第9戦 ヨーロッパGP 2003
2003年06月29日(日)
高橋敬三GMに聞く:ヨーロッパGP決勝
予選での好パフォーマンスも、決勝では2台ともリタイアに
見えてきた光明とこの悔しさを次の戦いへとつなげたい
天気予報どおり、日曜日は朝から晴れていた。予選で好パフォーマンスを見せたパナソニック・トヨタ・レーシングは、誰もがその天気のように晴れ晴れとした表情で、スタート時間を待っていた。「やっぱり、ドライでレースしたいですね」と、前日から語っていた高橋GMの思いどおりの状況でのレースとなった。
スタートは午後2時。ふたりのドライバーはまずまずのスタートを切ったが、パニスの後ろにいたクルサードのスタートはそれ以上に良く、1コーナーまでに前に出られてしまう。しかし、パニスは混乱する1コーナーでうまくクルマをアウト側に寄せて、アウトから一気に加速、クルサードとアロンソをかわし、さらにルノーのトゥルーリと並びかけようとしたところで、そのトゥルーリが2コーナーでパニスの進路を塞ぎ、この間にアロンソが前に出る。結局、1周目の順位はパニス8位、ダ・マッタ10位だった。
レース序盤はトヨタの2台はなかなかペースが上がらない。予選で3周しかしていないタイヤのためにグレーニング(タイヤのささくれ磨耗)が起こってしまい、スクラブ(走りながらタイヤの表面をきれいに面取りすること)するまでの数周、タイムが上がらなかったのだ。6周目くらいから、パニスのタイムは上がりはじめ、タイムも1分34秒から33秒半ばくらいまでペースアップしていた。前のクルマとの差も一時は4秒近く離れていたが、すぐに1秒ほどまで追い上げる。パニスの後ろにはクルサードをはさんでダ・マッタがいたが、こちらも10周前後くらいになるとペースが上がってきた。
ペースも上がり、前との差も縮まってきた11周目、1コーナーでパニスがまさかのスピン。それまで、ルノーやマクラーレンと互角の走りを見せただけに、誰もがまさかと思えるアクシデントだった。
スピンで12位まで大幅に順位を落としてしまったパニスは、15周目に1回目のルーティンのピットインをする。この頃には3回ストップの戦略をとっていたジョーダン、そしてBARが入ってきていたが、2回ストップの戦略をとったチームの中ではトヨタはいち早いピットインとなっていた。
「実は最初の予定では14周の予定だったんですが、パニスのドライビングで非常に燃費が良かったので、1周伸ばしました」と高橋GM。
16周目にはダ・マッタもピットに入ってきた。ダ・マッタはパニスがスピンで順位を落としたため、9位に上がっていた。ピットイン後の順位はダ・マッタ9位、パニスは11位。パニスはその後すぐに10位に上がっていた。「レース中のラップタイムは良かった」と高橋GMが言うように、一度順位を落としたパニスだったが、すぐに順位を回復していく。
24周目、ダ・マッタが突然ピットイン。実はその2周前にシケインでスピンし、ノーズを壊してしまっていたのだった。急遽、チームは3回ストップとすることにし、ノーズ交換のほかに、給油、タイヤ交換を行う。この後、すぐにトップのライコネンがリタイアし、順位はパニス9位、ダ・マッタ14位となる。
パニスは入賞圏内まであと一歩。しかも、8位のバトンは目の前にいた。バトンのペースはパニスよりも1、2秒も遅く、前を塞がれている状態だった。しかし、この状態にしびれを切らしたのかのように、パニスは38周目にまたもやスピン。それも、その場所は1回目と同じ1コーナーだった。ブレーキングで白煙を上げながら、コースアウトしそうになるパニス。これで、パニスはクルマを止めてしまい、リタイアとなった。
残るダ・マッタは序盤の順位よりも大きく遅れて、13位あたりを走っていた。シューマッハーとモントーヤの接触があった直後の44周目、ダ・マッタが3回目のピットイン。最後の給油を終え、タイヤを換えて出ていったダ・マッタだったが、残りあとわずかというところで、エンジンから白煙を吐いてクルマを止めてしまった。原因は油圧低下によるエンジントラブルだった。
「油圧が下がってしまったため、油温が上がって、エンジンが壊れたようです。エンジンのトラブルというよりも、もしかするとバルブか何かが壊れて、オイルが回らなくなってしまって壊れたのかもしれません。これからすぐにチェックします」とレース後、高橋GMはそう言い残して、ピットに戻ってきたクルマに急いで駆け寄っていった。その高橋GMにパニスが大声で「アップライトが壊れていた。たぶん、そのせいでスピンしたんだ」と大声で伝えていた。
予選までの好パフォーマンス。しかし、終わってみれば、2台ともトラブルによるリタイア。レース後、トヨタのピットでは、緊急ミーティングが行われていた。レース前とは一転、緊張感の漂うピットで、高橋GMは悔しそうに「パフォーマンスは上がったけれども、結果には結びつかなかった。残念です」と周りを取り囲む報道陣に語るのが精いっぱいだった。
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