第6戦 オーストリアGP 2003
2003年05月17日(土)
オーストリアGP予選レポート - 高橋敬三GMに聞く
金曜、土曜とセッティングに苦しみながらも
スターティンググリッドは11、13番手を確保
常に先を見据えた、“我慢”の戦いは続く
2週間前のスペインGPで、念願の今季初ポイントをゲットしたパナソニック・トヨタ・レーシング。大幅な改良が加えられたTF103もポテンシャルが上がり、チームにも勢いに乗っていきそうな気配が漂う。しかし、そんな状況にも決しておごることなく、スペインGP後にポールリカールでの4日間のテストを終えて、オーストリアGPに臨むことになった。
舞台となるA1リンクは緩やかな斜面に作られた1周4.326㎞の見晴らしのいいサーキットだ。アップダウンがきつく、1コーナーを超えたあとの登りのロングストレートはエンジンパワーの差が歴然と出る。その後、2コーナーの先には下りのストレートもあるなど、抜きどころもあり、レースを見る側にとっては面白いコースと言われている。今年、コースは縁石が改修された。木曜日、サーキット入りした高橋敬三GMはさっそく縁石のチェックに行ったが、その印象は「1コーナーに行ったんですが、アウト側の縁石がギザギザになっていました。ここは、アウトにはらんでいくところなので、クルマの挙動がどうなるか、難しそうですね」とのことだった。
いつものように、4チームによるテスト走行の後、金曜日の公式練習は行われた。ここでトヨタチームは思わぬトラブルに見舞われる。「クルマの操縦性が優れない」とドライバーがピットに入る。ラップタイムも伸びず、セッション後半までふたりのドライバーはなんと19、20位の位置にいた。セッティングに手間取り、なかなかアタックできないでいたのだ。
「普通はアンダーステア傾向から始まるんですが、今回はオーバーステアだとドライバーは訴えてきた。それも、高速コーナーではアンダーステアだと言う。単純なオーバーステアならやりようがあるけど、クルマのバランスが取れてないみたいです」と高橋GM。
全体的に路面のグリップも低く、他のチームのクルマもコースから飛び出したりしていたが、トヨタの場合は深刻だった。ダ・マッタは「まだクルマに100%の信頼がおけないから、プッシュできない」と嘆いていた。結果的にこのセッションはダ・マッタ17位、パニス18位となった。
午後の1回目の予選に向けて、クルマのセッティングが大幅に変更される。
「クルマのバランスはだいぶ良くなりました。持ってきた時のセッティングとはまったく別の方向からセットアップしました。まだ多少オーバー気味ですけどね。今晩、またケルンとのミーティングで良くなるでしょう」と高橋GMの顔にも多少安堵の色が見えてきた。
土曜日、午前中のフリー走行ではそのセッティング変更が効いたのか、パニス13位、ダ・マッタ16位と多少改善の兆しが見えてきた。タイム的にもトップのバリチェロとの差は0.8秒と大きく縮まっていた。
午後の予選、5番目にアタックにでたダ・マッタは1分10秒834で13位、パニスは10秒402で11位。順位的には満足できないものだったが、トップとのタイム差は1秒少々と接戦の中でわずかに及ばなかったのが、タイムからもわかる。
「今回の予選は完全にドライバーの責任ではありませんね」と予選後、高橋GMは厳しい表情で語る。「空力的なバランスは見つけることができたんですが、グリップが悪く、タイムがでませんでした。空力とサスペンション、車高のバランスが見出せなかった。タイヤとの相性なのかもしれません。もともと、ここはグリップが悪かったというのはわかっていたのですが。2日間ともセッティングが決まらず、これだけ苦しんだのは、2年間で初めてですね」と高橋GMは言葉に詰まりながらも答えた。
しかし、悪いことばかりではなかった。今回、セッティングに悩みながらも多くのことを試せたことで、今までになかったようなセッティング・データを残せたというのだ。
「ここをこうすれば、こうなるというデータが今回豊富にとれたことは、悪いなりにも良かったことですね。ただ、予選終了後にこうしたいと思っても、セッティングが変えられない、今年のレギュレーションは痛いですね。本当はレースに向けて、変えたい部分があるんですけどね」と高橋GM。
「レースに向けては、とにかく完走すること。レースは長いし、いろいろと状況も変わるので、どうなるかはわからないですから。今年はリタイヤが少ないですが、今回は路面のグリップも低いためか、フリー走行から飛び出すクルマが多いですから、我慢して完走すれば、上に上がれるかもしれないという期待はありますね」
スペインGPから一転、厳しいレースとなりそうな今回のオーストリアGPだが、そんななかでもパナソニック・トヨタ・レーシングは確実に前進を続けている。
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