第4戦 サンマリノGP 2003

2003年04月20日(日)

高橋敬三GM・松井誠モータースポーツ部長に聞く:決勝

今シーズン初の2台完走を果たすも
決して満足はできない内容に
次戦への決意を固める

土曜日の天気予報では、日曜日の午後1時から4時までの間の降水確率は60%となっていた。レースのスタートは午後2時であることから、その時点では決勝レースで雨が降る確率が高かった。高橋GMも雨も想定して、予選からクルマのセッティング、戦略を考えているようだった。「雨といっても、それほど激しく降るような予報ではないので、クルマのセッティングはそれほど雨仕様にはなっていません。戦略的にはいろいろ考えていますが、最終的には日曜日の午前中に天気も睨んで戦略を決めます」と高橋GMは冷静に語る。

そして決勝当日。空一面を雲が覆う、どんよりとした天気だ。天気予報どおりに雨が降りそうな感じだった。しかし、トヨタチームのスポンサーであるメテオ・フランスの予報では、時間が経つにつれて雨の確率は少なくなっていた。

「レース中はほとんど雨が降らなそうな感じです。降っても、路面が濡れるほどではないということです。戦略も晴れを想定してのものに変えました」と高橋GM。予選の流れを見ても、今回のレースはチームによって戦略が大きく変わっているようだった。

「ここのコースは、ピットストップでのロスタイムも少ないので、昨年までのレギュレーションでも(ピットストップを)2回にするか、3回にするか迷うところですからね」と意味ありげなコメントを高橋GMはレース前に残していた。

レース前、日曜日のパドックは走行がないこともあって、今年になって非常にのんびりした雰囲気が漂っている。ここサンマリノでも、それほど忙しく動き回っている者もなく、トヨタチームのモーターホームでも落ち着いた雰囲気で昼食を取るスタッフが目立つ。余談だが、今年はチーム数が減ったこともあり、トヨタチームのパドックでのスペースが広くなり、それに伴いモーターホームが倍の広さに拡張された。のんびりした雰囲気は広々したモーターホームのおかげでもあるかもしれない。

レースのスタート時間が近づくと、空は次第に明るくなり、明らかに天気は快方に向かっていた。午後2時、フォーメーションラップが始まり、レースはスタートした。気温18度、路面温度20度。日曜日は曇りのおかげで、気温も下がり、レースにとっては絶好の条件となった。

スタートで、5番手グリッドにいたジャガーのM・ウェバーが出遅れる。そのせいで、後方集団はウェバーのクルマを避けるために混乱していた。その混乱をうまく避けたパニスとダ・マッタは順位を上げる。1周目の順位はパニス7位、ダ・マッタ12位だった。その後、トヨタチームの2台は中団グループの激しい戦いの中で善戦するが、抜きどころの少ないコースで順位を上げることはできないでいた。

11周目、誰よりも早くパニスがルーティンのピットストップに入った。ここで、今回唯一のミスといえるトラブルが出る。給油口がうまく開かないという小さなトラブルが出たためにピットストップに10秒もかかってしまったのだ。その2周後、ダ・マッタもピットインするが、こちらは順調にピット作業をこなし、7.8秒でピットアウトしていった。ピットイン後の順位はパニス12位、ダ・マッタ15位だった。

2回目のピットストップはレース中盤、27周目にパニスが入る。この時は、ピット作業もうまくいき8.1秒でピットアウト。28周目にダ・マッタも2回目のピットインに入っていた。

順調にレースをこなしていくトヨタチームの2台だったが、レース中盤になってもパニス8位、ダ・マッタ11位あたりで、なかなか順位を上げることはできない。

「最初のパニスのトラブル以外、ミスもトラブルもありませんでした」とレース後、高橋GMが言うように、トヨタチームの2台は端から見ても順調そのものだった。しかし、ラップタイムはなかなか上がらない。トップが1分23秒台から、時折22秒台で走っているのに対して、パニスとダ・マッタは1分25秒くらいのタイムで走っていた。

「今回は速さがなかった。その要因はうまくタイヤを使いきれなかったためです。それが順位を上げられなかった最大の理由です。今回はオプションタイヤを選んだのですが、レースでの安定性はプライムの方があったわけですから、リスクを負ってまでオプションを選んだ甲斐がなかった」と高橋GMは悔しそうに語る。

最後、パニスが44周目、ダ・マッタが46周目に最後のピットストップを終え、無事2台ともチェッカーを受けた。パニス9位、ダ・マッタ12位での2台揃っての完走だった。

「今年初めて、レースは順調にいきました。2台完走できたということは非常に嬉しいことです。戦略も良かった、ミスもなかった、トラブルもなかった。でも、入賞圏内に入れなかったというのは、クルマの速さが足りなかったということです。チームとしては、非常にうまく機能したと思います。うちのクルマもポテンシャルは上がっていると思いますが、それと同じくらい他も上げてきたということですね。しかし、今年は非常に接戦なのに加えて、トラブルでリタイアするクルマが少ない、非常に厳しいレースとなっています。頑張ったのにこの成績というのは非常に疲れる結果ですね」と高橋GMは悔しさをにじませる。

今回のレースには冨田TMG会長の他、松井モータースポーツ部長もイモラ・サーキットを訪れていた。「今回のレースは内容的には得るものが多かったと思います。まず、マシンは確実に進化していることと言えます。昨年、ここの縁石に乗ったときの挙動には苦しめられたが、今年はだいぶ対策が進んでいた。金曜日の時点では、まだ満足できるセッティングではありませんでしたが、ケルンのスタッフと話し合って、シミュレーターでの解析もうまくいった。実は、今年のマレーシアに行った時、この部分では非常に不安を感じていたんです。それが、今回はうまく機能した。これは評価していいと思います。他のチームが、ヨーロッパの初戦に合わせて、新しいパーツを用意してきて戦闘力を上げたのに対して、うちは今回はブラジルと同じパッケージングのままだった。その部分の差が出たんだと思っています。次のスペインでは新しい空力パッケージに新スペックのエンジンを投入します。かなり期待できると思っています」と松井MS部長は冷静に語る。

今回、現時点でトヨタチームが抱える問題点が浮き彫りになったが、それに対する対策の手もすでに打ってある。このあたりの対応の早さにF1グランプリ2年目の成長ぶりを感じる。トヨタチーム、2年目のチャレンジは確実に形になりつつあるようだ。