第4戦 サンマリノGP 2004
2004年04月28日(水)
オリビエ・パニス - サンマリノGPを終えて
イモラを迎えるまでのわれわれは、忙しかった。バーレーンの翌週はバルセロナで、そしてその翌週はポールリカールでテストを行った。この2つのテストでは成果があったと思っているよ。テストでは、チームが前進することができたし、チーム皆の経験をまとめあげて得られたものは大きかった。われわれは、しっかりしたチーム体制とチームの持っている能力を100%活用している。グランプリ毎に新開発のパーツを組み込むことができているし、全体的に状況は良くなっている。メルボルンと現在を比較するだけでもその違いはとても大きい。まだいろいろやらなくてはならないことはたくさんあるけれど、チーム全員がそれに注力して全力を尽くしているよ。
バーレーンとイモラとの間では、ポールリカールでテストがあったのでリラックスする時間は実際にはなかった。そこで子供達の学校が休みだったこともあって、家族を1週間一緒につれて行くことにしたんだ。これまでにも家族は、何回かバンドールに行って楽しい時間を過ごしたこともある。今回は、ル・キャステレ近くのとても親切でサービスの良いホテルに泊まって、子供達も楽しんでくれた。とても良い場所だったんだよ!
イモラと言えば、誰もが1994年の悲劇的なアイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーの死亡事故を思い出すだろうし、正直言って僕自身もイモラの週末は好きだとは言えない。また、コースが改修されてからというもの、昔ほど走り甲斐のあるサーキットではなくなってしまった。もちろん、改修しなくてはならなかった理由は理解できるし、改修するべきだと思うけれども、以前の方が走るという意味ではおもしろみがあったのは確かなんだ。
あの1994年の週末はひどかった。金曜日のRバリチェロの事故に始まり、ローランドの不幸、そしてJJレートが関係したストレートでのクラッシュは、外れたタイヤが観客席に飛び込むという惨事。そして決勝でのアイルトンの事故。あの日、僕は帰路につきながら、僕は深い眠りについていて、目が覚めたときには、週末に起こった数々の出来事は全部ただの悪い夢だったとわかるのではないだろうか、なんて考えたほどだった。あの週末が来るまで、誰もが、F1は安全なスポーツだと考えていた。そのこと自体、不思議なことではあるけれどね。でも、そんな考えがあったから全員が受けたショックは大きなものだったんだよ。でも、僕は起こってしまったことはしっかりと受け止めて、それでもレースを辞めようなどとは考えもしなかったよ。
実は僕がアイルトンと最初に会ったのは、イモラの前に行われた日本のTI英田でのレース前だった。レース前にトイレに行っておこうと思って行くと、偶然彼もそこに居たんだ。僕らはそこで立ち話をしたんだけれど、彼は僕がF1に参戦することを歓迎してくれた。僕がF3000で勝っていたことを知ってくれていて、焦らずにやれば、F1でも必ず良い成績を出すことができるし、成功できると言ってくれたんだよ。とても親切に話しかけてくれたんだ。僕は若い頃、彼の大ファンだった。そのアイルトン・セナが僕に話しかけてくれている!彼には本当に特別なオーラがあったよ。
今年のレースでは、過去の経験から縁石に苦しめられたことと同時に、強いダウンフォースとグリップが必要であることがわかっていた。そこでわれわれは、ポールリカールに特別なシケインを造ってもらって、イモラとカナダの縁石をシミュレートしてバンプラバーやダンパーのパッカーなどサスペンションの細かなテストを行った。それからケルンの工場では、路面入力をシミュレートする装置での試験で皆が頑張ってくれたおかげで確実な進歩を遂げることができた。昨年イモラは、われわれにとって大きな課題だったけれど、今年は、状況が良くなっていた。1、2台を除いては、他のチームと同じくらいの仕上がりだったと思う。昨年のクルマは、跳ねすぎてしまって、縁石をうまく乗り越えられなかったので、仕方なくアクセルを長い時間戻し、タイムロスもたくさん出てしまうという結果になっていた。
僕には、予選の最初のラップでちょっとした問題が起こってしまったけれど、クリスチアーノは、ルノーからほんのコンマ数秒遅れで予選を終えることができたので、良かったと思う。僕に関して言えば、ウォームアップ中にギヤの調子が悪く、シフトし直す時にスピードを一定のところまで落とさなくてはならなかった。幸いにも、その問題は持ち直したのでタイムアタックに移れたのだけれど、トラブルが気になって集中力を高めることができなかったんだ。また、ウォームアップラップで速度を落とすという対応を取らなくてはならなかったために、タイヤもブレーキも温度が下がってしまって、最初のシケインに着く頃にはアンダーステアーが出てしまったりもした。
このようなトラブルは、予選中ではなくて練習走行の時に出て欲しいものなんだけれどね!ただ、このような小さなトラブルが起こることもあるので、ひとつひとつつぶしてゆく努力をしなくてはならないね。
決勝では11位で完走したけれど、当然、この順位には満足しているなんて言えない。フェラーリは2台揃って完走しているし、2台のウイリアムズ、2台のルノー、Kライコネン、そしてBARホンダは一気にパフォーマンスをあげてきた。マクラーレンと接戦を演じて制したのは確かだけど、これが去年だったら喜べたかもしれない。でも、今年はレース中がんばり続けてマクラーレンを抑えたにも関わらず、トップ10にも入ることができていないんだ。このスポーツがいかに厳しいものかを証明したレースだったね。運にも恵まれなかった部分もあるけれど、われわれが得意としていないこのサーキットで4位フィニッシュしたドライバーは、予選ではクリスチアーノとコンマ何秒しか違わなかったんだ。さあ、これからは、われわれがいつも調子の良いバルセロナに備えて行くよ。
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