第16戦 日本GP 2003
2003年10月11日(土)
高橋敬三GMに聞く:予選
ついに最終戦を迎えたF1GP。パナソニック・トヨタ・レーシングにとっては、本社のある愛知県豊田市からも近い鈴鹿サーキットでのホームグランプリだ。パナソニック・トヨタ・レーシングは現在ランキング9位と、ここ3戦のノーポイントで大きく順位を落としてしまっている。しかし、ランキング5位のザウバーまでの差はわずか6点。まだまだ、目標の5位は十分手の届く位置にある。
F1GPの行なわれるサーキットのなかでも、鈴鹿は非常にテクニカルで難しいコースだ。このコースの攻略法について、ベテランのオリビエ・パニスは次のように語っている。
「高速コースでありながら、低速コーナーもS字もあるコースだけに、素早くクルマの姿勢を変えられるセッティングに仕上げなければならない。タイムを出すにはS字での走りが重要になるだろう」
今年デビューイヤーのクリスリアーノ・ダ・マッタは、全く鈴鹿を走った経験が無く、木曜日に乗用車でコースの下見をしていた。
「鈴鹿はテクニカルなコースだと聞いていたが、全くそのとおりだった。金曜日の午前中のフリー走行でいかにコースを攻略し、セッティングするかが重要になる。しかし、鈴鹿用に開発されたニュースペックのエンジンは非常にパワフルで運転しやすいから、良い結果が出せるだろう」とダ・マッタは初めてのコースにも自信をのぞかせた。
迎えた初日、金曜のフリー走行ではセッティングがうまく決まらず、午後に行なわれた予選1回目は、パニスが1分31秒908で13番手、ダ・マッタが1分32秒256で14番手と下位に沈んでしまう。
「目標タイムは31秒5くらいだった。あとコンマ5秒足りない。10位以内には入れたはずだ」と来栖俊郎TMG副社長は悔しそうに語った。それでもチーム内には悲壮感は無く、「明日からが勝負ですよ」との冨田務TMG会長の言葉からも受け取れるように、どこか自信があるように思われた。
土曜日の午前中のフリー走行に向けて2台とも大きくセッティングを変えて臨んだ。しかしそのセッティングに対して、ドライバーがアンダーステアを訴えたため、徐々に金曜日のものに戻されていった。
「金曜日はまだ路面もできていなかった。結局、路面ができるまで、じっくりいこうということになった」と高橋敬三ゼネラルマネージャー。
午後の予選2回目はダ・マッタ7番目、パニス8番目と早めの出走順だったが、これが幸いする。セッティングも決まったダ・マッタは1分32秒419を叩き出し、この時点ではもちろんトップタイム。パニスも1分32秒862で続き、パナソニック・トヨタ・レーシングの2台は暫くタイミングモニターの一番高いところに並んでいた。このふたりを最初に破ったのは、ファン-パブロ・モントーヤだったが、その差わずか1000分の7秒。そしてこのころから、空模様は怪しくなってきていた。「直前の予報では途中雨がパラパラくることが予想されていました」と高橋GM。
ルーベンス・バリチェロがトップタイムを出した直後、雨はコースを濡らし始める。そのためそれ以降出走した、キミ・ライコネン、ミハエル・シューマッハーらはタイムを更新することができず、この結果、ダ・マッタはアメリカGPのパニスに続き3番手グリッドを獲得。パニスも4番手と、2列目に2台のTF103が並ぶ結果となった。
予選後、大きな歓声とともに、ピット内では拍手が沸き起こった。
「今まで予選で損したことはあったので、一度くらいこういうことがあっても良いでしょう」と冨田TMG会長は笑顔で語った。
「明日はウエットとドライの確率が、予報では半々ですね。そのため今日のセッティングは、どちらでも良いようにしてあります。多少、ダウンフォースを付けて、雨でもいいようにしました。あとは作戦面ですが、アメリカでの失敗をケルンで分析してあります。同じ失敗は二度は繰り返しません」と高橋GMは決勝に向けて、強く宣言してくれた。
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