第3戦 バーレーンGP 2004

2004年04月03日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

新しく投入したタイヤが威力を発揮。セッティングも順調な仕上り

水曜日にバーレーン・インターナショナル・サーキット入りした高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、1周5.417kmのコースを念入りに下見し、その特徴を即座に把握した。

「舗装したばかりですので、路面のグリップは高いですね。ただし、砂地に取り囲まれた立地ですので、風で砂が運ばれたときのグリップ変化が心配です。ストップ&ゴー的な性格が見てとれますので、ブレーキにもきついでしょう。初めてのサーキットなので、プラクティスでの走行距離も増えるでしょうし、暑い中で走行距離が延びますから、信頼性の意味でもきついレースウィークエンドになると思います」

金曜日のフリー走行では、多くのクルマが砂塵に足を取られて姿勢を乱す場面が見られ、クリスチアーノ・ダ・マッタなどもそのうちのひとりとなったが、チームとしては順調にセットアップを進めることができた。他のミシュラン・ユーザーがタイヤをパンクさせるトラブルに見舞われたが、パナソニック・トヨタ・レーシングは完全にトラブルフリーの1日を過ごし、高橋DTCも「タイヤについてはまったく問題ありません。むしろ合っている。方向性が見えたきたので良かった」と初日のセッションを振り返る。

「先週のポールリカールで、イモラに持ち込む予定のタイヤをテストしたのですが、そのテストでいい感触を得たので、急遽バーレーンに投入することになったのです。木曜日の夕方にタイヤが届き、すぐに組み込んで走らせました。ドライバーは3人とも、『最初は滑りやすかったが、ラバーが乗るにつれてグリップが良くなった』と言ってました」

プログラムを3人で振り分けて行った結果、実りのあるデータを収集することができた。これをもとに、予選~決勝に向けた調整を行う。

「予想どおり、ブレーキにきついことがわかりました。ダウンフォースのレベルもどうしたらいいか。また、コーナー立ち上がりの縦方向のトラクションの重要性もわかりました。この点は明日最終調整をします。路面がスムーズなので、車高もぎりぎりまで低くすることができます。砂による影響は予想より少なかったですね。クルマのバランスは悪くありません」

土曜日午前中のフリー走行では、ふたりのドライバーとも金曜日に収集したデータをもとに似通ったセットアップで走り始めた。走り始めのセットアップがコース状況に合っていたため、微調整の範囲で順調に走行を重ねることができた。こうして、2日間の順調な活動が予選結果に反映し、オリビエ・パニス8番手、ダ・マッタ9番手と、今シーズンベストの成績で予選を終える。

「結果としては、現在の我々のベストだったと思います。2日間トラブルフリーで予選を迎えたのですが、路面にほこりが乗ったようで、『全体的にグリップがない』というのが、予選1回目のふたりに共通したコメントでした。ですが、バランス的にはそんなにおかしくないということなので、ほとんど調整をせずに2回目のアタックに臨みました。オリビエにもクリスチアーノにもちょっとしたミスがありましたが、ポジションが変わるほどではなかった。ふたりともよく頑張ってくれたと思います」

金曜日から土曜日にかけて、パナソニック・トヨタ・レーシングはセットアップの最終調整について次のような解決法を導き出していた。

「ダウンフォースはマックスから多少減らし、最高速をある程度確保しつつ、コーナーをある程度妥協させました。その結果、いいバランスになったと思います。このダウンフォース・レベルに合わせて車高を割と低めにしています。この点が大事です。それにトラクション。とくにリアのメカニカルグリップを上げるために、サスペンションを柔らかくしました。これが利いたと思います」

そうしたメカニカルな部分と空力の調整については「微調整の範囲」だと説明する高橋DTCだが、土曜日になって顕著な変更を加えたのは電子制御の部分だ。

「メカニカルと空力はほとんどいじりませんでした。いじったのは電子制御で、ここはオーバーだ、ここはアンダーだというところをなくすために、デフのコントロールを修正しました。基本的に、車両のセッティングは金曜日に収集したデータでほとんど問題ありませんでした。慌てずにセットアップを進めることができましたね」

「我々のベストだ」と語った高橋DTCだが「現在の」と付け加えることを忘れなかったのは、目指す次元が違うからである。

「メルボルン、セパンといろいろ苦しんで来ながらですが、少しずつ進歩してきたのが今回の結果だと思います。8番手、9番手の結果は、まだ我々の目指すところからすると低いのですが、前回から比べれば進歩していますし、また次回も進歩するでしょう。ステップの過程とすれば良かったと思います。現在の段階で、十分レースを戦えるだけのセットアップはできました。熱とブレーキに厳しくなりそうですが、冷却性とブレーキについて明日のための準備は整っています」