第6戦 モナコGP 2004
2004年05月22日(土)
高橋敬三DTCに聞く:予選
大幅にアップデートしたエンジンを投入。しかし、タイム的にはもう一歩
今年で第62回目を迎えた伝統のモナコGP。モナコGPのタイムスケジュールは木曜日から始まるため、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)を始めとするパナソニック・トヨタ・レーシングの面々は水曜日には現地に入っていた。今年のモナコはピットが大幅に変わり、コースの感じが大きく様変わりした。特に高橋DTCたちが働く、ピットガレージはまるで常設サーキットのように使い勝手も向上した。
「今までは、遠い駐車場の中で作業していたんですが、今年からはピットガレージでできるようになった。昨年までは毎朝クルマをピットまで運んで、走り終えたらまた運び帰っていたのが、そのままでできるからメカニックも仕事が随分楽になった。僕らもピットから駐車場、食事はパドックのモーターホームでと動かないでよくなった。ピットロードも広くなって、制限速度も時速80kmと変わり、ロスタイムが4秒くらい減りました」と高橋DTC。
木曜日の走り始めは、いつものように路面ができるまではサードドライバーのリカルド・ゾンタが走り込み、タイヤのデータを取っていた。
「ここは公道コースのため、タイヤテストがないので、まずはタイヤの状況を見ることが非常に重要です。もちろん、路面の状況がここは特に変わるので、路面ができるまではセッティングはいじらずに初日は走らせました。午前中はクルマがピッチングすると3人とも言っていたので、午後はその対策をしました。モナコはトラクションが大事なのでバネを柔らかくするんですが、そのせいでバンプでのピッチングが激しくなってしまうんです。午後は路面も良くなってほとんどのクルマが走ったので、狭いコースは渋滞してうちの3人のドライバーはアタックラップがうまく取れませんでした。クルマのバランスも十分でなかったし、ドライバーはフラストレーションが溜ったんじゃないでしょうか。でも、エンジニアとしてはタイヤに合ったトライもでき、満足してます」
木曜日のフリー走行の成績は、1回目ゾンタは4番手と好調で、あまり走らなかったクリスチアーノ・ダ・マッタが13番手、オリビエ・パニスが14番手。2回目はゾンタが8番手。ダ・マッタ13番手、パニス15番手だった。
「今回はエンジンを大きく変えてきました。新しいスペックのエンジンです。大きなアップデートを行いました。性能的にはトルクカーブをかなり改善しつつ、パワーも出してきました。ここはパワーがそのまま生きるコースではないですけど、エンジンには自信があります。それと、空力はもちろんモナコスペシャルですし、前回に続き、さらに低重心化を図ってきました」
この日の記者会見が終わると、チームを指揮するシャシー部門テクニカルディレクターのマイク・ガスコインは一旦、ケルンのTMGに帰っていった。今日のデータを持って帰り、分析し、土曜日の予選に備えようということだった。
土曜日は、天気予報では夕方には小雨が降るかもしれないというものだったが、午前中は青空だった。午前中のフリー走行では1回目ダ・マッタ13番手、パニス15番手。2回目はダ・マッタ12番手、パニス16番手とあまり調子がいいようではなかった。タイムもトップから1・5秒も離されていた。
「2台とも午前中はアンダーステア傾向でした。特にパニスの方が酷かったようです。それを対策しました。午後の予選に向けてバランスはかなり良くなりました」
午後の予選の時には気温は22度、路面温度42度。しかし、最初路面の状態はあまり良くなかったようで、最初に走ったフェラーリのミハエル・シューマッハも滑っていてタイムも伸びなかった。1回目の予選、ダ・マッタは1分15秒738で13番手。パニスは1分15秒125で10番手の位置につけた。
「1回目の予選アタックではポジション的にはまずまずでしたが、タイム的には多少不満が残るものでした。クルマはダ・マッタはアンダーステアが消えなかったようでした。パニスの方は午前中よりも良くなっているというということで、せめて14秒台には入って欲しかったですね」
タイムが思ったよりも伸びなかったため、急遽2回目の予選に向けて燃料の搭載量を調整しなおした。ダ・マッタのクルマはさらにアンダーステア対策として、車高とフロントタイヤの空気圧を調整した。
「これでクルマのバランスは良くなりました。しかし、タイム的には、もうちょっといって欲しかったですね」
パニスは1分15秒859で13番手。ダ・マッタは1分16秒169で15番手だった。
「基本的な戦略は、ここはどのチームも2回でしょう。前の方のクルマは燃料がかなり軽いようですね。ピットのロスも少なくなったため、3回も考えられなくはないですが、そうすると3回目を引っかからないようにしないといけないし、厳しいでしょうね」
予選後、F3000のレースが行われ始めた頃には、空一面を雲が被い始めた。予報では今夜にも雨が降るということで、日曜日のレースも微妙な路面状況、天気になりそうな気配だ。
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