第3戦 バーレーンGP 2004
2004年04月04日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
クルマは確実にレベルアップ。次戦に手応え
朝目を覚まし、曇り空を確認した高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、「晴れてくれるんだろうか」と不安な気持ちになったという。路面温度が50度を超す状況になれば、パナソニック・トヨタ・レーシングの2台は強さを発揮できると思ったからだ。
だが、スタート時点での天候は曇りのまま。日が陰っているばかりか、朝は強風が吹いてサーキット周辺の砂を巻き上げ、コース一面を覆っていた。さらに、昼近くには雨がぱらつく不安定な天候だった。気温31度、路面温度29度のコンディションでレースはスタートした。
「気温が昨日と変わってしまって、期待したほど暑くありませんでした。生き残りのサバイバルレースにならなかった点は残念ですが、タラレバを言っても仕方ありません。他チームがもっと壊れるだろうと思っていたのですが、実際は壊れませんでした。信頼性の強さだけでは武器にならないということです」
予選9番手のクリスチアーノ・ダ・マッタはスタート直後に2つポジションを上げ、7番手で1コーナーを通過。だが、途中、コーナーで縁石に深く乗ってペースダウン。13番手でオープニングラップを終えた。その後はチームメイトのオリビエ・パニスと隊列を組む場面が多く、3回のピットストップのうち最初の2回を短めにする作戦を順調にこなした結果、パニス9位、ダ・マッタ10位の2台完走でレースを終えた。
「クリスチアーノのスタートは良かったんですが、そのあと縁石に乗って2台まとめて抜かれてしまいました。オリビエのほうはバランスが悪くなかったので、レース中は何も言ってきませんでした。クリスチアーノは第1、第2スティントはアンダーステアだという話だったので、2回目のピットストップでウィングの角度を上げました。それで症状は良くなりました。総じて、バランス的には悪くなかったと思います」
両ドライバーともに3回のピットストップを行うのは、レース前の打ち合わせどおり。最初の2回目の周回数を短めにするのも予定どおりだった。だが、スタート時のグリッドポジションから順位を上げることはできなかった。その理由を高橋DTCは次のように語る。
「今回はピット戦略をこれまでと変えて、第1スティント、第2スティントをちょっと短めにして、ピットアウト後に前の遅いクルマに引っかかってタイムロスすることがないような戦略を採りました。それ自体はうまくいったんです。ところが、残念ながらレースのラップタイムが充分に速くないこともあって、戦略のメリットを生かし切れませんでした。レースでのラップタイムが速ければ、もっと違う展開になっていたと思います」
予選での一発の速さは徐々に取り戻すことができている。その証拠が、8番手、9番手のグリッドポジションだ。だが、レースでのラップタイム・ペースにはまだ改良の余地があるということだ。
「ラップタイムから見ると、第4スティントが悪かったように見えますが、あれは周回遅れなどの要素があって悪く見えます。我々としては第2スティントでもうちょっと速いタイムを期待していたのですが、そこで狙い通りのタイムを出すことができなかった。予選のタイムはある程度上がってきましたが、レースでのラップタイムをもっと上げていかなければならない。そのためにはいかにタイヤをうまく使うか。空力やメカニカルな部分でももっと改良が必要だと思っています」
高橋DTCの視線の先は3週間後にイモラ・サーキットで行われる次戦サンマリノGPに向いている。「幸いにも、この後は通常より1週間余計に時間がありますし、風洞も今必死になって挽回を図っているところです。イモラまでにはいろんな部品が投入できると思います。なかなか階段を2段3段一挙に上がることはできませんが、オーストラリア、セパン、バーレーンと全体的にレベルは向上していると思います。ただし、他チームも当然レベルアップしてくるわけですから、すぐに上位というわけにはいかないでしょう。それでも、確実に上がっているのは事実です」
バーレーンでの戦いを終えたパナソニック・トヨタ・レーシングは、休む間もなくテストプログラムに取りかかる。来週はバルセロナで3日間のテスト。その翌週にもポールリカールでのテストが予定されている。
「空力も、メカニカルも、エンジンもテストします。次のイモラは絶対行けますよ」。初挑戦のサーキットで着実な手応えを感じ取った高橋DTCは力強くそう言い切った。
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