第14戦 イタリアGP 2003

2003年09月14日(日)

高橋敬三GMに聞く:決勝

予期せぬトラブルでリタイアするも速さを証明
次のグランプリでの巻き返しを誓う

土曜日の夜、モンツァ一帯には雷雨が激しく降った。それは、まるで決勝レースの波乱を告げるかのような雨だった。天気予報では、日曜日は少し気温が下がると告げていた。気温が下がった方が条件は良くなるのだが、「うちにとっては暑い方が良い」と来栖俊郎TMG副社長が語るように、パナソニック・トヨタ・レーシングにとってはミシュランタイヤに有利な暑さが欲しいところだった。さらに、前日の雨が路面コンディションをどのように変えているか。その辺もレースの勝敗に影響を及ぼしそうであった。

グランドスタンドには、イタリアらしく多くのフェラーリファンが駆けつけ、満席となっていた。日陰に入ると多少肌寒いくらいのヨーロッパらしい爽やかな気候は、見ている者にとっては過しやすく気持ちが良いものだったが、チームにとっては、恨めしくもある天気だったようだ。

スタートは午後2時、気温23度、路面温度43度という好コンディションのなかでレースは始まった。スタートで、驚くようなパフォーマンスを見せてくれたのは、9番手スタートのオリビエ・パニスだった。前日、7番手グリッドを獲得したBARのジェンソン・バトンが、「多分、パニスにスタートで前に行かれるだろう」と話していた通りとなった。それは、ミシュランタイヤの転がり始めが良いという特性があるらしかった。好スタートを決めたパニスは、クルマをすぐに右に振り、前に並ぶバトンと5番グリッドに並んだウイリアムズのマルク・ジェネをかわし、何と5番手で第1シケインに入った。すぐにジェネにはかわされたものの、1周目を6番手で通過した。

一方、クリスチアーノ・ダ・マッタは逆にスタートで遅れるが、1コーナーの混乱でうまくそれをカバーし、スターティンググリッドどおりの12番手で1周目を終えた。しかし、ダ・マッタは1周目に1コーナーで接触したクルマの破片に乗り上げてしまい、リアタイヤのスローパンクチャーに悩まされていた。リアタイヤのバイブレーションは徐々に酷くなり、4周目の最終コーナーのブレーキングでタイヤが裂けてスピンし、そのまま最終コーナーのグラベルベッドに止まった。

パニスの後ろにはチームランキングを争うライバル、BARの2台が続いていた。しかし、ラップタイムはパニスの方が速く、この2台を徐々に引き離していた。その差は2秒近くまで離れ、安全圏内だった。しかし、11周目に予定のピットインをしたパニスに対し、BARのジャック・ビルヌーブはピットインを引っ張り、結果として全車が1回目のピットインを終えた時点では、パニスはビルヌーブの後ろ、8番手に下がってしまった。

31周目、パニスは2回目のピットインに入るが、その直後ブレーキのマスターシリンダーのピロボールのボルトが緩んでしまい、35周目についにスローダウンしてしまった。

「普通は緩むような所ではないんですが」と高橋敬三ゼネラルマネージャーはレース後に驚きの声を上げていた。

何とかピットまで戻ってきたパニスだったが、すでに周回遅れとなってしまっており、そこでレースを終えた。しかし、パニスの表情はそれほど暗いものではなかった。トップ6に入れる速さを見せたことで、今後に希望を持てたからだろう。

「今回のレースは常にポイント圏内で戦えることを証明した。すでに僕の目標はインディアナポリスのレースへと切り替わっている」とパニスは残り2戦でのポイント獲得に意欲的だった。

予選までの好調さとは裏腹に、予想もしなかったトラブルで早々にリタイアとなってしまったが、その速さは十分に見せることができた。

「とにかく悔しい。今回はいけると思っていただけに、余計ですね。ただ、我々のクルマがトップチームにも匹敵する速さを持っていることは証明できたと思います。まずはコンストラクターズ・ランキング5位を目指して、残り2戦頑張ります」と高橋GMは悔しい表情を見せながらも、これをバネに次のレースでの健闘を誓ってくれた。