第12戦 ドイツGP 2003

2003年08月02日(土)

高橋敬三GMに聞く:予選

新スペックのバージョン4エンジン投入で
今シーズン3度目となる2台揃っての予選トップ10入り

真夏のドイツGPは30度を越す暑さの中で毎年行われる。今年も天気予報では日曜日に向けて気温が上がるとのこと。昨年、大きくコース改修を行ったホッケンハイムリンクはそれまでの長い直線をシケインで繋ぐ特徴的な高速コースから、ストレートあり、テクニカルなコーナーありのレイアウトとなった。

「基本的には路面グリップが低く、旧コースをそのまま使っているスタジアムから第1コーナーまでは非常にバンピーです。長いストレート直後のヘアピンは抜きどころでもあります。エンジンパワーも要求されるサーキットですね」
と、新しいホッケンハイムのコースについて高橋敬三ゼネラルマネージャーはその特徴を説明する。

ニュルブルクリンクほどではないが、このホッケンハイムもTMGの本拠地ケルンから車で2時間ほどと比較的近く、地元と言っていいグランプリ。パナソニック・トヨタ・レーシングはこのドイツGPに向けて、「回転を上げて、パワーアップを図った新しいエンジンです(高橋GM)」と、バージョン4と呼ばれる新スペックのエンジンを投入してきた。

その甲斐あってか、金曜日の最初のフリー走行からクリスチアーノ・ダ・マッタが6番手に入る健闘を見せる。ダ・マッタはホッケンハイムの新コースを走るのはまったくの初めて。「もう少しライン取りをいろいろ試したい」と言いながらも、他のドライバーに遜色ない走りを見せた。

「セッティング的には、朝は路面のグリップも低く、アンダーステア傾向でした。そのためタイヤもグレーニングが出てしまっていましたが、あまり問題にはしていません」と高橋GM。

午後の予選は、路面の状況もまだあまりいい状態ではなかったため、先にコースインしたダ・マッタは直前でフロントのウイングを立てて出て行った。しかし、これが裏目に。オーバーステアになってしまい15番手と下位に沈んでしまう。それを見て、後から走ったオリビエ・パニスはセッティングを合わせていったが、ターン6で多少タイムロスしてしまい10番手だった。しかし、パニスはクルマのバランスについては「非常に良い」とご満悦だった。

「オリビエは立ち上がりでロスしたようで、もう少しトラクションが必要だったかもしれない。実は、ここにはエンジンの他に新しいリヤウイングも持ってきているのですが、それを試しても良かったかも。そうすれば、予選ではもう0.2秒くらいは上げられたと思う。順位も6番手くらいにはなったはず。これだけ暑いとタイヤ的に厳しいけど、ミシュランは暑い方が有利です。今日は他のチームを見るとブリスターが出ていたところもあった。うちは出ていませんでしたが、明日はもっと気温が上がるようなので、タイヤの温度を下げるためのセットアップをしないといけないかもしれませんね」

土曜日も天気は良かった。それでも午前中は比較的涼しく、路面のグリップが低かったためグレーニングが出ていた。そこで新しいリヤウイングを試したが、ダウンフォースは増えたものの、最高速が落ちてしまうため、レースでは旧型を使うこととした。午前中パニスのクルマのスロットルに油圧系のトラブルが出て、セッション開始早々は走れなかったが、すぐに問題は解決された。
午後の予選が始まる頃には、気温は32度、路面温度は47度まで上がっていた。それでもダ・マッタ、パニスは好タイムをマークする。ダ・マッタは最終コーナーで片輪をダートに落としタイムをロスしたが、最終的に9番手に入る。パニスは7番手と、今年3回目の2台揃ってのトップ10入りをした。

「気温が上がり、路面温度もアタックする頃には50度くらいまで上がっていたので、セクター2のあたりではタイヤ的にグリップが厳しく、アンダーステアだったとオリビエは言ってました。順位的には2台ともシングルで、レースで上位と争える権利がある位置ですから満足してますが、タイム的にはあと0.2秒はいけると思ってました。そうすればシューマッハーとライコネンは抜けたのに残念ですね。明日は、もっと気温が上がるという予報なのでサバイバルレースになるでしょう。うちとしては暑い方がいいですね、タイヤ的にも、信頼性の面でも自信がありますから。ブリスター対策も今日いろいろと試しましたので、それが明日に生きると思います。まだ実現していない2台揃ってポイントゲットしたいですね」

予選後の記者会見で高橋GMは非常に明るい表情でこう語った。その言葉どおりチームの雰囲気も明るい。明日はトヨタ自動車の張富士夫社長も観戦に訪れるとあって、チームの志気もいっそう高まっていた。