第12戦 ドイツGP 2003

2003年08月03日(日)

高橋敬三GMに聞く:決勝

猛暑のサバイバルレースを乗り切り
初めてとなるパニス、ダ・マッタ2台揃っての入賞

日曜日は、予報どおりに週末一番の暑さとなった。レースがスタートする午後2時には気温35度、路面温度は50度まで上昇。しかし、パナソニック・トヨタ・レーシングにとって、この暑さは有利に働いた。前日、高橋敬三ゼネラルマネージャーは「暑くなれば、我々のチャンスは広がる」と語っていた。

暑さはレーシングカーにとっては大敵だ。エンジンの油温、水温の管理が厳しくなり、ブローアップの原因となりやすい。ドライバーにとっても脱水症状などの問題が出てくる。そして、一番の問題はタイヤだ。タイヤのゴムは暑さに悲鳴をあげ、タイヤの表面が取れてしまうブリスターや、磨耗状態が悪くなるグレーニングなどが起きやすくなるからだ。

しかし、前日のテストでパナソニック・トヨタ・レーシングの2台はタイヤの状態に問題がないことが確認されていた。他のチームがブリスターに悩むなか、2台のタイヤは、走った後でもタイヤの表面はきれいな状態だった。さらに決勝に向けて、土曜日にレース用のタイヤを1周だけ走り、タイヤの表面を皮むきするという準備も行っていた。これは、新品のタイヤを一度走って熱入れさせておいてた方が、ブリスターが出にくいからだ。決勝に向けての準備は全て完璧に整えられていた。

パニスとダ・マッタの2台は好スタートを見せ、ミハエル・シューマッハーやキミ・ライコネンのすぐ背後に迫りながら1コーナーを目指す。しかし、1コーナーで、ライコネンが、ルーベンス・バリチェロを抜こうと並んだところ、前にいたラルフ・シューマッハーがクルマをバリチェロの方に寄せたことで3台が接触。パニスの直前で起こったアクシデントに、あわやという場面だったが、間一髪でうまくトヨタの2台はその混乱を抜けていった。

さらに後方でもアクシデントがあり、1周目で5台のクルマがリタイヤとなった。トヨタの2台はパニス7位、ダ・マッタ8位で1周目を終えたが、このアクシデントのため、セーフティカーが出された。これにより、スロー走行で2周を走ったため、燃費の計算が変わってきた。

今回のトヨタは3回ストップ作戦を取っていた。ここホッケンハイムはピットストップでのロスタイムが少ないからだ。最初のピットストップを13周目に考えていたトヨタだったが、このセーフティカーの投入で予定より2周伸ばし、15周とすることにした。パニス、ダ・マッタは3回ストップ作戦の燃料の軽さを武器に追い上げる。前にはジャガーのマーク・ウエーバーとマクラーレンのデビッド・クルサードがいた。ともに2回ストップのためにラップタイムは遅かった。すぐに追いつき、追い抜く隙をうかがうが、その2台も競り合っているためなかなか抜けなかった。

「前半、ウエーバーたちに抑えられたのが痛かったですね」とレース後の高橋GM。この時に、ペースを上げられずに前との差も開いてしまったからだ。

パニスが15周目にルーティンのピットインをする。ダ・マッタはパニスがいなくなると、ウェーバーを激しく攻め立て、17周目のヘアピンでかわし、順位を上げたところでピットインしてきた。パニスもダ・マッタも1回目のピットインを6秒台という素早いピット作業で終えた。そのため、1回目のピットを終えた後の順位はパニス6位、ダ・マッタ7位とひとつポジションを上げていた。前に遅いウエーバーがいなくなったことで、ラップタイムも序盤の1分18秒台から16~17秒台前半まで上がっていた。

「今回は調子もいいし、2台揃ってのポイントゲットを狙いたいですね」と高橋GMがレース前に言っていたことが、現実となっていた。パニスも、ダ・マッタも暑さのなか順調に周回を重ねていた。「レース中は油温も水温もブレーキもなにも問題ありませんでした」と高橋GM。

レース中盤、トヨタの2台はさらにペースを上げた。34周目、パニスは1分15秒883のレース中の自己ベストタイムをマークする。この時点では、トップを行くモントーヤも15秒台のタイムだったから、ほとんど遜色ないペースで周回を重ねていた。

後半はコンスタントに1分17秒台前半のタイムで、前を行くルノーや、シューマッハーよりも1秒も速いタイムだった。そしてトヨタにとって最後のチャンスが訪れた。63周目、2位に上がったばかりのミハエル・シューマッハーの左リアタイヤがバースト。スロー走行でピットに戻ったシューマッハーをパニスとダ・マッタが抜いていった。これでパニス5位、ダ・マッタ6位。そして、このまま2台は見事チェッカーを受けた。

「すべてが順調でした。信頼性も、タイヤも。戦略的にも今回は3回ストップの方が良かったと思います。レース序盤に引っかからなければ、もっと上にいけたでしょうね。でも、いままで目標としていた2台揃ってのポイントゲットができたことは非常にうれしいです。ひとつの目標を達成できたという感じですね。ただ、トップのウイリアムズのモントーヤは速いですから、まだまだクルマを良くしていかないといけないでしょう。これから4戦、空力は毎回ニューパーツを開発するつもりです」とレース後、思った以上の成績に高橋GMの表情も明るかった。

今回ポイントを7点取り、チームのシリーズランキング9位から6位へと一気に上がった。そして5位のBARとの差も1点まで縮まった。トヨタはその速さでも、ランキングもトップ4を脅かす存在となりつつある。