第1戦 オーストラリアGP 2004
2004年03月07日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
次戦に向けて、今回得た収穫を反映
今シーズンから、スタート時のクラッチ操作を自動的に制御するローンチコントロール、変速操作を自動的に行うオートマチックシフトが禁止された。これにより、ドライバーはステアリングの裏に設けられたクラッチパドルと、足もとにあるアクセルペダルを絶妙に操作して発進操作を行わなければならない。その巧拙が「スタートでの順位変動に大きく影響を与える」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は説明する。
「(7速あるうちの)1速で160km/hまでカバーします。例えば1万8000回転で160km/hだとすると、80km/hで9000回転、40km/hで4500回転、10km/hだと1000回転ちょっとということになります。これではアイドリング回転以下なので、クラッチをつないだ途端にエンジンがストールしてしまいます。昨年までは路面のミュー(抵抗)に応じてクラッチのオン、オフを自動で制御していましたが、今年からはドライバーがクラッチパドルの操作をして半クラッチの状態を保たなければなりません。クラッチをつなぎきったら今度はシフトパドルでギアを上げていかなければならない。ですから、ドライバーは相当に忙しい。ドライバーによってはミスをするかもしれませんね」
レース後、高橋DTCは「スタートは誰も失敗せず、1コーナーでの混乱もありませんでしたね」と苦笑いした。上位陣ではルノーのアロンソが5番手から3番手へ、チームメイトのトゥルーリが9番手から5番手に順位を上げたが、中団以降に大きな順位の変動はなかった。クリスチアーノ・ダ・マッタはオープニングラップで抜きつ抜かれつを演じたが、スタート時と同じ13番手でオープニングラップを終える。一方、パニスはひとつ順位を下げ、19番手で最初の周回を終えた。
「予選順位が下位の方だったので、最初でちょっと(先行車から)離されるとすぐ周回遅れになる。(後続車に道を譲る指示の)ブルーフラッグが振られるとタイムが落ちてしまう。3回ブルーフラッグを振られて道を開けないとペナルティを科されるなど、今年からブルーフラッグに対する反応が厳しくなりました」
後続を気にするあまり、ドライバーはペースを乱されてしまう。ペースを上げて先行車とのギャップを詰めるどころではない。
「ブルーフラッグが振られていることを無線で知らせていました。指示を忠実に守ってラインを譲ると、タイヤがゴミを拾って余計にペースが遅くなる。ですから、周回遅れになることがハンデになります。予選で上位につけ、ポジションをキープしながらさらに上を狙うようなチャンスをうかがう戦略を採らないと、ポイントを獲るのも難しいかな、という印象を受けました」
タイヤとのマッチングがとれず、ハンドリングに苦しみながらの走行だったが、パナソニック・トヨタ・レーシングは持てる知力を結集してパフォーマンス向上に務めた。
「オリビエが2ストップ、クリスチアーノは3ストップの戦略でした。ふたりともオーバーステア傾向が強く、コースを攻めきれないということだったので、ピットストップの際にフロントウイングの角度を調整しました」
この努力の結果、パニスは35周目、ダ・マッタは41周目と、ピットストップでの調整後にレース中のベストラップを記録した。
「今回、新しいレギュレーションのもとで3日間戦いましたが、微修正しなければいけないところがいろいろ見えました。初めて予選を経験し、他チームの燃料積載量もわかりましたので、データをいろいろ調べて次のマレーシアGPで反映させたいと思います。予選で上位につけないと、レースではなかなか抜きにくい。予選1回目にいい順位につけて、2回目に備える。今回の予選を見ていると、2回目の予選で後から走るクルマは、前のクルマを見て多少補正した様子がうかがえました。我々も参考にするつもりです」
開幕戦でしっかりデータを収集したパナソニック・トヨタ・レーシングは、3月10日、11日にバレンシアで行われるテストで、ステップアップに向けた作業に取り組む。
「まず空力です。空力はやっただけすべて(スピードに)跳ね返ってきますから。マレーシアGPに向けてもすでに新しいフロントウイングを準備しています。ふたりのドライバーは悪いコンディションの中で頑張ってくれました。特に、オリビエはチーム側の問題で予選に出られなかったハンデを負いながら、最後まで粘り強く走ってくれました。今度は我々が彼らの努力に報いる番です」
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