第11戦 イギリスGP 2003
2003年07月19日(土)
高橋敬三GMに聞く:予選
ダ・マッタが自己最高の予選6番手を獲得。
フリー走行から好調だったパニスは13番手に沈む
「第6戦オーストリア、第7戦モナコでは初期のセットアップをはずして、その後苦労しましたが、ここ3戦そういうことがなくなりました。クルマのこともタイヤのことも理解したので、あとはポテンシャルを上げれば、レースでトップ集団に入れると感じていました」
高橋敬三ゼネラルマネージャーは、2003年シーズン中盤戦での戦いをこう振り返る。“ポテンシャルを上げる”大きな策となるのが、第11戦イギリスGPに投入した新しい空力パッケージだ。今シーズン3度目となる入賞を果たした前戦フランスGPのあと、スペイン・バルセロナで行われた合同テストで、パナソニック・トヨタ・レーシングは、精力的にテストプログラムを消化した。
取り組んだ課題は大きく分けて3つ。ひとつは空力パッケージ。もうひとつはタイヤ。そして、最後にエンジンである。効果を確認した新しい空力パッケージと、これまでウイリアムズが使ってきた新しい構造のミシュランタイヤは、イギリスGPから使えるようにセットアップを調整。満を持して投入してきた。さらなるパワーアップを図ったエンジンは、次戦ドイツGPへの投入が決まっている。
「空力パッケージは、フロントウイング、バージボード、エンジンカバー、リヤウイングを変更しています。ダウンフォースが極力必要な雨のコンディションになれば、フルパッケージで使用するでしょうし、晴れになれば一部を投入するにとどまるでしょう。路面コンディションをにらみながら決めていくことになると思います」
外見上、変更部分が最もよく確認できるのはエンジンカウルだ。サイドポンツーン後半の絞り込みが強くなった。バージボードは上端部が削られ、スリムになった。金曜日午前中のフリー走行では、パニスが新しいフロントウイング、バージボード、エンジンカウルを装着して走行。ダ・マッタが新しいフロントウイングとエンジンカウルを取り付けて走った。ドライ路面だったため、リアウイングを新しくする必要はない、と判断された。
「タイヤは、前回までウイリアムズが使っていた新しい構造を持つ仕様をテストしました。単純に新しい構造のタイヤを古いのと入れ替えても、クルマが古い方に合っているので、効果は出ません。それをバルセロナで調整し、新しい構造を生かせるようにしたのです」
曇り空の下で行われた金曜日午前中のフリー走行では、パニスが1分20秒693で5番手、ダ・マッタは1分21秒027で10番手につける。午後2時に始まる予選の直前に霧雨が降り始め、高橋GMも不安そうに空を見上げる。
幸い、雨は路面を濡らすほどには降らず、ドライコンディションのまま予選は始まった。14番目にタイムアタックを行ったダ・マッタが1分20秒765で10番手、続いてタイムアタックを行ったパニスが1分19秒959の好タイムを記録し、5番手で1回目の予選を終える。パニスはあと0・2秒タイムを短縮すれば3番手、0・211秒短縮すれば、2番手を手に入れることができた。
「ジャガーの上に行って、ルノーの2台に割って入りました。ようやく速さを取り戻した。トップとの差を縮めることはできたな、と実感しています。空力を頑張ったのでタイムは上がるのがわかっていましたが、ほかのチームが性能を上げてくるのもまた、わかっていました。相対差がわかってほっとしています。それでも、まだトップとは0・5秒の差がありますから、この差をいかに縮めるかですね」
「あと0・2秒で3番手で、0・211秒で2番手かぁ」と、トップ3に食い込めなかったことを悔やむ表情を見せた。「今回の性能向上については、やはり空力の効果が大きいです。ダ・マッタはセクター1のくねくねしたセクションが攻め切れていないようでした。ま、彼は慎重に行くタイプですから、明日になれば、そこそこの走りになるでしょう。明日は少なくとも今日と同じポジションか、それ以上を狙いたいですね」
2回目の予選を控えた土曜日午前中のフリー走行。トヨタの2台は当初アンダーステアに悩み、パニス13番手、ダ・マッタ14番手で45分のセッションを終える。30分のインターバルを置いた45分のセッションでは午前中とは反対にオーバーステアに悩むが、調整を施した結果、最適なセットアップを見つける。最後にニュータイヤに履き替えて仕上げの走行を行い、パニス5番手、ダ・マッタ10番手でセッションを終えた。順調な仕上がりぶりに見えたが、ウォームアップ走行でハプニングが発生する。
「ダ・マッタのニューマチック・システムにエア漏れが発生したので、Tカーに乗り換えることにしました。エンジンの載せ替え作業は走行開始までに間に合ったのですが、大事をとりました。予選の1周の走行なら問題ないと思いますが、レースが不安ですから。結果的にはTカーに乗り換えて正解だったと思います。ブレーキのフィーリングがTカーの方が良かったようですから」
ダ・マッタは逆境を跳ね返して6番手を記録。カナダGPでの9番手を塗り替えて、自己最高位を更新した。一方、フリー走行まで好調だったパニスは13番手に沈む。
「ん~、わからないんですよね。確かに、クリスチアーノとオリビエのときでは風向きが変わったのですが、それが決定的な原因ではないと思います。(最終セクターの)ターン15で極端にオーバーステアが発生したということで、そこだけで1秒タイムをロスしています。データを確認したのですが、はっきりとした異常が見つかっていないのでわかりません。順調にいけば、5番手にはなれたと思います」
パニスが突如ペースを乱した点について、高橋GMは「予選だけの現象だと思う」と不安を一掃した。それよりも、期待どおりのパフォーマンスを発揮したことに満足げな表情を見せる。
「明日はガンガン行きたいですね。今日も、パフォーマンスが上がった実感はあります。トップグループと同じスピードでくっついて、抜いて、はい上がって、2台そろってポイントを獲りたいですね。クリスチアーノには十分チャンスがあると思います。オリビエは最初でどれだけ上がれるかですね」
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