトラブルでリタイアした苦い経験を持つコースだけに、その準備にも自然と力が入っているようだった。

4月のイモラはとても過ごしやすい季節だ。昼間は20℃以上にまで気温も上がり、半袖がちょうどいいくらい気持ちのいい気候。ただし、朝晩は冷え込み、気を抜くと風邪を引きかねないヨーロッパ特有の天候でもある。チームスタッフがサーキット入りした木曜日は天気も良かったが、週末の天気予報は雨。ブラジルに続き、波乱のレースとなりそうな予感が漂う。

金曜日、午前中のフリー走行で、最初にコースに飛び出していったのはダ・マッタだった。パニスもセッション開始早々にコースインしていった。

「午前中のセッションでは、縁石に乗り上げた時にクルマが跳ねる挙動に悩まされ、セッティングが詰めきることができませんでした」と高橋GMは悔しさを隠さない。さらにパニスのクルマのリヤのホイールベアリングが焼きつき、ブレーキング時に不安定になってしまう症状が出ていた。結局、このセッションではダ・マッタが1分24秒117で16番手、トラブルで最後まで走れなかったパニスが1分24秒565で17番手という走り出しとなった。

午前中のデータをすぐにケルンに送り、解析した結果を元にセッティングを考えるチームスタッフ。その結果、午後の予選に向けて、パニスのマシンは大幅にセッティングを変えることとなった。

「縁石に乗り上げるとクルマが跳ねて、着地した後、フワフワと安定しない。この跳ね方を抑えるために、オリビエのクルマはフロントサスペンションのストロークを増やして柔らかくする方向にしました。それに合わせてリヤも柔らかくしてバランスを取りました」と高橋GMは説明する。

これが功を奏し、午後の予選でパニスは1分22秒765までタイムを大幅に伸ばした。パニスもセッティングに概ね満足していた。午前中のセッティングの方向性のまま、セッティングを進めていったダ・マッタの方は、乗りづらいクルマのためにミスもあり、タイムは伸びなかった。

「オリビエのセッティングが非常に良かったので、明日は2台ともそのセッティングでいきます。ただ、タイヤにちょっと問題が出てしまいました。今日はまだ路面も良い状態じゃなかったせいか、グリップも低く、気温も思ったよりも高かったため、タイヤにとっては厳しい条件となってしまったようです。たぶん、明日以降はグリップも良くなるだろうし、日曜日は気温も下がるから問題はないと思います。レースの作戦は、タイヤの状況で決めることになりそうですね」

土曜日、レースウィーク前の予報では曇りとなっていたが、この日も晴れ。気温も高く、タイヤにとっては多少厳しい状況となった。午前中のフリー走行ではまたもダ・マッタは真っ先にコースインしていった。

「昨日のセッティングを煮詰めていった結果、クルマのセッティングは満足いくレベルまで煮詰めていけました。ただし、今日も思ったより路面のグリップが上がらなかったことや、気温も高かったため、フロントタイヤに負担がかかり、タイヤには厳しかったですね。タイヤに負担の掛からないバランスを探すことに手間取りました」と高橋GMは言う。

昨夜のセッティングをさらにケルンのTMGで検証した結果、セッティングは進み、ドライバーも満足できるレベルまでクルマは仕上げられた。

午後の予選。ダ・マッタは1分23秒838で13位、パニスは1分23秒460で10位。

「順位的には満足していませんが、タイム的には満足いくものでした。やはり、ここも接戦ですから、ほんのちょっとの差で大きく順位に響いてきますね」と高橋GM。スタートポジション的には厳しい位置だが、内容的には非常に充実したセッションとなったようだった。ただし、問題はタイヤと明日の天気だ。

「今日の天気予報でも降水確率は60%ですから、レース中は何らかの雨が降ってくると思います。ただ、それほど本格的には降らないと思っています。多少、路面が濡れるくらいだと読んでいるので、セッティングも本格的な雨仕様とまではなっていません。予選のタイムを見ると、燃料の状態もチームによっていろいろと違うようですね。ここはピットストップのロスタイムも少ないので、ピットストップの回数も悩むところですが、うちとしては2台ともほぼ同じ作戦でいきます。あとは天気次第というところでしょうか」と高橋GMの表情は明るい。決勝に向けての最後のミーティングに入る様子を見る限り、決勝でのパフォーマンスには大いに期待できそうだ。