第2戦 マレーシアGP 2004
2004年03月20日(土)
高橋敬三DTCに聞く:予選
マレーシアGPに向けた改良が効果を発揮。レースのポイントは「暑さ」
厳しい結果となったメルボルンでの戦いを終えた高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、レースが終わったその日の夜には飛行機に乗り、ケルンへと戻っていた。マレーシアに向けて、クルマの戦闘力アップを施すため、開幕戦のデータを分析するためだった。
「開幕戦の不調の一番の原因はダウンフォース不足です。それによってタイヤの温度も上がらず、グリップしないからドライバーもプッシュできないという悪循環のサイクルにはまってしまったためです」と分析した結論を語ってくれた。そのため、マレーシアに向けて、TF104には新しい空力パッケージが用意され、フロントウイング、ターニングベインなどが変更された。
マレーシアは今年も暑かった。連日気温は35度以上、路面温度は50度を超える条件でのレースとなった。暑さはF1カーにとって本来は敵であるのだが、トヨタにとっては少し事情が違っているようだった。「クルマは暑い方が調子良いみたいですね」と言うようにメルボルンに比べて、金曜日からTF104はなかなかの速さを見せていたのだ。もちろん、信頼性を強みとするトヨタとしては暑さ対策も万全だった。
「暑さは問題ないですね。金曜日も気温が36度もあって、ちょっと心配したんですが、油温、水温ともにレースで使えるくらいに収まってます。暑さ対策にはいくつかのオプションを持ってきましたが、まだ最後までは使ってません」と余裕の発言だった。
金曜日のフリー走行では第1セッションで3台目のリカルド・ゾンタが4番手に入るなど、好調なところを見せた。高橋DTCの表情もメルボルンの時とはうって変わって明るかった。「今日は非常に順調でした。唯一、最後に(クリスチアーノ・)ダ・マッタが飛び出してしまいましたが、特別にトラブルがあったわけではありません」。午後のセッションの終わり、ダ・マッタはミナルディのクルマを無理に抜こうとしてコースアウトしてしまった。
「午前中は、最初は路面にまだラバーがのっていなかったので、タイヤにグレーニングが出てしまって、セッティングする状態ではなかったです。最初はオーバーで、次にアンダーが出る、いつものパターンでわかっていたので、そのまま走らせました。午前中の一番の問題点は、ストレートエンドのブレーキングにバンプができたことでした。昨年はなかったものですね。ブレーキングの途中でバンプがあるため、ポンと1回跳ねて、それでリヤが不安定になると、3人のドライバーが口を揃えて指摘しました。午後のセッションではそれを抑える方向でセットを進め、一応満足いくレベルまで仕上がったと思います」
金曜日午後のセッションではオリビエ・パニス12番手、ゾンタ13番手ながらトップとの差は1秒ほどと小さく、高橋DTCも満足いく結果だったようだ。ダ・マッタはコースアウトしたこともあって、午後には僅か7周しかできず19番手に沈んでいたが、クルマのバランスは他の2台と同じで悪くないだけにそれほど深刻な状況ではなかった。
土曜日も予選が始まる前には気温37度、路面温度54度まで上がっていた。午前中のフリー走行ではダ・マッタが2回もコースアウトするなど、心配されるところもあった。だが、「ダ・マッタは攻めた結果のスピンということで、クルマに特に問題があるわけではありません」と高橋DTCはそれほど心配してはいなかった。
予選1回目のセッション、ダ・マッタは12番目、パニス13番目のスタートだった。1回目は様子見ということもあり、それぞれ16番手、14番手だった。
「1回目の予選では様子見ということもありましたが、二人のドライバーは午前中よりもグリップがないということでした。多分、路面温度が変わってグリップが全体的に下がったのだと思います。他のクルマが走るのを見ても、そんな感じでしたから。クルマもちょっとアンダーステア気味だったということで、2回目までに2台ともフロントウイングを上げていきました」
2回目の予選はダ・マッタが見事に1分34秒917のタイムをマークし、10番手とトップ10に入る。パニスはなぜかクルマがオーバーステア傾向となり、14番手となった。「結果には満足していませんが、タイム差などを見ても、メルボルンの時よりも大分良くなってきていると思います。これも、マレーシアに向けて改良してきたことが効果を発揮してきたためだと思います」と晴れ晴れとした表情で語る高橋DTC。
「やはり“暑さ”がレースにとってのキーワードになるでしょうね。1レース1エンジンのレギュレーションのなかで、この暑さは初めてですから。メルボルンよりもサバイバルのレースになると思います。暑さや信頼性という部分では自信がありますから、ポイント圏内でのレースをしたいですね」と決勝への自信をのぞかせた。
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