第11戦 イギリスGP 2003
2003年07月20日(日)
高橋敬三GMに聞く:決勝
トヨタF1の歴史に新たな一歩。レースで初めてトップを走行
ダ・マッタ7位入賞で、チームは2戦連続のポイント獲得
「昨日の天気は晴れ時々曇りでしたが、今日の天気予報は曇り時々晴れ、雨はないということです。タイヤのことを考えると、我々にとっては涼しくなってくれた方が有利ですね。ま、ブリヂストン・ユーザーにとっても涼しい条件の方がいいでしょうから、我々だけが有利になるわけじゃありませんが」
第11戦イギリスGPの決勝レースを控えたパナソニック・トヨタ・レーシングのホスピタリティで、高橋敬三ゼネラルマネージャーは空を見上げるようにして言った。冷たく強い風が雲の塊を吹き流していたが、雨を降らせるような性質の雲はついにやってこず、気温21度、路面温度30度のドライコンディションでレースはスタートした。
「ローンチコントロールは、スタートの一瞬の動きが大切なんです」という高橋GMの解説から推し量るに、ダ・マッタがスタートで2つポジションを落とし、8番手でオープニングラップを終えたことを考えれば、まだまだ改善の余地があるということだろう。一方、13番手スタートのパニスはスターティングポジションをキープしたまま、上位進出の機会をうかがっていた。
ダ・マッタの後ろを走っていたクルサード(マクラーレン)のヘッドレストが走行中に外れ、粉々になった破片が1コーナーに落ちた。これらを排除するためにレース開始早々、6周目にセーフティカーが導入される。トヨタは動いた。2台のトヨタが一斉にピットに向かう。
「セーフティカーが出たらピットに入れることは、レース前の戦略会議ですでに決めてありました。これはどこのレースでもやっていることで、計算でいろいろやってみて、どの周までにセーフティカーが出たらピットに入れる、あるいは入れない、ということを決めておくんです」
チームは、60周で行われる決勝レースを、パニス、ダ・マッタとも3回のピットストップで乗り切る作戦を立てていた。均等に割ったとして1回目のピットストップは15周目になる。早めのピットストップを行ったことで、その後のピット戦略をどう組み立てるのかに注目が集まった。
「セーフティカーが入ったときに、予定より早めのピットストップをします。すると、その次に何周目にピットに入るのかについても、事前に決まっています。(6周目のピットストップの際は)オリビエとクリスチアーノが同時に入ってきた。2台が少し離れていたから助かりました。タイムのロスはなかったのですが、オリビエのタイヤを準備する時間がなかった。ですから、オリビエは給油だけしてコースに送り出しました。そのせいで、2スティント目がつらくなった」
11周目、コースに人が入り込んだため、この日2回目のセーフティカーが入る。このタイミングで、トヨタの2台より上位を走る車両がすべてピットストップを行った。そのため、13周目からトヨタの1-2態勢が築かれることになる。ダ・マッタとパニスのランデブー走行は16周目まで続くが、1回目のピットストップでタイヤを履き替えることができなかったパニスがライコネン(マクラーレン)に抜かれ、3番手を走行することに。
17周目以降はトヨタの1-3番手走行になったが、30周目にダ・マッタが2回目のピットストップを行うまで、トヨタがレースを支配した。
「まだ序盤でしたから」と、高橋GMは冷静に歴史的な瞬間を振り返った。「それよりも、2回目のピットストップを行った後にどの順位で復帰できるかという心配の方が先でした。(16周目の)再スタートは強いんですよね、ダ・マッタは。CARTで慣れてますから。セーフティカーがピットに戻る瞬間に、ちょっとペースを抑え気味にして、ぎゅーっと引き離した。パニスとの差が一気に広がりましたよね。あれはCARTでの経験でしょう」
ダ・マッタは30周目に2回目のピットストップを行うと、パニスは31周目にピットに入る。44周目にダ・マッタ、45周目にパニスが3回目のピットストップを終えると、ポジションはダ・マッタが7番手、パニスが13番手に落ち着いた。両ドライバーとも、リアタイヤの摩耗でペースを上げられずに苦しんでいたが、後続の追い上げをしのぎ、ダ・マッタが7位、パニスが11位でフィニッシュする。2戦連続のポイント獲得である。
「2台そろってポイント獲得の目標を掲げましたが、現実は厳しい。他車がつぶれなくなりました。ですが、今回のレースはプラスの面がいろいろありました。トップチームとそれほど差がない状態で走れたのもそのひとつです。トップチームと互角に戦ってポイントが獲れたのは次につながります。ポイントも連続して獲れるようになってきた。次のドイツGPではエンジンも新しくする。どんどんやっていきます」。着実に速くなりつつあるトヨタ。シーズン後半戦が楽しみになってきた。
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