第6戦 オーストリアGP 2003
2003年05月18日(日)
オーストリアGP決勝レポート - 高橋敬三GMに聞く
スタートでの思わぬアクシデント。
そして、パニスの不運。
しかし、このグランプリで得たものは大きい。
日曜日は朝から快晴。気温も20度を超え、日なたでは半袖がちょうどいいくらいの好天候となった。しかし、そのさわやかな朝の天候とは裏腹に、天気予報では夕方には雨がパラパラと降るという。その予報どおり、昼過ぎには山の向こう側から、厚い雲が現れてくる。
「予報では多少パラパラと来る程度ということなので、まったく問題はないはずです」と高橋GM。いつものように日曜日の午前中は手持ち無沙汰のようだが、「みっちりと戦略的なミーティングをやりました」とレースを前に準備はしっかりと整っているようだった。
午後2時のスタートの頃には、雲が空を覆ってはいたものの、気温は20度と相変わらず暖かい。しかし、雲は相変わらず多く、コースが日陰になったせいか、路面温度は27度と朝よりも多少下がっていた。
スタートでトヨタにトラブルが襲い掛かる。ダ・マッタのクルマがエンジンストールしてしまい、スタートがやり直しとなる。ローンチコントロールのスイッチを入れるとエンジンがストールしてしまうというトラブルだった。これでダ・マッタは最後尾スタートとなってしまう。さらに、再スタートでもダ・マッタは再びストールさせ、2度目のやり直しとなってしまった。
3度目のスタート、ダ・マッタはマニュアルに切り替え、無事にスタート。11番グリッドのパニスは好スタートを切るが、1コーナー、2コーナーとライン取りで行き場がなくなり、順位を落としてしまう。1周目、パニスは13位、ダ・マッタは16位。3度目のスタートの際、ミナルディのフェルスタッペンが数百メートル走ったところでクルマを止め、この処理のため、セーフティカーが出る。ここで、チームは急遽パニスをピットに入れ、ルーティンのピットストップを行う。燃料を入れ、タイヤを交換し、素早く出ていったパニスはすぐに隊列の一番後ろについた。
「パニスのピットインについては事前に話し合っていました。もし、セーフティカーが入ったら、そこで入れようと。戦略的にはうまくいったと思います。変則的な2回ピットですが、ここはもともと1回でもいいサーキットですから。ダ・マッタの方は、燃料を多めに積んでいたので、そこで入れても意味がないという判断でした。パニスの2回目のピットは35、6周あたりの予定でした」と高橋GM。
しかし、「やったー!」と思ったのもつかの間、7周目の2コーナーでパニスはクルマをストップさせてしまう。
「ドライバーのコメントでは、何かが飛んできてクルマにぶつかったということでした。クルマはバージボード、フロントサスペンションが壊れてしまっていました。まったくついてないとしか言いようがないですね」と高橋GMも突然のアクシデントに驚いたようすだった。
一方、スタートでトラブルが発生したダ・マッタの方は順調にレースを走っていた。順位も徐々に上がっていく。10周目を過ぎた頃、雨がパラパラと降りはじめる。1コーナーの観客席では傘をさす観客が目立ってきたが、予報どおり、雨足はそれ以上強まることはなかった。
18周目、ダ・マッタが最初のピットイン。ピット作業は9.0秒とまずまず。その後、しぶとく走るダ・マッタは徐々に順位を上げていく。30周目を過ぎる頃には14番手ながら、9位のザウバーのハイドフェルド以下、6台の混戦の一番後ろについていた。まさに接戦の今年を象徴するような戦いだった。
そこに追いつくまでは、他のクルマよりも1秒近く速いペースで走っていたダ・マッタだったが、その集団のなかで、前を抜きあぐねていた。
「本当は、ダ・マッタは43周目に2度目のピットストップをする予定でしたが、前につかえてペースが上がらないので早めにピットに入れることにしました」と高橋GM。
37周目、ダ・マッタは2回目のピットイン。38周目の順位は15位だった。レース終盤、混戦の中でしぶとく走るダ・マッタは順位をジリジリと上げていた。コースアウトやスピンするもの、マシンのトラブルなどが多発し、最後は激しい10位争いを繰り広げていた。ジョーダンのフィジケラがダ・マッタの強烈なプッシュに音をあげ2コーナーでコースアウト。ダ・マッタは厳しいレースを見事10位で走り切った。
「今回は3日間を通して混乱したレースでした。しかし、その中でも得たものは大きいと思います。予選では決まらぬクルマに手を焼きながらも、いろいろな方向からセットアップを試みることができた。レースでも戦略的な部分で臨機応変に対応できた。成績的にも、内容的にも満足はできませんが、得るものはあったと思います」。
苦しいレースを終えた後だったが、高橋GMは次のステップへ向けて考えをめぐらす。「今回のレースで試せたセットアップをポールリカールのテストで、もう少し煮詰めていきたいと思っています。そして、次のモナコではレース後にワインで乾杯したいですね」と、高橋GMの頭の中は次のレースへの思いでいっぱいだった。
- トヨタ自動車 モータースポーツ カーレースカテゴリー