第13戦 ハンガリーGP 2003

2003年08月23日(土)

高橋敬三GMに聞く:予選

パニスが今季9度目となる予選トップ10入り
初めてのコースに苦しんだダ・マッタは予選15番手

第12戦イギリスGP以降、F1はおよそ1カ月間のテスト禁止期間に突入した。テストチームには1週間の休暇が与えられたが、TMGはいつもどおり稼働。さらなる性能アップを図ろうと、研究開発活動が続けられた。

「テストをしていないので大きなものは持ってきていませんが、細かな改良はあちこちに施しています」と高橋敬三ゼネラルマネージャー。「空力では新しいリアウイングを持ち込みました。ブレーキダクトにも手を加えています。これは冷却性能を高めるためです。ハンガロリンクではハードブレーキングはないのですが、ブレーキをちょこちょこ踏むので冷える暇がないんですね。その対策です。ドライバーを冷やすためのダクトも設けています。フロントノーズのサービスボックスの近くです。メカニカルな部分も少し変えていまして、サスペンションにはセットアップの幅を広げるアイデアを投入しています」

ハンガロリンクは、ホームストレートの延長などレイアウトが変更され、全長も3・968kmから4・381kmとなった。だが依然、低速・ハイダウンフォースサーキットで、抜き所のなさも相変わらずと見られ、それゆえ「タイヤをいかに上手に使うか」が勝負の鍵と高橋GMは予想する。

「抜けないサーキットなのでソフトなタイヤを使いたいところなのですが、予選上位を狙ってソフトにすると、レースではグレーニングやブリスターに悩まされる可能性があります。といって、ハードにすると予選で上位を狙うのは難しい。マニクールやホッケンハイムに比べるとタイヤに対して厳しいサーキットなのですが、ミシュランはホッケンハイムで使ったタイヤとともに、今まで使ったことのない新しいコンパウンドも持ち込んできました。今までハンガリーに持ち込んだコンパウンドに比べると、どちらもソフトです」

ホッケンハイムで使用した実績のあるコンパウンドをオプション。新しいコンパウンドはオプションよりブリスターの出にくい仕様で、ミシュランはこれをプライムに設定した。

金曜日は朝から快晴。午前中のフリー走行が始まる頃には、気温28度、路面温度33度にまで上昇した。2人のドライバーは主にタイヤ選択にこのセッションを費やしたが、オリビエ・パニスは1分21秒770のトップタイムをマーク、ダ・マッタも5番手につけた。

「新しいリヤウイングはダ・マッタにだけつけました。事前のシミュレーションでは、良くても1分22秒台に入る程度を予想していたのですが、それに比べると1秒以上速かった。午前中は路面の状況が良かったのかもしれません」

ところが状況は一変する。予選1回目のパニス7番手、ダ・マッタ20番手の結果は、グリップ不足がもたらしたものだった。路面温度の上昇と、フリー走行と予選の間に行われたサポートレースの走行がコンディションを変えたのではないか、と高橋GMは憶測をした。

「パニスは、バランスは良かったのですがグリップが全然なくて、クルマがスライドする量が増えたと言っていました。ダ・マッタも似たような意見で、グリップが全体的に落ちたと言っていました。最後(ターン13)でスピンしたのは、プッシュしすぎて、アクセルを早く開けてしまったのが原因です」

昨年までは50前後だったエンジンの全開率は、メインストレートの延長などで、56%に上昇した。グリップ低下の症状が問題になったが、心配されたグレーニングやブリスターは発生しなかった。

「心配していたフロントタイヤのグレーニングは、思いのほか出ませんでした。それよりもリヤの特性変化が課題です。1周目はニュートラルなのですが、2周目以降にグリップが落ちる。リヤタイヤをいかに温存するセットアップを見つけるかが課題です。路面温度が50度を超えるとわかりませんが(予選時は最高46度)、ブリスターの心配はなさそうです。明日はしっかりロングランをして、タレの問題を解決しておきたいですね」

土曜日になってもダ・マッタはコース攻略に苦しみ、午前中のフリー走行に続き、ウォームアップ走行終了間際にもスピン。15分後に始まる2回目の予選では2番目の走行順だったため、チームは大事を取ってTカーの準備をした。大事には至らずレースカーでタイムアタックを行ったが、状況は好転せず15番手。一方、TF103のポテンシャルを出し切ったパニスは10番手に食い込み、今シーズン9度目のトップ10グリッドを獲得した。

「オリビエはミスなくやってくれました。クリスチアーノはコース特性をまだつかみきれていないようですが、そこそこのタイムを出してくれたと思っています。オーバーステア気味だとコメントしていますが、空気圧やウイングの調整で対処できる範囲なので、心配はしていません」

この日、チームはタイムの出やすい(その反面、ブリスターの出やすい)オプションタイヤのみを集中的に試し、ブリスターが発生する心配のないことを確認。2人のドライバーともにオプションを装着してコースに送り出した。

「タイムを優先するため、オプションで成り立たせようとしました。レースへの一番の課題だった準備はできたと思います。ダウンフォースを少なめの設定にしていますので、低速区間はつらいのですが、レースにとって悪いことはありません。ハンガリーに来る前は苦手意識を持っていましたが、これまで2日間混乱せずに好調を維持できたのは収穫です。レースに向けて自信が持てます」と前向きなコメントを残した。