第4戦 サンマリノGP 2004

2004年04月24日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

不得意だったコースもまずは克服。決勝のカギはピットストップ

バーレーンGPからヨーロッパラウンドの初戦サンマリノGPまでは通常よりも1週間長い、3週間の間隔があった。その間、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、シャシー部門テクニカルディレクターのマイク・ガスコインとともに日本を訪れていた。東富士の研究所や、名古屋の本社などを回って、最後の1日はひとりで東京見物をしたという。

「東京で何も用事のない日を一日作って、のんびりと東京見物をしてきました。浅草とか、お台場を初めて回って来ました」。本格的なヨーロッパラウンドの激戦に入る前に、一時の休息をとったためか、サンマリノのパドックに着いた高橋DTCの表情は幾分か明るい感じがした。それでも仕事はきっちりとこなしていた。バーレーンの後には2度のテストがあったが、そこでは新しい空力パーツなどが試されていた。

「今回はかなりクルマを変えてきました。空力パーツはフロント&リヤウイングとブレーキダクト。シャーシは軽量・低重心化を大幅に進めてきました。具体的には、ドライバーのヒップポイントを10mm下げてきました。モノコックはそのままで、シートを作り変えて、ポジションも若干変わっています。ただ、アイポイントは変わっていないため、ドライビングには支障はありません。イモラのコースでタイムを稼ぐためにはトラクションが重要なので、電子制御も改良してきました。トラクションコントロールとデフをかなり改善したつもりです。エンジンは信頼性を向上し、レース時のリミットを上げられるようにしてあります。通常、予選時とレース時では200回転くらいの差がありますが、それがかなり縮まってきましたね」

前戦バーレーンGPでは、モニターに映るタコメーターで、トヨタは1万9000回転をマークし、関係者を驚かせた。「いま、一番エンジンは回っています」と高橋DTCも自信たっぷりに語った。さらに信頼性が加わったとなれば、かなり期待できるはずだ。金曜日の走行は順位的にはあまりパッとしなかったが、その内容に関しては「非常に順調だった」と高橋氏はコメントした。

「ここのコースには過去2年間苦しめられてきていますから、それを考えれば今日は非常に順調でした。一昨年は縁石にクルマが乗るとバランスが悪くなり、昨年はグリップ不足に悩まされました。過去2年間の問題点は一応解決できたと思っています。今日は、最初は3台とも違うセッティングで試していきましたが、クルマのバランス的には悪くないということでした。唯一の問題は、ブレーキング時にバンプで跳ねて、クルマの姿勢を崩してしまうということでした。ここのコースでタイムを稼ぐには、ブレーキングとトラクションですから。午後はその部分もかなり良くなってきました。最後に残った問題点は、トラクションと、多少アンダーステアだったこと。これが明日の予選に向けての課題ですね。明日はもっと路面も良くなるでしょうから、それを踏まえてセッティングを進めていき
ます」

最後のセッションでゾンタがコース上でストップしてしまったが、電気系の簡単なトラブルだった。それほど深刻なトラブルではなかったが、最後にニュータイヤでのタイムアタックはできず、タイム的には低迷してしまった。

予選日、トヨタの予想では前日よりも気温は下がるということだったが、逆に気温は上がり、トヨタにとっては良い方向に予想は外れた。午後の予選の頃には気温は26度、路面温度は41度にまで上がっていた。

「午前中はセッティングをあまり大きくいじってません。ドライバーのコメントではバランスは悪くないということでした。プレ予選は、最初の頃はちょっと路面がスリッピーだったようです。本予選では、ダ・マッタはミスなくベストのアタックだったと思います。申し訳なかったのはパニスで、アウトラップに電気系のトラブルが出て、シフトがおかしくなってしまいました。速度が下がって、止まりそうになったところで回復して、走り始められましたが、そのせいでタイヤを温め切れなかったのか集中力がそがれたようで、タイムに影響があったようです。うちのクルマは、セクター3は速いんですが、セクター1が遅い。データを見たところコーナーの切り返しが遅いようです。原因はグリップが足りないから、つまりダウンフォースがもっと必要だということに結論は達しました。今後の課題ですが、ダウンフォースは毎回上がってきているので、ドンドン良くなるはずです」

予選の結果はダ・マッタ10番手、パニス13番手。しかし、中団グループは混戦で、「あと0・2秒上げたかった」というように6位までの差がわずか0・192秒差だった。

「今日の夜には雨が降るという予報があるので、明日はどんな状況になるか、ちょっとわかりません。唯一の不安が今日の雨ですね。その辺のことも考慮に入れて戦略は考えていますが。ここは抜きにくいことは確かなんで、ピットのタイミングを考えるつもりです。うちはピットでのロスタイムは少ない方なんで、その辺をうまく生かして順位を上げたいですね」

夕方、トヨタチームのピットでは、遅くまでピット作業の練習が行なわれていた。今年の初ポイント獲得に向けて、パナソニック・トヨタ・レーシングの面々は黙々と仕事をこなしていた。