第8戦 カナダGP 2003
2003年06月14日(土)
高橋敬三GMに聞く:予選
フリープラクティスで、コースオフにより2台ともクルマにダメージを負うも
今シーズン初となるパニス、ダ・マッタ揃っての予選トップ10入り
パナソニック・トヨタ・レーシングは、シーズンの折り返しを迎える第8戦カナダGPに、“バージョン3”と呼ぶ進化したエンジンを持ち込んだ。第5戦スペインGPに投入した“バージョン2”は、燃費を大きく改善したエンジンだったが、今度はパワー。しかも、燃費の良さを損なわずに、さらなるパワーを引き出すことに成功したという。
「パワーアップしたからといって、燃費は犠牲にしていません。あっちを上げたからこっちは下がるではおもしろくない」と高橋GM。「前回はフリクションロスを減らすなどして燃費を向上させましたが、今回は“空気をもっと取り入れる”ことなどでパワーを上げています。たとえば吸気ポート回りの形状に手を加えていますが、ポートを変えたら燃焼が悪くならないようにインジェクターの配置を見直す必要が出てきたり、排気管の長さを考える必要があるなど、パッケージで考えないと良くなりません」
エンジンだけではない。フロントとリアのウイングも一新して臨んでいる。
「カナダ専用に開発したものです。これまでの問題をリファインし、事前のモンツァでテスト。いい結果が出たので持ち込みました。なるべくダウンフォースを削って、最高速を出すのが狙いです。スピードが出るセットアップにしておけば、抜けないサーキットではありません。ここはブレーキにも厳しいサーキットですが、この点についてもモンツァで確認しました。ハードブレーキング時の安定性向上を図っています。また、最終コーナーなど、縁石の乗り上げが昨年来の課題でしたが、このあたりも確認してきました」
金曜日午前中のフリー走行が行われている途中で雨が降り始めた。ポツポツといった感じで、路面を湿らす程度だったが、プログラムは大幅な予定変更を余儀なくされる。セッションが終わる頃には水しぶきが上がり、トヨタの2台もウエットタイヤに履き替えた。
「前日の予報では基本的にドライで、雨の確率は40%くらいでした。直前の天気予報で、しばらくして雨が降るという情報が入りました。通常は、最初にチェック走行を1周するとピットに戻すのですが、時間が惜しいのでそのままアタックラップをやらせました。こうした状況の変化にも十分対応できたと思います。結局、ドライでのアタックラップは1~2周しかできませんでしたが、課題にしていた縁石の乗り上げはうまくいっているな、という感触は得られました。エンジンパワーや最高速、ブレーキの安定性についても確認できました。ですから、ちょっと明るいですね」
1回目の予選はヘビーウエット。13番目にコースインしたダ・マッタは16番手、18番目にタイムアタックを行ったパニスは10番手を記録する。「状況はクリスチアーノの方が不利でしたね。水がすごくてアンダーステアがひどいという話をしていました。オリビエはその話を聞いて、フロントウイングを立てたり、 空気圧を調整することができました。クリスチアーノの情報を利用できたぶんだけ有利でした。明日の朝まで雨が残るという予報ですが、路面がどんどん乾いてくれば、そんなに混乱しないでドライのセットアップを決められると思っています。それまでにプライムでいくのか、オプションでいくのか、タイヤをどれだけ評価できるかでしょう」
小降りになったものの、土曜日午前中のフリープラクティスも雨。当然路面はウエットで、今シーズン途中から導入されたエクストリーム・ウェザー・タイヤの使用が認められた。
8時にセッション開始を告げるグリーンライトが点灯すると、ダ・マッタ、パニスの両ドライバーは先を争うようにコースイン。セッション終了間際にパニスが最終コーナーでスピン。その横をアタックラップに入るダ・マッタが通り抜けて行った。前半のセッションはパニスが18番手。ダ・マッタは最後のアタックラップでタイムを上げ、20番手から14番手にポジションを上げた。
「スピンし、ウォールにヒットした影響でサスペンションがおかしくなったんです。チェックして異常がなかったのでそのまま出したんですが、オリビエから 『おかしい』というコメントが上がってきたので、入念に調べました。調べた結果、左フロントのアップライトに亀裂が入っていました」
30分のインターバルを置いてセッション後半がスタート。真っ先にコースに飛び出したのはダ・マッタだったが、7分後にアクシデント。ターン7で姿勢を乱し、ウォールに激しくクラッシュ。赤旗中断の原因を作った。順位はダ・マッタ19番手、パニス20番手となる。
「ダ・マッタは滑ってスピン。フロント右側のサスペンションがもぎとれるほどでしたので、予選はTカーで出ることになりました。ウォームアップは問題ありませんでした。ドライでまともに走れたのは金曜日の最初の15分くらいと、ウォームアップだけでした」
少ない時間で可能な限りの調整を行ったパナソニック・トヨタ・レーシングは、午後1時から始まった予選に臨んだ。パニス7番手、ダ・マッタ9番手と2台がトップ10圏内を獲得する。それでも、高橋GMは「まあまあ」とコメントした。
「もうちょっといきたかったです。去年はいろいろ苦労したサーキットなんですが、基本的には我々が得意とするサーキットのひとつだという認識がありました。エンジンパワーで引っ張るサーキットですし、空力的にもここを目指してフロントとリアのウイングを改良してきました。ドライでしっかり走れれば、 もっと上にいけるかなと期待していました。ですが、短時間の走りでこれだけのタイムと順位を獲得できたので、良かったと思います。いずれにしても、2台でポイントを獲らないといけないポジションですね」
これまで不運が続いたパニスが、ここでその流れを変えることができるのか。ダブル入賞も狙える好位置を獲得しただけに、決勝に向けて期待は大きくふくらむ。
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