第5戦 スペインGP 2004

2004年05月10日(月)

オリビエ・パニス - スペインGPを終えて

イタリアのムジェロでバルセロナに使う予定のタイヤテストを行った。そのテストの成果もあって、金曜日の練習走行では気持ち良く走り出すことができた。走り出してすぐのクルマのバランスも良く、このように良いスタートを切れるというのは、気分的にも大きな助けになる。

今やタイヤはとても重要なものとなっているけれど、バルセロナでは特にそれが顕著に現れる。このコースは、ハイスピードコーナーがいくつかあるし、タイヤ摩耗の激しい路面になっていることもあって、タイヤの痛みが激しく、特に左側のフロントとリヤのタイヤに対してはきついコースになっている。多くの人はタイヤにかかる荷重が問題だと考えているようだけれど、僕は、実際にもっと荷重のかかるサーキットは他にも四つか五つはあると思う。高い荷重と摩耗の激しい路面が一緒になったコースというのが力量を試される場になってくるんだ。

カタルニアサーキットをドライブするのはすごく楽しい。ハイスピードコーナーが最高だね。結局、ハイスピードコーナーを走り抜ける快感がきっかけで僕らドライバーたちはみんな、レーシングドライバーになりたいと思ったようなものだからね。そしてこのコースは、今年戦って来たサーキットの中では、TF104に一番合っているだろうという感じもしていたよ。

少なくとも、予選での周回は、思い描いていたとおりの走りが出来た。思い通りの周回を走るなんて、そうあることじゃない。走り終えて、あそこでこう走ればよかったと反省する点がこれといって思いつかなかったくらいの走りで、とても満足だった。だから、今シーズン最高の予選結果だったことにも僕自身は驚かなかったよ。

多くの人達は、燃料を少なくして予選を走ったために好成績を得たと考えているだろうけど、皆の考えは間違っていることが証明されたね。僕は8周目にピットインしたけれど、それは4位に入ったFアロンソと同じ周で、3位表彰台を獲得したJトゥルーリの1周前だ。すなわち、僕らの作戦は完璧だったと思う。ただ、決勝での走行ペースが上位入賞に充分ではなかった。

スタートは悪くはなかったが、すぐにグリップが不足していることが分かった。グリッドポジションと同じ7位を走行していたが、ラップタイムが少し落ち始めて、アロンソと同じペースでは走れないのが分かった。マイク(ガスコイン)はタイヤの空気圧が少し高めだったからだろうと考えているようだ。その後、最初のスティントを少し長めに走ったドライバー達に抜かれて3つポジションを落とした。

ドライブスルーペナルティーに関してはチームに本当に申し訳ないことをした。その時はスピードリミッターの故障なのか僕のボタンの押し間違いなのかは分からなかったけれど、僕がリミッターの効かない4速ギアで走行中に作動させようとしていたことが判明したんだ。本当に悔しいよ。これを良い方向に強いて考えるのであれば、このペナルティーが、最終的には完走のできないレースで起こったということだろう。チームはテレメトリーシステムで僕の油圧系オイルが漏れているのを確認していた。その後、確かにギアが抜け始め、パワーステアリングが効かなくなってしまった。リタイヤするしかなかったんだ。

今シーズン、これまでのトヨタの信頼性は、素晴らしい。Mシューマッハーのような例外はあったとしても、F1の世界で全戦フィニッシュすることは現実的に望めない。

次のモナコは、僕のキャリアの中で最高の結果を残したレースだ。全てのレーシングドライバーは、グランプリで勝つことを夢見ている。その中でも特別なのがモナコGPで優勝するという夢だ。僕の住んでいる場所からとてつもなく遠いわけでもなく、1996年の優勝は僕の人生において偉大な経験だった。モナコは本当に特別な場所だ。ガードレールがすぐそこに迫っているので、クルマの中にいる僕たちは確固たる自信が必要になってくる。また、多くのコーナーは先が見えないブラインドコーナーになっている。すなわち、ほんの小さなミスに支払う代償がとても大きい。認識している人はあまり多くないみたいだけど、有名なトンネルの出口は時速290キロに達し、ここが選手権の中でも最速のコーナーになっているんだ。僕はモナコが好きだよ。そしてトヨタと共にもう一度あの街で勝ちたいと思っているよ。