第7戦 モナコGP 2003

2003年06月01日(日)

モナコGP決勝レポート:高橋敬三GMに聞く

今シーズン2回目の2台完走にもチームは満足していない
速さを追求するためのトライは続いていく


南仏の燦々と照る太陽の中で、モナコGPは決勝日を迎えた。今年のモナコはレースウィークを通じてずっと天気が良く、気温も25度を超えていた。夏のような日差しの中、ボートやホテルのプールサイド、マンションのテラスなどには水着の観客が並び、レーススタートを待っている。そんな普段のサーキットとは違う雰囲気の中でモナコGPはスタートした。

午前中のサポートイベントでコース中にはオイルが撒き散らされ、そこに石灰が撒かれたことで、コース上はとてもダーティな状態となっていた。そのため、スタート直後はどのドライバーも滑る路面に手を焼いていたようだった。ダ・マッタ、パニスも例外ではなく。特に1回だけのピットストップ作戦を選んで、燃料搭載量の多かったパニスは、ただでさえ不安定な状況の中、スタート直後の混戦で後ろにいたフレンツェンとミナルディの2台に先行されてしまう。しかし、フレンツェンはパニスを抜いた直後にクラッシュ。いきなり2周目にセーフティカーがコースに入る。

1周目の順位はダ・マッタがスタートポジションどおりの10番手、パニスはひとつポジションを落として18番手だった。壊れたザウバーのクルマはすぐに撤去され、4周目にはセーフティカーがピットに入り、レースは再開された。

狭く、抜きどころのない公道コースのためにオーバーテイクもしにくいということもあり、しばらくはダ・マッタもパニスもそのポジションのまま周回を重ねた。ミナルディの2台に先行を許してしまったパニスは、その後ペースを上げようにもその2台に行く手を阻まれ、ペースを上げられないでいた。

「スタートは良かったのに、1周を終えて戻ってきたら、パニスはミナルディの後ろにいた。あれは痛かったですね。多少、ペースが違っても抜けないコースですからね」と高橋GM。結局、このためにパニスは最後まで一番後ろでレースをすることになってしまう。

「パニスに1回ストップ作戦を選んだ時点で、こうなることも予想していました。他のチームがすべて2回ストップを選んでいたように、2回ストップの方が良いということは、レース前のシミュレーションでもわかっていました。でも、レースがもし多少でも荒れたら、1回ストップの可能性も出てくる。例えば、雨が降ったり、セーフティカーが何回も出るような展開になったりしたら。ピットストップを我慢して走っていれば、他のクルマの前に出られる可能性もある。それで賭けに出たのです。普通にいっても、今回は勝てる状態ではなかったですからね」と高橋GM。しかし、その賭けは外れ、パニスは13位で完走こそ果たしたが、4周遅れという屈辱的なレースを強いられることになってしまった。

一方、正攻法の2回ストップ作戦を選択したダ・マッタは、レース序盤の10位からはじまり、安定した走行を見せていたが、14周目に9位に上がるとその後はポジションを上げることはできず、ポイントまであと一歩という9位完走を果たした。

「ダ・マッタは今回、予選でも決勝でも今のこのクルマのポテンシャルを最大に引き出してくれていたと思います。初めてのコースにもよく頑張ってくれたと、彼の仕事には満足しています」と高橋GM。

木曜日のフリー走行では最下位という滑り出しも、終わってみれば、ダ・マッタがトップ4チームの次の9位完走、そして今シーズン2回目の2台完走という結果を残せたパナソニック・トヨタ・レーシング。しかし、もちろんこの結果には満足していない。

「まだ、我々のクルマを十分理解できていないというのが、今の現状だと思います。バルセロナでのレースを見ても、ベースのポテンシャルはある。そのポテンシャルを最大限に引き出すことができていない。特にデータのないサーキットでは、その傾向が如実に出てしまう。去年と今年でクルマが大きく変わったことで、去年のデータをうまく活かせないということもありますが……」と、今回の反省点を高橋GMは分析する。

「次のカナダでは、新しい空力とエンジンを投入する予定です。エンジンはバルセロナで燃費を向上させたものを投入しましたが、今回のものはそれにパワー、トルク特性を向上させたものです。とにかく、今は速さを追求しないと」と、次のカナダに向けてはモンツァとシルバーストンでテストを行い、新たなエンジンやパーツを投入する予定だという。ここ2戦で悩み抜いた経験がカナダGPにどう反映されるか、楽しみにして待つことにしよう。