第5戦 スペインGP 2004
2004年05月09日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
不運なミスで入賞の可能性もフイに。クルマの操縦性変化に苦悩
事前の天気予報では、日曜日は降水確率が10%ということだったが、当日は空は晴れ渡り、雨の心配はなさそうだった。気温も昼ごろには20度近くまで上がり、この週末では一番の天気となった。レースがスタートする午後2時には気温21度、路面温度36度まで上がっていた。暑すぎず、寒すぎずレースにはうってつけの天気となった。
「予選の結果から見ると、BSタイヤを使うチームの中には2回ストップでいくチームもありそうですね。ミシュラン勢はタイヤの状況からみても3回ストップでしょう。戦略の違うクルマが入り乱れるので、レースは結構ハードな展開になるかもしれませんね」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)はレース前に語った。
予選7番手から今季初ポイントを狙うオリビエ・パニスは、スタートをうまく決め、1周目7番手とポイント圏内で帰ってきた。レース序盤、パニスは上位陣についていく。8周目、パニスは1回目のピットストップ。翌周にはクリスチアーノ・ダ・マッタが入った。
「最初のピットストップでパニスはオーバーステアを訴えてきたので、多少フロントウイングを寝かせました。ダ・マッタは逆にアンダーステアだったのでタイヤの空気圧で調整しました。バルセロナのコースは、路面状況が変わりやすいため、クルマの操縦性も変わってきているようでした」
2回ストップの戦略を採ったチームもあったため、1回目のピットストップ後に見かけ上の順位は落ちたが、パニスは実質的にポイント圏内にいた。ダ・マッタはスタート順位が多少後ろだったこともあり、遅いクルマに引っかかるなど、序盤から苦しい戦いを強いられていた。最初のピットストップでオーバーステア対策を施したパニスだったが、今度はアンダーステアに悩まされた。
「普通、このサーキットはクルマが走って路面がきれいになってくるとオーバーステアになる傾向があったのですが、今回はそれがアンダーステアになっていきました。パニスもダ・マッタもレース中盤からはアンダーステアに悩まされ、タイムも伸びないでいました。2回目のピットストップではパニスはタイヤの空気圧の前後バランスがずれていたようなので、それを調整しました。ダ・マッタの方はフロントウイングで調整しました」
パニスはアンダーステア気味で苦しい戦いを強いられながらも、ポイント圏内に留まっていたが、2回目のピットストップ時に致命的なミスをしてしまう。ピットロードでのスピード違反のため、ペナルティを課されてしまったのだ。
「ピットに入ってくる時に、ステアリングのスピードリミッターのボタンを1回押すとリミッターがオンになって、2回目で解除になるのですが、クルマが跳ねた瞬間に間違えて2回押してしまったようでした。そのため、リミッターが解除された。すぐにもう一度ボタンを押したのですが、すでにスピード違反を取られてしまった後でした」。このため、29周目にパニスはピットスルーのペナルティを受ける。
「このミスが全てですね。これで、ポイント獲得の可能性を失ってしまった」ここまで、パニスは確実にポイント圏内を走っていた。2回ストップのザウバーや、後ろから追い上げたBARのジェンソン・バトンと接戦を繰り広げていたのだ。さらに追い討ちをかけるように、35周目にパニスのクルマは油圧系のトラブルのため、1コーナーでストップしてしまう。ダ・マッタは3回目のストップでさらにアンダーステア対策のためにフロントウイングを調整すると、操縦性は良くなり、タイムも上がっていたが、時すでに遅し。結局、ダ・マッタは13位という結果に終わった。
「ポイントをほぼ手中にしながらも、つまらないミスと、トラブルで棒に振ってしまった。しかし、今回の予選を見てもクルマのパフォーマンスが上がってきていることは証明されたと思う。レースタイムはまだ多少遅いが、それもパニスがポイント圏内で走っていたことでもわかるようにかなり改善されてきたと思う」
結果的には今回もポイント獲得はならなかったが、その内容は今までに比べ格段の差がある。予選での速さ、レースでもポイント圏内を走行したことで、クルマのパフォーマンスが上がってきていることは証明できた。
「次のモナコに向けては、特殊なコースだけに大幅な空力パーツの改良を考えてます。来週、ポールリカールでの4日間のテストでは、モナコとカナダのタイヤテストを中心にそれらのパーツのテストも行う予定です」
第6戦は伝統のモナコGP。難コースと言われるモナコで、どういった戦いを見せてくれるか楽しみだ。
- トヨタ自動車 モータースポーツ カーレースカテゴリー