第1戦 オーストラリアGP 2004

2004年03月06日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

浮き沈みの激しい予選に。決勝での巻き返しを誓う

パナソニック・トヨタ・レーシングにとって3年目、2004年のF1世界選手権が例年通り、オーストラリア・メルボルンのアルバートパークで始まった。例年どおりでなかったのは気温だ。グランプリの公式スケジュールが始まる前々日と前日、すなわち水曜日と木曜日は日中の気温が35度前後にまで達する猛暑に見舞われた。高橋敬三・技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、予想外の暑さをいやがるどころか、むしろ熱烈な歓迎と受け取っているように見えた。

「明日(金曜日)が楽しみです。オフシーズンのテストでは他チームの状態がわかりませんでしたが、ここでやっと他チームのポテンシャルがわかる。一方で、1レース1エンジンのルールが導入され、走行を控えるチームもあるでしょう。我々はエンジンの信頼性に自信を持っていますので、レギュラードライバーにも存分に走ってもらう予定でいます。空力パーツの製造が遅れていましたが、さっき届きました。やるだけのことはやったので、明日が楽しみです」

TF104を発表後、トヨタはテストを重ね、収集したデータをもとに前後のブレーキダクトとリアウイングを新調した。それらをオフシーズン最後のテスト(イモラ)で確認する予定だったが、悪天候に阻まれ十分なチェックを行うことができなかった。ゆえに完成が遅れ、開幕ぎりぎりのタイミングで現地に届くことになったのだという。実走行テストはできなかったが、風洞実験の結果が良好だったので、メルボルンには走行初日から投入されることになった。

「最初の年はみんな緊張していました。2年目の昨年はわりとリラックスして臨んだと思います。今年は緊張していますね。3年目ですから結果が求められる。自信はあるんですが」と、高橋DTCは心情をのぞかせる。「他チームのポテンシャルがわかる」金曜日の走行が始まった。前日までの猛暑から一転、フリー走行1回目が始まる午前11時の段階で、気温は21度、路面温度は27度と涼しい。セッション開始を告げるグリーンライトの点灯とともにサードドライバーのリカルド・ゾンタがコースに入り、走行24台中で最初にラップタイムを記録する。

「リカルドが頑張ってくれました」と高橋DTC。「午前、午後のセッションで合計50周程度を予定していましたが、電気系のトラブルがあってECUを替えたので、予定より少ないくらいです。それでも、タイヤの比較、ロングランのデータがとれました。今日の目的はタイヤをしっかりテストし、データをとること。あとは明日の午前中で、レースに向けて一番いいセットアップを見つけることです」

サードドライバーのゾンタが3人のドライバーの中で最も優れたラップタイムを記録したが、それには理由があると高橋DTCは説明する。

「クリスチアーノはオーバーステア傾向が強く、挙動が不安定でした。ブレーキング時にフロントがロックする症状も出ました。最後にリカルドの結果をもとに仕様を決め、アタックしようとしたところで左リアタイヤがパンク。コース上に落ちていた何かを拾ってしまったのだと思います。一方、オリビエはアンダーステア傾向だったので、その対策に集中しました。彼も同じようにリカルドの結果をもとに仕様を決めアタックしたのですが、2周とも渋滞に巻き込まれてしまいました」

土曜日午前中のフリー走行では、ダ・マッタ、パニスの2台ともセットアップの熟成に務めた。ダ・マッタがソフトウェアのトラブルに見舞われてコース上に車両を止めるハプニングがあったが、2台とも順調にタイムアップを果たし、パニスが6番手、ダ・マッタが12番手につける。

「クリスチアーノはエンジンが予期せずストップしてしまいました。セッション最後だったこともありますし、ハードにも影響がなかったので、予選への心配はありませんでした」

今シーズンから実施方法が変更になった予選は、まず、前戦のレース結果の順にタイムアタックを行い、2回目の予選では1回目の予選結果の下位からタイムアタックを始める。前戦、すなわち昨年の最終戦日本GPで7位に入賞したダ・マッタが1回目の予選で7番目にタイムアタック。パニスが10番目にタイムアタックを行い、それぞれ17番手、13番手につける。

予選2回目はダ・マッタが13番手でセッションを終えた。一方、パニスはアタックラップに出ようとピットを出た途端に電気系のトラブルが発生し、エンジンがかからず。懸命の復旧作業も実らず、浮上を懸けたタイムアタックに出ることができなかった。決勝レースは最後尾からのスタートとなる。

「午前中浮いて、午後に沈みました」と、高橋DTCは厳しい表情で予選を振り返る。「クリスチアーノの予選1回目は『午前中よりグリップがない』ということでフルアタックができませんでした。調整をして2回目に臨んだのですが、ベストの状態にもっていくことができませんでした。一方、オリビエの最初のアタックはまあまあでしたが、2回目のアタックの際に電気系のトラブルが発生してエンジンがかからず、走ることができませんでした」

予選の結果を悔いている間もなく、決勝レースの時間が迫ってくる。「サバイバルレースになる気もするし、ならない気もします。いずれにしても、1つ1つ順位を上げていくしかありません。ひとつでも順位を上げて、ポイント圏内に入りたいですね」