第8戦 カナダGP 2003

2003年06月15日(日)

高橋敬三GMに聞く:決勝

惜しくもダブル入賞ならず
しかし、パニスにとって今季初
トヨタにとっては2度目のポイント獲得

高橋敬三GMによれば「2台でポイントを獲らないといけないポジション」から、パニスとダ・マッタはレースをスタートした。7番手グリッドのパニスはポジションを維持したまま、9番手のダ・マッタはひとつポジションを上げてオープニングラップを終える。ポイント圏内でトヨタの2台がランデブー走行を始めた。

70周のレースを三等分すれば、23周から24周になる。パニスが15周目、ダ・マッタが16周目に1回目のピットストップを行ったのは、ライバル勢よりも早めだった。

「ピットストップのタイミングは予定どおりです。燃料はほかのチームより少なめだったということですね。もちろん、レースが始まってからわかったことです。後から考えて、『もうちょっと入れても良かった』とは思いますが、結果には影響なかったと思います」

ピットスタートをしたライコネン(マクラーレン)が急激な追い上げを見せてトップ集団に入り込んだため、レースが後半に突入した36周目の時点で、パニス8番手、ダ・マッタ9番手のランデブー走行を続ける。2回目のピットストップもパニスから始まった。42周目にパニスが9・2秒の静止時間でピットストップを終え、コースに復帰する。

その直後にアクシデント。43周目、前を走るバリチェロ(フェラーリ)の車体から左側のバージボードが脱落。直後を走っていたダ・マッタは避けきれず、 左タイヤでバージボードを踏み、破片が周囲に飛び散る。ダ・マッタは44周目に2回目のピットイン。9・5秒の静止時間でコースに戻った。

「レース中は映像、タイミングモニター、テレメトリーデータの表示画面を交互に見ているのですが、クリスチアーノがバージボードを踏んだ瞬間は見ていませんでした。ピットストップ後にタイヤを見ましたが、異常はありませんでしたね」

ダ・マッタが2度目のピットストップを終えた44周目からパニスとのランデブー走行が再構築された。だが、ふたりのポジションは逆転。ダ・マッタが8番手を走り、パニスが9番手で続く。

「オリビエは3セット目のタイヤのバランスが悪く、プッシュできないという話でした。ラップタイムのペースを上げることができなかったので、ピットス トップの間にふたりの順位が逆転したんです」

65周目、8番手走行中のダ・マッタがターン2のグラベルに突然クルマを止め、コクピットから降りた。自動的にパニスが8番手に繰り上がり、そのまま フィニッシュラインを駆け抜ける。フェンスによじ登ったクルーが、パニスの今シーズン初ポイント獲得を祝福した。

「クリスチアーノは『突然おかしくなった』と言ってクルマを止めました。サスペンションの不具合だと思われます。まだ車両保管からクルマが戻ってこないので、戻り次第調べるつもりです」

レース終了直後の高橋GMは、チームのホスピタリティとガレージを何度も行き来して、ダ・マッタの車両がガレージに戻ってきたかどうかを確認してい た。2台がそろってポイントを獲ることはできなかったが、パニスが8位に入り、貴重な1ポイントを手に入れることができた。

「オリビエは『まあ、一歩一歩かな』と言っていました。今年は厳しいですね。信頼性だけを頼りに生き残っても、結果はついてきません。ポイントを獲るには“速さ”が必要です。上位と同じペースで走らないと、相手を追い抜くことはできない。そうでなければ、予選と同じままの順位で走り、そのままの順位で ゴールするだけです。今年は昨年よりもずっとハイレベルなレースになっています」

速さを得るにはどうすればいいのか。ほかのチームが開発を進めていくなかで、トヨタはそれ以上のスピードで開発を行い、急速にレベルアップを果たす必要がある。

「次のニュルブルクリンク戦でビッグステップアップの予定はありませんが、第11戦のイギリスGPと第14戦のイタリアGP、それに最終戦の鈴鹿を目安に大きなパッケージ上の進化を予定しています。それを効果のあるものにしていかないといけません」

第9戦ヨーロッパGPに向けて、パナソニック・トヨタ・レーシングはへレスとポールリカールでテストを行う。へレスでは第10戦フランスGPや第13戦ハンガリーGPなど、暑い夏に対処するためのテスト。ポールリカールではヨーロッパGPに向けたテストプログラムを消化する予定だ。

「今回のレースはセットアップの時間がない状況で、予選、レースを迎えなければならなかったのですが、初期のセットアップができたのは良かった点にあげられます。事前のモンツァ・テストでカナダに向けたトライをして、いろんなデータを収集し、それが生かされました。昨年のレースでは2台がリタイアしましたが、今年はきちんとレースディスタンスを走ったのが大きかったです。来年のためのデータが収集できましたから」

パナソニック・トヨタ・レーシングはすでに来年用のF1カーの開発に着手。この時期はTF103の改良作業を行うかたわら、来年に向けての準備も行わなければならず、多忙を極める。だが、トヨタはいい流れを保ったまま、ヨーロッパとフランスの2週連続GP開催を迎えられそうだ。