第3戦 バーレーンGP 2004
2004年03月29日(月)
バーレーンGPに向けて - ルカ・マルモリーニ
パナソニック・トヨタ・レーシングのエンジン部門テクニカルディレクター、ルカ・マルモリーニがバーレーン王国で初開催されるGPと今後のシーズン展望を語る。
シーズンの終盤に行われる中国でのレースと並んでこのバーレーンで行われるGPは、F1全体にとって大きな好機であり、全てのチームとドライバーにとって今年最大のチャレンジとなると私は思う。またコースに関するデータは全くなく、そのために金曜日の朝、走り出すまでに可能な限りの情報収集を自分たちで行わなくてはならず、これはトヨタとして、他のチームと同じ条件で臨むことになる初めてのケースとなる。
理論上、われわれは、ケルンの工場おいてバーレーンのように走行したことがないコースでも正確にシミュレーションを行うことができる。車両のシミュレーション・ツールを用いて、いかなるサーキットでもエンジンがどのような状況かをほぼ正確に示すことができ、例えば、エンジン回転、スロットルの負荷やいろいろな状況が示される。だが、ドライバーがイベント中にどのようなエンジンの使い方をするかは、予測することができない。また、環境の面では不明確な部分があって、バーレーンは他のサーキットと比べて広大な場所に存在するので、気温と路面温度の格差が大きなことや、砂が舞ってコース上に出るということも考えられる。最悪の状況も考えながら、100%正確ではないにしろ、金曜日の走行がテキパキと開始できるように充分なデータを収集していきたい。
通常、コースの状況が分かっていれば、クルマがどうなるかシミュレートすることができる。これにより、レースエンジニアがクルマのセットアップを予想することができる。タイヤのシミュレーションも行えるし、それを基にしてエンジンダイナモを用いてエンジンがどう作動するかをチェックできる。しかし実際には、全てのサーキットで信頼性のシミュレーションを行う必要はなく、すでに熟知しているホッケンハイムの旧コースのように、特にエンジンにきついコースで一般的な信頼性をチェックするようにしている。もちろん、土壇場で起こりうる可能性のある操縦性に関する問題や、イベントが始まり、各サーキットで起こる可能性のあるあらゆるトラブルにも準備をしておかなくてはならない。
トヨタはこの数年間で全てのF1が開催されているサーキットを学んできたので、迅速に情報を収集するという点ではわれわれにもアドバンテージがあるのではないかと思っている。しかし、経験というものは大きくて、新しい環境に対する適応性の面では経験豊かなチームにアドバンテージがあるであろうことを忘れてはならない。
われわれは、バーレーンでも金曜日に3台目のクルマを走らせることができるというメリットがある。そのクルマをドライブするリカルド・ゾンタの役目は重要だ。彼を、われわれが望む最もレースに近いコンディションで自由に走らせることができる。最も重要なのは、リカルドが走ることで2台のレースに使用するクルマのシャシーとエンジンを温存できることだ。3台目のクルマを走らせることでミシュランタイヤの選択に大きく貢献しているのと、そしてリカルドのクルマをチェックすることでエンジンにトラブルが発生した場合にでも、予選前の早い段階でそれに対処できる。どんなに準備を怠らなかったとしても最後の最後に何かが起こることがある。3台目のクルマを使ってそのような予測出来ない事態にも対応できるのだ。
今シーズン最初のレースは、新しいエンジンに関するレギュレーションが施行され、われわれのエンジンの信頼性がかなり高いと認めることができてうれしかった。シーズン前のテストでは1イベントを問題なく走りきるということに集中し、その成果のあらわれだと自負している。エンジンとシャシーのパッケージは信頼性の点では、かなり高いレベルにあるがパフォーマンスの点ではまだ開発の余地がある。多岐にわたる点について開発が進められているので、必ず改善は実現されるだろう。
技術的な見地から新しいエンジンレギュレーションはとても良く機能しているし、レースの面白さを全く損なうものでもないと思う。しかし、予選終了後、いやレース前と言うべきかも知れないが、エンジン交換に関する点で混乱があるので、互いに納得できる合意をするべきだ。
われわれは、金曜日にエンジンを使いすぎないために通常各レース前に作戦を立てている。3台目のクルマを走らせることができるので、金曜日に2台のレース用のクルマの走行を制限できる。これによって予選で少し回転をあげても土曜日と日曜日に普通にエンジンを使用することができる。
最高のF1用V10エンジンを開発する上で最も重要とされる点は、長く走行しても性能が低下しないということだ。しかし、約700キロ走行した場合、パフォーマンスが若干低下するのは避けられないが、これを最小限にとどめるのがわれわれの仕事であり、それができなければ、エンジンに負担のないギヤ比の低い戦闘力でレースを終えなければならない。2004年のレギュレーション変更に関してエンジンの走行距離を話し合ったときには、エンジンが安定して性能を発揮できる距離、オイルの消費、燃費等について検討した。
年間を通してわれわれはいくつかのステップでRXV-04の開発を計画している。具体的な戦略数は明確にはできないが、作業はいくつかの分野に分かれて実行されている。最初に着手しなくてはならないのは、パフォーマンスの向上と同じように重量の軽量化だ。そして、1イベント中にいかにうまくエンジンを使うかという戦略をたてなくてはならない。この戦略はすぐに実行可能だが、どのレースで導入していくか具体的なことは示せない。シャシーの開発と共に、エンジン開発は直接的に競争力を左右し、そして近い将来の大幅改良では、低重心化とTF104全体の軽量化が行われる。
RVX-05のデザインはすでに2003年の終わりから始められており、新しいトヨタF1エンジンは6月くらいにはテストベンチに乗せられるだろう。今われわれは、忙しくパーツの製作作業に携わっている。今年の後半にはダイナモでできる限り長い時間作動させたい。理想としては今シーズンが終わる前に実際にシャシーに搭載してテストを行いたいと思っている。理論上は、9月までにはクルマに搭載できるようになればよいが、まずはシーズン後半の実行計画を作らなくてはならない。
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