第6戦 オーストリアGP 2003

2003年05月19日(月)

クリスチアーノ・ダ・マッタ - オーストリアGPを終えて

F1の世界では、人の運がすぐ変わってしまうことが不思議だ。2週間前、スペインのカタルニア・サーキットでTF103は、本当に良くその性能を発揮してくれて、パナソニック・トヨタ・レーシングにとっての今シーズン初ポイント獲得となった。しかし、その2週間後のA1リンクサーキットで行われたオーストリアGPでは、とても苦労をさせられてしまった。

僕達がオーストリアでパフォーマンスを発揮できなかったことは、不思議なくらいだ。なぜなら、グリップ感がいつもより足りないかなと思う以外、これといってクルマに悪いところはなかったのだから。バランスも問題なく、少しコーナーの中間でアンダーステアが出たけれど、それは、セットアップの変更でなんとでもなるものだった。

金曜日の午前中は、コースを覚えなくてはならなかったので、クルマのセットアップを進めることはできなかった。でも、ラッキーなことにA1リンクはコースが短くて1分10秒ぐらいでラップできるから、こつをつかむにはそれほど時間がかからなかった。しかし、新しいルールの下では、すべてのセッションで常に良いセットアップを最大限にする必要がある。それがまさに、金曜日の午後、最初のワンラップ予選に出ていった直後、僕はグリップに問題があると気がついた。そして、結果は16番手。これには本当に欲求不満を感じた。

クルマのセットアップは、順調に進んでいたのだけれど、僕達は、土曜日の予選で他のドライバーがアタック中にミスしてしまったことに助けられたように思う。僕は、13番手でパナソニック・トヨタ・レーシングのチームメイトのオリビエ・パニスから0.4秒遅れだった。うまくアタックできて、クルマのパフォーマンスも引き出すことができたことには満足だった。

レースでは、きっとテレビを見ていた人はみんな、最初の2回のスタートがやり直される前に僕が手を振っていたのを見たと思う。ステアリング・スイッチの接触に何かのトラブルが発生して、スタートのためにローンチコントロールのスイッチを押したらエンジンが止まってしまったんだ。手を振ってそれを知らせたら、FIAのスターター、チャーリー・ホワイティング氏がスタート進行を中断した。

再スタートの原因を作ってしまったことにより、僕は最後尾からのスタートとなってしまった。これで今回のレースは苦しくなると思った。2度目のフォーメーションラップに出るときに、ローンチコントロールを試してみたところ、今度はちゃんと働いた。その走行中にレースエンジニアのオッシー・オイカリネンと無線で話し、スタートもローンチコントロールを使うことにしたが、またしてもエンジンが止まってしまい、2度目のスタートやり直しとなってしまった。

3度目のスタートでは、もうこれ以上リスクを冒すことはできなかったので、マニュアル操作でスタートすることにして、ステアリングに装着されているクラッチを使ってスタートを切った。少しホイールスピンの量は多かったけれど、うまくスタートが切れて僕のレースは始まった。レース中は何のトラブルも発生しなかったので、いったいローンチコントロールのトラブルは何だったのか謎だし、理解できなかった。

TF103はレース中調子よかった。グリップもこの週末で一番良く、思い通りにドライブできた。クルマの調子が良かったのは、レース中の最速ラップが土曜日の午後の予選タイムよりも0.4秒速かったのを見ればわかる。スタートのトラブルはあったけれど、それでも10位でフィニッシュできてうれしかった。これで、6レースを終わって5度目の完走だった。

オーストリアGPを終えて、パナソニック・トヨタ・レーシングは、ポールリカールでモナコGP前の大規模なテストを行う。僕がテストを行うのは、そのうち1日だけの予定のため、待ち遠しくてたまらないモナコGPを前に、リラックスする時間をとることができる。モナコでのレースは初めてだけれど、他のドライバー達からモナコでのドライブがどんなに素晴らしいかということは、いろいろ聞いているんだ。挑戦しがいのあるコーナーがたくさんあるので、僕のチャンプカーで走ってきた公道レースでの経験を活かして、セットアップをすぐに決められればと思っている。

モナコでどれだけくい込めるかはわからない。スペインやオーストリア以上にクルマがパフォーマンスを発揮してくれることに期待をかけている。